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ドットコムの新進気鋭が集結、TechCrunch50現地詳細レポート(中編)

 2009年9月14~15日、Web技術を巧みに活用して新ビジネスを創り出そうとする起業家の祭典「TechCrunch50」が米サンフランシスコで開催された。次々と斬新なアイデアがプレゼンされる会場には熱気が溢れ、メディアやブロガーはすぐさまニュースを配信していた。現地に赴いた筆者が、注目すべきトピックをレポートする。

写真2-1 熱気あふれる、プレゼンテーション会場
写真2-1 熱気あふれる、プレゼンテーション会場
写真2-2 デモピット(展示ブース)の様子
写真2-2 デモピット(展示ブース)の様子

セッション3:新しい手法の広告・収益化プラットフォーム

  • 5:1
    • 広告主がコンテンツ提供者と協力し、Webサイトの表示内容に合わせて、適切なタイミングで広告を表示することができるソリューション。広告の表示売れ残りが生じなくなる。
  • DataXu
    • 広告主は複数の広告配信ネットワークを横断して、広告の出稿条件をオークションにかけることができ、その結果、CPA(顧客獲得単価)を下げることができる。オークションの進め方について、自動学習機能が備わっている。
  • SeatGeek
    • スポーツイベントの売切チケットが、オークションサイトで取引される最終価格を予想するサービス。得られた価格をもとに、底値でチケットを購入できる。
  • healthwage
    • 企業向け。社員の健康増進奨励を目的として、予め定めた目標(例えば、肥満度など)を達成した社員に、賞金を出すサービス。
  • rackup
    • 各種ギフト券のオークションサイト。安売りチケットショップから出展されたギフト券に対し、早く入札したユーザーに対して追加のバリューを足すことで、販売を促進し早くさばけるようにする。
  • udorse
    • 気に入った賞品や場所を写真で紹介し、他のユーザーがその写真で閲覧することで、商品のメーカーや場所のオーナーから現金がもらえるサービス。チャリティに寄付することも可能。

 日本のみならず、世界的にネット広告業界は、インプレッション広告(広告露出回数による料金課金)やクリック保証広告のみの時代から様変わりを始めている。1つの動きとして、iPhoneに代表されるスマートフォンのアプリケーションを対象とした、位置情報連動型広告がある。ネットで広告を打ち、リアルで店舗やサービスに誘導するものだ。他方、広告の効果が向上するかどうかはともかく、出稿する広告主も、その広告を閲覧するユーザーも、揃って楽しませる派生型の広告サービスが増えている。

セッション4:地域密着サービス

  • Yext
    • 近所のお店は、インターネットではなく、電話でしかコンタクトできないことが多い。必要な事柄に応じて、近所の最適なお店に電話をかけられる、次世代イエローページサービス。店を探した潜在客は Yext を通じて電話をかけると、Yext は特許技術で機械的に、店と客の会話が有効かどうかをモニターする。会話が有効であれば、その電話の回数に応じて、Yextは店に広告料を請求する。
  • LocalBacon
    • Monster.com や craiglistなどの大手サイトで求人すると、広告を出稿した雇用者側に不要なメールがたくさん届いてしまう。LocalBaconでは、求職者側が1投稿につき、99セントを支払う。フィルタリングされるので、雇用者側にひやかしの連絡が届かない。
  • refmob
    • 銀行、アパート、お店などを、従来客が新しい潜在客に紹介することで、紹介された側、紹介した側の双方がボーナスをもらえる。
  • TheSwop.com
    • 起業するときに、その起業を手伝う人や会社(パートナー、投資家、ビジネス支援など)を結びつけるサイト。
  • mota
    • 中古車の個人間取引を支援するサイト。一般的に、中古車業者が確認する重点項目をWeb上に用意し、販売側はそれらを申告、購入側はそれらを確認することで、安心して取引することができる。
  • redbeacon
    • 地域の店や会社に仕事を依頼するとき、どんな仕事をいつどこで依頼するかをもとに、最適な店や会社を紹介するサイト。店や会社から提示された価格や他ユーザの評価を確認し、仕事を依頼するかどうかを決定する。
写真2-3 インターネット・イエローページ「イェキスト(Yext)」。お客はYextのシステムを経由し、お店に電話をかける。システムが会話内容を認識し、顧客誘導に結びついた問い合わせについてのみ、Yextがお店に課金する
写真2-3 インターネット・イエローページ「イェキスト(Yext)」。お客はYextのシステムを経由し、お店に電話をかける。システムが会話内容を認識し、顧客誘導に結びついた問い合わせについてのみ、Yextがお店に課金する

 「Think Global, Act Local(世界規模で考え、地域で行動する)」は、インターネット・ビジネスの話には頻出するフレーズである。鳩山首相が2020年までの二酸化炭素25%削減を掲げ、例えば、地産地消のような動きが活発化すれば、情報は世界中と今までに増して行き交う一方で、人やモノの移動はなるべく同じコミュニティの中で回す、という形が定着していくのだろう。地域に根差したサービスの情報源は、まだ圧倒的に古いメディアがインターネットを凌いでいるが、Yextの事例のように相互のメディアを有機的にブリッジできれば、新しい価値を創り出せるかもしれない。

 無料が当たり前だったテレビに、受信料を払ってCATVを見るようになったときのように、有益な広告(情報)には、広告主ではなく、広告を見たお客が料金を支払ってくれるようになる。

セッション5:ビジネスアプリケーション

  • ClientShow
    • クリエイターやマーケティング会社が、顧客に制作物をリアルタイムで確認してもらうためのWebアプリケーション・サービスを提供する。プロジェクト内の顧客とチームがコミュニケーションをとりやすくする。
  • Metricly
    • 中小企業、スタートアップ企業向け。Quickbooks(米国の中小企業向け会計ソフト)、GoogleAnalytics(Webアクセス解析)、Salesforce(顧客管理)など複数のシステムから重要データを収集、統合分析し、グラフ化しダッシュボードを作成する。
  • Affective Interfaces
    • Webカメラを用いて、顧客の顔を撮影し、表情を分析することで顧客満足度を計測できるサービス。同社のサーバーに、顧客が見ていたビデオをアップロードすれば、タイミングを同期することで、顧客が何を好んでいるか、情報を集積することができる。
  • Citysourced
    • モバイルで公共サービスを支援するASPツール。役所に対し、道路補修、落書き消し、ゴミ収集、除雪の依頼などが可能。役所もコストを節約することができる。
  • Trollim
    • イスラエルのベンチャー。企業がプログラマを採用する際、そのスキルを評価するためのプラットフォームを提供。予めバグが含まれたプログラムを提示し、そのバグを改修するよう、プログラマ同士を対戦させてスキルを評価する。
  • CrowdFlower
    • 一切電話をかけることなく、必要に応じて労働力を募集することができる、クラウド・ソーシング・サービス。

 ビジネスアプリケーションのセッションで登場したサービスは、総じてSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)の領域に分類することができる。業務上の必要から、企業はシステムを構築し、SaaSを多用するわけだが、インタフェースのバラつきや管理の煩雑さから、だんだん収拾がつかなくなってしまう。また、会計システムは経理、顧客管理は営業など、システムが異なる部署の管理下にあることで、部署を横断してデータを統合し、必要な答を抽出するまでの過程は一苦労だ。Metriclyに代表されるような、XMLやスクレイピングで情報を一元化し分析するツールは、今後増えていくだろう。

 グーグルは、さまざまなグーグル・サービスを一画面で一元的に管理できる、「グーグル・ダッシュボード」を先日リリースした。エンタープライズ向けの商品の開発にも余念が無いグーグルだが、他社のサービスをインタフェースだけマッシュアップ統合するのではなく、市場調達した豊富な資金で買収し、自社サービスとして完全統合してしまうことが多い。  ビジネスアプリケーションを開発するスタートアップ企業は、グーグルの前に戦々恐々だが、企業で使われるパッケージやSaaSの多くをシームレスに接続し、PDCAサイクルを効率的に目に見える形で実現できたら、グーグルが今日にでも会社ごと高値で買ってくれるだろう。

セッション6:購読型、コマース

  • Cocodot
    • 慶事の招待状をネットで送るためのソリューション「cocodot」。紙を使わないのでエコロジー。イベントサイトの作成、モバイルへのメール、印刷された招待状の作成、ゲスト管理もできる。
  • LearnVest
    • 借入金の完済、結婚資金の準備、株式購入、学資ローンの申込など、50を超えるチェックをつけることで、フィナンシャル・アドバイザー並みの診断が受けられる、個人金融支援ツール。
  • BreakThrough
    • 米国人の4人に1人は、何らかの精神疾患(うつ病等)を抱えているといわれるが、診療費の高さから、その3分の2は治療を受けていないそうだ。全米心理療法士協会(ATA)などとも提携し、オンラインで安価に診断を受けられるサービスを提供する。診断書を出すことも可能。
  • GlideHealth
    • 医療関係者や患者が、Windows/Mac、 iPhone/Blackberryをはじめ、あらゆるデバイスから電子カルテにアクセスできる。医療データは、システムに機種依存する傾向が強いが、GlideHealthがその違いを吸収し、一般のパソコンやモバイルでも閲覧できるようにする。
  • Sprowtt
    • スタートアップ企業への投資手段を提供するサービス。企業経営者、投資家の双方にとって、非公開会社のメリットを残しながら、擬似的に株式を公開取引できる「SprowttIPO」を提供している。

 購読・コマースのセッションに共通するのは、今まで専門分野の人々や限られたアクセスしか提供されなかったサービスを、Webベースのオープンなしくみで提供することで、低コスト化とDIY化を図るというものだ。世界的な不景気を反映した動きとも捉えることができる。

 また、米国の医療問題は深刻で、オバマ大統領は国民皆保険制度の議会承認に奔走しているが、日本も少子高齢化の影響で、医療のコスト圧縮は対岸の火事ではない。医療情報のオープンアクセスを助けるしくみ作りは、日米両国共に景気刺激策の一つとして、医療へのIT活用を掲げていることからもわかるように、発展が期待されるビジネスだ。

写真2-4 ステージ上で、審査員の質問に答えるプレゼンター。マイクロソフトのドン・ダッジ氏、投資家のヤッシ・バルディ氏、ネットスケープ創業者のマーク・アンドリーセン氏らが紹介されたサービスを評価
写真2-4 ステージ上で、審査員の質問に答えるプレゼンター。マイクロソフトのドン・ダッジ氏、投資家のヤッシ・バルディ氏、ネットスケープ創業者のマーク・アンドリーセン氏らが紹介されたサービスを評価
編集部注:ドン・ダッジ氏は2009年11月上旬、マイクロソフトからグーグルに移籍
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池田 将
コンサルタント/テックブロガー
http://digitalway.iza.ne.jp/

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