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シンクタンク・コンサル事業の拡大と、製造・サービス業の顧客拡大がカギ[三菱総合研究所(証券コード 3636)]
三菱総研の特徴
三菱総研は1970年、三菱グループの100周年記念事業として三菱銀行(現在、東京三菱UFJ銀行)、三菱商事、三菱重工などが出資してシンクタンクを創立したところから始まる。
シンクタンクとしては、ほかにも野村総合研究所、大和総研、みずほ情報総研などがあるが、三菱総研は、(1)官公庁向けの受託研究・調査の割合が高い(全社売上高のおよそ20%が官公庁向け)、(2)上記3社はシンクタンク・コンサルティング事業をシステム開発拡大のためのドア・オープナーと位置付けているのに対して、三菱総研の場合は、シンクタンクは基本的には独立、といった違いがある。
図1に示すように、野村総研の売上高コンサルティング比率がおよそ10%に対して、三菱総研のそれはおよそ30%と、シンクタンク・コンサルティング事業の割合が高い。
シンクタンクとITを2本柱に
三菱総研のシンクタンク・コンサルティング事業は、09年9月期実績では売上高204.7憶円、営業利益は22.6億円、営業利益率では11%と収益性も高く、マザー事業として同社の中核的な位置付けである。
ただし、この事業が今後とも成長分野かといえば、そうとも限らない。同社は、官公庁向けに加えて民間向けの事業拡大を図るものの、結局のところ、売上の伸びは人員の伸びに比例する。だが、シンクタンクのような高度な専門知識が必要な人材を大幅に増やすのは難しいため、売上高の大幅な増加は困難だろう。システム開発のように外部委託(外注)などを利用して、売上高にレバレッジをかけることは難しいのだ。
こうした背景もあり、同社は2005年、東京三菱UFJ銀行向けなどのシステム開発を手掛けるダイヤモンドコンピュータサービス(現在の三菱総研DCS)を子会社化。シンクタンクからシステム開発・アウトソーシングまでトータルで提供する企業へと舵を切っている。マザー事業であるシンクタンク・コンサルティング事業と、三菱総研DCSを主体としたITソリューション事業の2本柱での業績拡大が同社の基本戦略であり、これらが今後どう推移するかが、同社の業績さらには企業価値を考える上でのポイントといえるだろう。
シンクタンク事業の業績動向
これを踏まえて同社の業績を考えてみよう。シンクタンク事業の最大のリスクは、主要顧客が官公庁であることを考えると、政治情勢だろう。
特に9月の政権交代は、同社にとってプラスとマイナスのインパクトをもたらす。プラスの側面は、民主党政権が推進する環境・教育分野に関して、三菱総研がノウハウを持っていること。特に環境分野では1970年代から他社に先駆けて取り組みを開始。最近では排出権取引の制度設計や低炭素社会のビジョン策定を実施している。
マイナス面は、短期的には補正予算の一部凍結、中長期的には、脱官僚・政治主導による官公庁への予算削減→官公庁からの受託調査研究の縮小、が考えられる。筆者は、後者のシナリオが現実的と考えており、官公庁に代わって民間向けコンサルティングをどこまで拡大できるかが課題と見る。
しかし景況感の悪化もあり、民間向けも厳しい状況が続くはずだ。したがって同事業の売上高は10年9月期195億円(前年同期比▲4.7%)を予想。営業利益も10年9月期22億円(同▲3%)と、微減を予想する。
ITソリューション事業の動向
ITソリューション事業における業績の見通しは、連結子会社である三菱総研DCSの動向がメインになる。同社最大の取引先は、三菱東京UFJ銀行であり、勘定系・情報系のシステム開発を提供している。このうち勘定系については、2008年に旧・東京三菱と旧・UFJの大規模なシステム統合が完了したばかりであり、一服感がある。そこでデータ解析といった情報系の案件獲得を狙う。
三菱東京UFJ銀行以外では、三菱UFJニコスのようなカード会社へのシステム提供が挙げられる。三菱UFJニコスでは現在、3社(DCカード、UFJカード、ニコス)のシステムの統合作業が進みつつある。この需要の取り込みを狙うわけだ。
銀行、カード会社ともに安定した業績推移が見込まれるが、売上高の40%近くを占める製造業・サービス業の不振は問題だ。直近で緩やかな景気回復感があるとはいえ、急激なIT投資の回復は見込みにくい。こうした点を踏まえて、ITソリューション事業は、10年9月期売上高510億円(前年比▲3.8%)、営業利益29.5億円(度同▲7%)を予想する。
理論株価と成長戦略
シンクタンク・コンサルティング事業とITソリューション事業を合わせた10年9月期は売上高705億円(同▲4.1%)、営業利益51.5億円(同▲5.4%)を予想する。ここから算出される10年9月期の一株当たり純利益(EPS)は143.8円。ITサービスセクター標準のPER(株価収益率)15倍をかければ理論株価は2157円となり、11月9日終値2215円と同水準。上場直後に最高値を付けた後、徐々に株価が下落している原因は、こうした業績に対する不透明感によると考えられる。ただし大幅に落ち込むリスクは低いので、下値は限定的だろう。
三菱総研としても、こうした状況に甘んじているわけではない。今後の成長戦略としては、(1)シンクタンク・コンサルティング事業での環境分野および民間分野の強化、(2)M&Aによる業容拡大が考えられる。
(1)については、官公庁、民間を問わず拡大を目指すとともに、民間企業向けでは、あるテーマについて会員を集めてソリューションを提供するマルチクライアント方式から個別案件の獲得を目指す。(2)については、製造業・サービス業での優良顧客基盤の獲得、オフショアでのアウトソーシングといった、同社が手掛けていない分野を強化するM&Aを狙う。現時点では、これらの効果を業績予想に織り込んでいないだけに、株価上昇のカギは成長戦略の具現化と言えるだろう。
- 長橋 賢吾
- ITアナリスト・博士(情報理工学)
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