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新データセンターの業績寄与がカギ クラウド戦略も要注目[ビットアイル(証券コード 3811)]

データセンター大手であるビットアイルの株価が底堅い。2007年9月につけた最安値4万1000円を金融危機以降も割ることなく、底堅く推移している。今度とも底堅く推移するのか、あるいは底割れがあるのか、同社の業績をもとに考えてみよう。

ビットアイルは2000年、寺田倉庫創業家の寺田航平社長が創業した企業である。倉庫業を営む寺田倉庫において、モノを預かるだけでは付加価値は限定的。それを提供する手段の1つがビットアイルのデータセンターだ。

一口にデータセンター事業といっても、アプリケーション保守のようなマネージドサービスからホスティングまで様々な事業形態がある。同社の場合は、図1に示すように売上の80%以上がiDCサービスであり、(1)一般企業やインターネット企業などの顧客にラックスペースを提供するiDC(一般)、および(2)データセンター事業を展開するSIerや通信事業者など向けにラックスペースを提供するiDC(OEM)の2パターンがある。

図1 ビットアイル連結サービス別売上構成(単位:%、百万円)
図1 ビットアイル連結サービス別売上構成(単位:%、百万円)

ビットアイルの強みはコストパフォーマンスの高さだ。蓄積してきたデータセンター構築ノウハウに加えて同社の第1〜第3データセンターが天王洲にあり、都心型のデータセンターながらも割安で提供できる点が同社の競争力になっている。

第4センターの稼働率がカギ

データセンタービジネスで難しいのは、既存センターのスペースが最大になった場合の次の戦略だ。一般的には新設となるが、新設にあたっては (1)都心か郊外かなどの場所、(2)今後の需要動向の見極め、(3)マネージド中心の高付加価値かホスティング中心の低価格かといったコンセプト、など検討すべき点がいくつもある。実際、2000年代前半のITバブル時に各社一斉にデータセンター建設に走ったが、バブル崩壊後、深刻な需要不足となり、統廃合が加速した経緯がある。

ビットアイルも、前述の第1〜3データセンターの稼働率が最大に近づき、データセンターの新設を決定。都心型の大規模ホスティングを提供するデータセンターで、09年2月に完成した。場所は都心の東京都文京区飯田橋、約150億円の設備投資により最大2600ラックの規模を持つ。第1〜3までの合計ラック数が2940ラックなので、大きなチャレンジと言えるだろう。

事実、第4データセンターの立ち上げは順風満帆とはいかなかった。最大の需要先であるKDDIが自社のデータセンターブランド「TELEHOUSE」を09年7月期中に第4データセンターに移設し、その20%が埋まるはずだった。だが設備仕様の調整や各種申請等に想定外の時間を要し、第4データセンターの稼働が08年11月の期初予定から09年2月にずれ込んだ。これによって、09年7月期の売上高は会社計画97.2億円を大幅に下回る78.6億円、営業利益も会社計画14.7憶円に対して8.8億円と計画を大幅に下回る結果となった。

ビットアイルの業績動向

こうした事情を踏まえて、同社の今後の業績について考えてみよう。データセンターの業績の考え方は、顧客が毎年一定額を支払う積み上げ(ストック)型ビジネスであり、同社の場合もストックに加えて、純増(新規加入−解約)+スポット(一時的なSIなど)+子会社の合計が売上高のすべてだ。

それだけに売上高の大幅減収は考えにくいが、解約が増えるリスクもある。現実に08年7月期2.5億円→09年7月期6.2億円と解約金額は増加しており、平均で月20ラック程度の解約が発生しているとみられる。背景には景気の悪化があると見られ、今期・来期も前期並みの解約が発生すると考えるべきだろう(今期・来期 筆者予想解約金額7.1億円)。

もう1つの潜在的なリスクは、SI大手の伊藤忠テクノソリューションズやTISなどがこぞって都心にデータセンターを建設していること。両社は顧客へのマネージドサービスが中心でiDCサービスを主体とするビットアイルとは客層は異なる。だがラックの供給過剰により両社などが安値攻勢をかけてくれば、ビットアイルの解約が増える可能性がある。

これを踏まえた、10年7月期売上高予想は、ストック(81.2憶円)+純増(7.5憶円)+子会社・スポット(7.8憶円)の合計96.6憶円を予想、売上高に占めるストックの割合は84%となり、このストック比率を考慮すれば売上高が大幅に減少するリスクは低いだろう。同様に、11年7月期は、ストック(96億円)+純増(4億円)+子会社・スポット(7.4憶円)の合計108憶円を予想(図2)。

図2 ビットアイル連結売上高推移(単位:%、百万円)
図2 ビットアイル連結売上高推移(単位:%、百万円)

一方、図3に示すようにコスト(売上原価+販管費)が09年7月期実績の69.2億円から10年7月期には87.2億円(筆者予想)と大幅に増える見通しだ。増加分のほとんどは第4データセンターにおける減価償却費用や運用にかかる人件費などであり、第4データセンターについては営業赤字が続く。10年7月期の営業利益をほぼ前年なみの9.4億円(前期8.8億円)と見る。第4データセンターが利益貢献するのは損益分岐点を超える来期であり、11年7月期の営業利益は15.7億円を予想する。

図3 ビットアイル連結売上原価・販管費推移(単位:百万円)
図3 ビットアイル連結売上原価・販管費推移(単位:百万円)

ビットアイルの理論株価

これを踏まえて、同社の理論株価を考えてみよう。今期の筆者予想EPS(1株当たり純利益)2387円に日本株の平均PER(株価収益率)15倍を掛け合わせた理論株価は3万5801円。一方、来期の筆者予想EPS4262円に対して同様にPER15倍を当てはめた場合、理論株価は6万3924円になる。09年11月20日終値5万2500円から判断すれば、ビットアイルの株価は来期の業績水準をすでに織り込みはじめていると言えそうだ。ただし第4データセンターの遅延といった予期せぬアクシデントもあり、本格的な株価回復には来期の業績 が目に見える形で顕在化することが必要だろう。

ビットアイルの今後の展開

最後に今後の同社の展開について。当面は第4データセンターの稼働率を上げることが至上命題だが、並行してクラウドを焦点とした次のデータセンターの展開がある。同社は09年11月より「Cloud ISLE」として仮想化検証環境などを提供する試みを開始している。仮想化などでサーバを集積し、コストを抑えることによって、顧客により安い価格で提供する。同社のクラウドの試みは始まったばかりだが、今後はこの流れが第4データセンター以降の中期的なテーマになり、他社との競争力の強化という点では欠かせない要素と考えられる。

長橋 賢吾
ITアナリスト・博士(情報理工学)

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