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目指すは自然体の情報共有―進化するグループウェア Part 1
景気低迷はもとより、市場の一巡、規制の緩和、新興国の攻勢などで企業は厳しい攻防を強いられ、相当の知恵を絞って手を打っていかなければ安定的な成長は見込めない。そうした中、「1人」の知識や経験、気づきには自ずと限界がある。従業員や取引先などの関係者が、互いの知見を持ち寄ることで、組織としての力を高めたいという切実な願いがある(図1-1)。
そこで、ますます期待と注目が集まっているのが情報共有を支えるITだ。PCやネットワーク技術が企業に浸透するのに伴い、1990年代半ば以降、グループウェアや社内ポータル、エンタープライズサーチなど情報共有を実現/加速する様々なソリューションが登場してきた。それらは、時に融合し、時に新たな技術の土台となりながら綿々と進化を続けている。
とりわけ、2000年代の後半にかけては、2つの動きが情報共有基盤に大きな影響を与え始めた。
1つはストレージの低価格化で、企業は大容量の「器」を手軽に導入できるようになった。キャパシティを気にせず、「とにかく情報の蓄積を優先し、後から検索エンジンで強引に探し出す」というスタイルを採りやすくなった。もう1つはコンシューマ向けインターネットサービスとの歩み寄りだ。ブログやSNSなど、Web2.0あるいはソーシャルメディアと呼ばれる仕組みをビジネス用途に仕立て上げて実装する取り組みが盛んになった。これらは、「従来ながらの“気構えた情報共有”から脱却する上で大きな役割を果たした」(日本IBMのソフトウェア事業Lotusテクニカル・セールスの行木陽子氏)。
進まぬコラボレーション
組織の力が眠ったままに
もちろん企業はこれまでも情報共有に取り組んできた。グループウェアに代表される情報共有基盤は、「一定規模以上の企業にはかなり浸透した」(サイボウズの開発本部副本部長の関根紀子氏)というのが一般的な見方だ。
もっとも、そこで進んだ情報共有は、カレンダー/アドレス帳の共有、ワークフローといったプリミティブなものが中心だった(次ページの図1-2)。徹底したファイル共有や、電子会議室での活発な議論といった「コラボレーション」の観点では、まだ十分な効果を発揮できていない企業が少なくない。
なぜ、コラボレーションが進まないのか。価値創造などをテーマにコンサルティングを手がけるシグマクシスの河津敬ナレッジマネジメントダイレクターは、「自発的な情報発信の壁」を指摘する。全社員に見られる場に情報をアップするとなると、「明瞭にまとめなければ」「本当にこの内容でいいのか」といった精神的プレッシャーがつきまとう。しかもそれが個人の評価につながらないとなれば、あえて公の場に情報発信するまでもないという意識につながってしまう。
フォーマル感が強い情報共有環境では、自発的に活躍するメンバーが限られてしまいがちだ(図1-3)。独創的な情報を自ら発信する「プレーヤー」と、それにレビューやコメント付与などの形で関与する「サポーター」はごく一握りで、大多数は“見るだけ”を決め込む「オーディエンス」となる。
この状況でも、知識や生産性の底上げには一定の効果を発揮する。しかし、「それだけでは組織の潜在能力を生かし切れない。1人でも多くが参加し互いに刺激を与え合うような環境作りの巧拙が、業績に大きく影響する」(みずほ情報総研の吉川日出行ビジネスコンサルティング部シニアマネジャー)。
ソーシャルな仕組みまとい
気安い情報発信を促す
プレーヤーとサポーターの2層を、いかに裾野に広げていくか。創発的コミュニケーションを支える基盤として、グループウェアが再び進化を始めている。その特徴は、大きく3つに分けられる(図1-4)。
最も顕著なのは、先にも触れた「ソーシャル系技術の融合」だ。ブログやSNSなど、個人向けで一般化した情報発信のスタイルを社内システムにも実装する動きが活発だ。Lotus Notes/Dominoを展開する日本IBMは、Lotus Connectionsを市場投入。サイボウズも「サイボウズ ブログ」をリリースした。ともに既存グループウェア製品に、ソーシャル系の機能を追加する位置づけだ。他にも多くのグループウェアベンダーが同様の取り組みを今まさに繰り広げている。
狙いは、情報発信に対する精神的な“垣根”を取り払うことにある。自分が経験したこと、ふと考えたことを書き留めるブログ/SNSのスタイルは、その気軽さが売りだ。「表舞台で演じる」のではなく、「マイルームで鼻歌」の感覚を持ち込むことで、自然な情報発信を誘発する効果が見込める。タバコ部屋やアフター5の居酒屋での会話からアイデアが湧くという話がよくあるが、そんなカジュアルな情報交換の場を社内ネットワーク上に創ろうという試みである。
学生時代からインターネット文化に慣れ親しんだ、いわゆるデジタルネイティブ世代にとってみれば、考えをブログで表現したり、コミュニティで意見交換するのはごく自然な行為。固定観念に縛られない若手のアイデアを募りたいというニーズがあれば、そんな彼ら彼女らのライフスタイルと透過性のある仕組みを取り入れるのは有効な手段の1つと期待できる。
ワクワクするような使い勝手を目指す
「リッチな操作感」を追求する動きも活発だ。今やほとんどのグループウェアがWebベースで稼働する。かつて「ブラウザを使ったクライアント環境は、操作性や表現力に乏しい」という見方もあったが、FLASHやAjaxなどの技術進歩でユーザーインタフェースは格段に向上している。
今年上半期に「SharePoint Server 2010」をリリースするマイクロソフト。同社のインフォメーションワーカービジネス本部でエグゼクティブプロダクトマネージャを務める米野宏明氏は「個人がコラボレーションを望む時、どんな機能も直感的に使えるのは当然として、“心地よさ”も重要な要素だ」と強調する。
この言葉のように今、多くのベンダーが注力しているのが「ユーザーエクスペリエンス」の創出だ。操作が簡単で分かりやすいといったレベルにとどまらず、情報を発信/検索/活用する過程が「楽しい」「刺激的」と感じられる工夫を盛り込むことに余念がない。
例えば、ある分野の専門知識をグループウェアで検索する。キーマンが見つかった際に、その人と自分の人脈マップをビジュアルに表示し、誰の仲介を得れば最も効率的にアクセスできるかが分かる製品が出始めた。人脈マップは、自分が日頃どのように仕事に関与しているかを別の視点で発見する機会ももたらしてくれる。
他システムとの連携で情報共有に強制力を
最新のグループウェアは「業務システムとの連携」も視野に入れる。「個人が発信する情報のみならず、生産/販売/会計といった業務システムの情報もコラボレーションや意思決定の重要な材料。すべてを統合して、誰もがごく自然に扱える環境が欠かせない」(日本オラクルの上村靜史FusionMiddlewareビジネス推進本部担当シニアマネジャー)。
統合プラットフォーム(ミドルウェア)の一部としてコラボレーション機能を提供する製品、グループウェアのポータル画面に業務システムをマッシュアップする製品などアプローチは様々だが、いずれも、日常のメインとなる業務の中に、情報共有/コラボレーションの機能を強制的にうまく溶け込ませようという意図がある。
以上、3つの特徴を備え始めた新しいグループウェア。そこには「自然体での情報共有」促進の知恵が詰め込まれている(図1-5)。
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