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クラウド狂騒曲の前に「イン」と「アウト」の仕分けを!(vol.17)
クラウド以前に足下を見直す
クラウド・コンピューティングは、何を対象にどの範囲がサービスとして提供されるかによって、様々な言い方が出ている。大別するとプラットフォームのクラウドとアプリケーションのクラウドがある。
前者はハードやOSを提供するもので、短期使用もできることから、開発を受託するITベンダーが利用を始めており、利用している人達に聞くと有用性は高い。内製化が遠のいている昨今ではユーザー企業の活用例はまだ少ないと思われるが、RAD(Rapid Application Development:迅速開発)ツールやアジャイル開発法の採用による内製化機運の高まりや受入検証のためのプラットフォームとして、事例が増えることは充分推測できる。「持たざる経営」の実践である。
一方のアプリケーションのクラウドは、目新しいものではない。1990年代後半から始まったYahoo!やGoogleのようなポータルサイトや検索サイトはそれと意識しないが、クラウドそのものだ。続いて2000年前後にASPが話題になり、2006年頃からはSaaSが登場した。これらもクラウドである。
そんな経緯があって昨今の「クラウド狂騒曲」へと突入したわけだが、はたしてそれでいいのか?狂騒する前に、もっと足元を見つめ直すべきではないのか?
クラウド=解決策ではない
特にユーザー企業に密接なアプリケーション・サービスについて言えば、クラウドは組織の抱える問題を直接解決するものではない。企業でも行政でも同じである。
「自治体向けにIT大手がクラウドに参入」という記事(2009年12月7日付け日経新聞)があった。これなどは、各都道府県が進めてきた「電子申請システム」などの共同運用と、どこが違うのか判然としない。「電子申請システム」は都道府県単位にばらばらであり、市町村内単位でさえ申請フォーマットが標準化されていない。利用方法の解説といい手順といい、利用者にとっての利便性などほとんど感じられない。
これをクラウドに移行したところで、何が変わるだろうか?システム費用は多少、安くなるかも知れないが、それ以外は何も変わりはしない。目先のコスト効果にとらわれて本質を見直さない、つまり業務やシステムのあるべき姿を考えないまま電子化に走る「悪い癖」が温存されかねないのだ。これは明らかにデザイン力の不足である。国にしても自治体にしても、行政としてあるべき電子化のデザイナーが不在である。
インとアウトの仕分けが大切
当然だが、外部のサービスが充実してくれば、情報化のデザインも変わる。企業価値からみれば、ハードウェアやソフトウェアを何でも自前で揃えることに大きな意義はない。大事なことはインソースとアウトソースの仕分けである。
付加価値をつけられるものはインソースで磨き上げる必要がある。付加価値が期待できないものはアウトソースに依存すればよい。しかし、その見極めができなければ、アウトソーシングは企業の弱体化を招く危険な存在にもなりかねない。外部依存や、丸投げ型の魂まで売ってしまうアウトソーシングのことだ。
ことはクラウドに留まらない。近いうちに、IFRS(International Financial Reporting Standards:国際財務報告基準)対応の狂騒曲も流れだすに違いない。日本の会計基準が規則主義であるのに対して、IFRSは原則主義という厄介さがあるが、こういうものこそクラウドで対応可能にすべきではないかと思う。インソースとして付加価値を付ける必要があるのはむしろ管理会計だろう。
一方、国家セキュリティの観点からはしっかりとクラウドを認識すべきだ。2009年4月に米国で起きたパトリオット法に基づくデータセンターの強制調査は、他人事ではない。このような問題に対抗すべく国内のデータを守る法整備を進めている諸外国と比べて、日本の法整備は遅れている。これも重要な国家デザインではないのか?
- 木内 里美
- 大成ロテック監査役。1969年に大成建設に入社。土木設計部門で港湾などの設計に携わった後、2001年に情報企画部長に就任。以来、大成建設の情報化を率いてきた。講演や行政機関の委員を多数こなすなど、CIOとして情報発信・啓蒙活動に取り組む
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