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自発的な情報発信の風土作り―進化するグループウェア Part 2

社内の風土作りで価値生む情報共有を実現する

グループウェアの導入で情報共有基盤が整ったと考えるのは早計だ。社員が自発的に情報を受発信する風土を根付かせなければ、せっかくのITも「宝の持ち腐れ」。社内の知を競争力の源泉とするコンサルティング企業が実践する情報共有に学ぶ。

個人の知識やノウハウが組織に還元されて組織知となり、そうした組織知が再び個人に還元される。そんな知の循環を社内に生み出すことを目指し、これまで多くの企業が情報共有を目的にしたITインフラ作りに取り組んできた。しかし、期待した成果につながらず、改めてその仕組みを見直したいという企業の声は少なくない。「数年前にグループウェアを導入したが、情報を登録する社員はほんの一握りに限られている」あるいは「登録ファイル数が増えるばかりで、それらを積極的に閲覧・活用している形跡がない」という現象に心当たりがある企業も多いだろう。

情報発信の“場”を提供
メリットを体感させる

知の循環を生み出すには、システムという“箱”を用意するだけでは不十分だ。社員1人ひとりが自分の知識や情報を組織に還元しようという「発信するWill(意志)」、組織内に蓄積された知識を積極的に吸収して業務に活用しようという「受信するWill(意志)」を社内に醸成することが欠かせない。そのためには、「発信してよかった」「受信してよかった」と日々体感できることが重要だろう。

当社が2008年の設立以来実施している「ナレッジフェア」は、その「体感」を実現するプログラムの1つだ。社員が日々のコンサルティング活動から得た知見をフェース・トゥー・フェースでシェアするイベントで、1週間に2回ほど開催している。講師の社員は、自分が最近手がけたプロジェクト事例や最新のソリューションなどを発表。それに対して、参加者が自由に質問を投げかけたり、意見を述べたりする。

講師は、自分が提供する情報に対してほかの社員からフィードバックを受けることにより、新たな発見を得られる。また、ナレッジフェアで発表した内容が、新規案件の開拓につながることもある。例えば新しく開発したソリューションを発表すると、参加した社員を経由して、他の顧客とのビジネス発掘に横展開されるのだ。情報を積極的に発信することで、自らのビジネス機会が増幅するという恩恵を得られる。

こうしたメリットを実感し始めた社員の間に、「発信するWill」は確実に浸透している。取り組みを始めた当初は、主管部門であるナレッジ・マネジメント部がテーマを選び、講師を依頼して情報発信を促していたのに対し、最近では背中を押さずとも、社員が自らトピックを携えて発表機会を求めてくるようになった。

“暗黙知”の共有が受信者の意欲をかきたてる

一方、ナレッジフェアは「受信するWill」も同時に育んでいる。フェアには、20人ほどの定員に対して50人以上が参加して立ち見が出ることも珍しくない。というのも、ナレッジフェアには業務を遂行した結果だけでなく、そこに至ったプロセスを共有できる利点があるからだ。

システム上にファイルの形で蓄積される情報は、あくまで業務の結果であり、それを参照するだけではさらなる価値創造の役には立たない。例えば、ある顧客に対する提案書が資料として手に入っても、自分の顧客への提案書が書けるわけではない。なぜなら、顧客企業によって解決すべきビジネス課題や、そのために利用すべき製品やサービスの組み合わせは異なるからだ。

本当に社員が知りたいのは、完成した提案書やプレゼン資料ではなく、その背後にどういう思考プロセスや工夫、コラボレーションの形があったのか、という点だ。対面で質疑や意見交換できる場であれば、システムに蓄積されたファイルからは見えない“暗黙知”を分かち合いやすい。

ナレッジフェアは、オフィス内のオープンスペースで開催している(写真)。参加していない社員にもフェアの様子や熱気が伝わり、興味を喚起し、「自分ももっと詳しく知りたい」という意識を呼び覚ます。フェアの途中で飛び入り参加する社員も多く、回を重ねるごとに参加者が増えている。受発信している場をオープンにすることも、「受信するWill」を刺激する上で大きなポイントになるのではないか思う。

写真 シグマクシスが週に2回実施しているナレッジフェアの様子。新たな知識や情報を得られるとあって、講師役も参加者も真剣そのもの
写真 シグマクシスが週に2回実施しているナレッジフェアの様子。新たな知識や情報を得られるとあって、講師役も参加者も真剣そのもの

フェアの様子はWeb会議システムを使ってライブ配信し、社外にいる社員も視聴できるようにしている。配信した動画を、発表者が作成したプレゼン資料とともにシステムに登録すことで、当日参加できなかった社員も、いつでも情報共有の現場を追体験できる。

今回は、社員の情報受発信に対する意識を向上、定着化させる手法の1つを述べたが、これは情報共有を促進するために欠かせない最初のステップだ。当然当社では、ナレッジマネジメントのシステムも独自で開発し、実装。高い検索性やプロジェクト単位のセキュリティを実現すると同時に、コミュニティ形成促進のための仕掛けを導入し、ナレッジの社内流通の質とスピードの最大化を追求している(図2-1)こうした取り組みの詳細については、また別の機会に紹介したい。

図2-1 KM Cycleの活性化を支援する情報システムを導入
図2-1 KM Cycleの活性化を支援する情報システムを導入

「情報をシェアすることは、互いの成長に結び付く楽しい行為である」。社員全員が、そう実感できる風土をまず創り上げること。それが価値を生む情報共有の第一歩であることを強調して、締めくくることとする。

河津 敬
シグマクシス ナレッジマネジメント ダイレクター
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