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M&Aによる拡大戦略を転換 ソフトウェアへの本業回帰で次の成長機会を探る[サイボウズ(証券コード 4776)]

サイボウズの株価が底堅い。2009年9月28日、米国マイクロソフトとの業務提携を発表してから株価は急上昇。提携前は1万8240円(09年9月25日終値)の水準が、この発表により1カ月で3倍近くの5万600円(09年10月20日終値)まで暴騰した。この提携は同社にとって、どういうインパクトがあるのか? 今回は同社の業績、今後の株価について考えてみよう。

M&Aによる業績拡大

サイボウズという社名から多くの人が連想するのは、“グループウェアの会社”というものではないだろうか。同社は“情報サービスの大衆化”という理念のもと、1997年に「サイボウズ Office 1」を発売。当時、グループウェア市場で高いシェアを有していたLotusNotes(日本IBM)やMS. Exchange(マイクロソフト)といった大手が手薄だった中小中堅企業向けに、グループウェアを提供してきた。

設定や使い勝手の分かりやすさ、シンプルな機能、割安な価格などから、同社の製品は中小中堅企業のみならず大企業の部門、学校、官公庁などへ浸透。グループウェアでは必ず名前が挙がるほどのブランド認知に至った。2006年以降は高いブランド認知力、および顧客ベースを背景に、M&Aによる事業拡大を模索。具体的な方向性として、①通信=グループウェア顧客にMVNOによる携帯通信サービスを提供(インフォニックスの買収)、②ソリューション=同じく顧客にグループウェアに付随するソリューションを提供(ネットワーク構築を手掛けるクロスヘッド、内部統制を支援するブリングアップの買収など)している。こうした買収により同社の業績は、08年1月期に売上高120.3億円まで拡大した(図1)。

図1 サイボウズ連結売上高および営業利益率推移(単位:百万円、%)
図1 サイボウズ連結売上高および営業利益率推移(単位:百万円、%)

本業回帰で次の成長機会を探る

しかしM&Aによる拡大路線は、同社自身が「連結子会社の運営とシナジーの醸成にコストがかかり、業績を伸ばそうと思ってもなかなか伸ばせなかった」(石井和彦CFO)と総括するように、シナジー効果よりもむしろコストが先行した。それを踏まえて09年1月期からM&A路線を修正し、グループウェアの「かんたんオフィス」(中小企業向け)、「ガルーン」(大企業向け)の開発・販売を中心とした本業に専念する方向に舵を切った。10社あった連結子会社も5社まで減らしている。

とはいえ本業のソフトウェア事業が盤石であるかといえば、そうではない。特に近年は、不況による顧客の買い控えに加えて、ネオジャパンのような競合企業や、Webメールやカレンダー共有を組み合わせたGoogle Appsをはじめとする強力なライバルが出現。楽な状況ではなくなってきている。事実、09年1月期の「かんたんオフィス」シリーズのラインセンスは22.0憶円(前年比-5.3%)と前年度を下回る水準に陥っている。

こうした状況下でのサイボウズの成長戦略の1つが、マイクロソフトとの提携だ。情報共有機能を主体としたマイクロソフトのミドルウェア「SharePoint」上でサイボウズがアプリケーションを開発し、2010年上半期中に実際の製品をリリースするのが骨子である。日本におけるSharePointのシェア拡大を目指すマイクロソフトと成長の糧を探すサイボウズとの思惑が一致した。

一方で既存のグループウェア顧客にアド・オンとして日報、売上情報を提供する「かんたんSaaS」を1ユーザーあたり500円/月で提供。手軽さ、割安さを前面に打ち出した新規事業で、次の成長を加速させる。

サイボウズの業績動向

では同社の業績について考えてみよう。今期(10年1月期)はグループ再編の過渡期であり、通信事業(子会社インフォニックスは同第2四半期に株式譲渡完了)、およびソリューション事業(同事業46%の売上を占めるブリングアップは同第4四半期に株式譲渡完了)が引き続き連結売上高に計上される。今期は、この通信事業(売上高 9.1億円、営業利益▲2.5億円)およびソリューション事業(売上高 11億円、営業利益▲2億円)に本業であるソフトウェア事業(売上高 41.3憶円 営業利益 7.8億円)を合わせた売上高61.4億円、営業利益3.3億円を予想する。売上高は景況感の悪化により会社計画(売上高65億円)を下回るが、営業利益は第3四半期における2.2億円を踏まえれば、会社計画(営業利益2.3億円)を上回るという見方だ。

一方、来期以降は通信事業と主要なソリューション事業でのグループ再編が進み、売上高はほぼソフトウェア事業、すなわち連結≒単体に近づく。不況やGoogle Appsなどの影響などにより、中小企業向けグループウェアのかんたんシリーズは苦戦が続くが、大企業向けのガルーンシリーズは導入社数の拡大により微増になる見通しだ(図2)。前述のマイクロソフトの提携の成果はどうか。筆者は、SharePointの導入が進んでいないこともあり、来期業績へのインパクトは限定的と見る。これを踏まえたソフトウェア事業の売上高は前年度を下回る売上高40億円、営業利益7.5億円を予想する。

図2 サイボウズ単体ソフトウェア売上高および営業利益率推移(単位:百万円、%)
図2 サイボウズ単体ソフトウェア売上高および営業利益率推移(単位:百万円、%)

ソリューション事業に関しては売上高が大幅に減少(11億円→3.5億円)するものの、採算面では改善(営業利益▲2億円→▲1億円)し、ソフトウェア事業が減収減益でもグループ再編効果で結果的に減収増益(売上高 43.5億円、営業利益6.5億円)を予想する。“本業回帰”により、今期をボトムに、来期は利益面において改善が見込めるという見方だ。

サイボウズの理論株価

最後に同社の理論株価について。12月22日終値の3万5400円、今期予想EPS(1株あたり純利益)115.3円から算出されるPER(株価収益率)は306倍。これは極めて高い水準だが、現在の株価は今期ではなく、来期以降の株価水準を織り込んでいるとみられる。来期予想EPS 624円、およびサイボウズの平均PERである50倍を掛け合わせた理論株価は、3万1400円となる。たしかに、マイクロソフトとの提携によって株価は暴騰したものの、マイクロソフト効果というより、むしろ業績は今期がボトムであり、来期の業績改善が株価に織り込まれつつあるというのが筆者の見方だ。

本業回帰により来期は利益面の改善が見込まれるが、これはあくまでグループ再編の効果がメインだ。今後の成長にはまだ顕在化していないマイクロソフトとの提携、SaaS事業など、新規事業での業績寄与が欠かせないと言えるだろう。

図3 サイボウズ株価推移(単位:円)
図3 サイボウズ株価推移(単位:円)
長橋 賢吾
ITアナリスト・博士(情報理工学)

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