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米国コラボレーション最前線―進化するグループウェア Part 4

Web2.0技術を採用した
社内イノベーションへの動きが加速

単に情報を受発信するだけでは何も生まれない。社員同士が相互に作用しながら全く新しい知を創り出す。ソーシャルメディアは、そうした社内コラボレーションを可能にし、企業に継続的な変革のチャンスをもたらす。

対人コミュニケーションで刺激を与え合い、思考という“個人内コミュニケーション”を高める。複数の人がこうした相互作用を繰り返しながら物事を決め、遂行する。それが、コラボレーションである(図4-1)。社内のコラボレーションをいかに促進するかは、多くの企業にとって長年の課題になっている。

図4-1 人の思考は、対人コミュニケーションによって高められる
図4-1 人の思考は、対人コミュニケーションによって高められる

Lotus Notesが1990年に生まれて以来、数々のグループウェアが開発され、上のような問題意識を持つ企業に普及した。しかし、多くはメールやファイル共有といったコミュニケーション機能を提供するにとどまり、それだけで即、社員1人ひとりが積極的にコンテンツを生み出すコラボレーションを引き起こすような例は極めてまれだった。

ところが、2000年代にソーシャルメディアが登場。気構えることなく個人が自由に情報発信しやすいそれは、かつてのグループウェアが果たせなかったコラボレーションを現実的なものにし始めている。

ソーシャルメディアを構成するのはブログやマイクロブログ、Wiki、ソーシャルブックマーキング、RSSフィード、マッシュアップ、PodキャスティングといったWeb2.0の技術だ。これらの技術は、ユーザーが自分で自由な形式でコンテンツを作り、コミュニティ内で交換・共有することを容易にする。

こうしたソーシャルメディアを駆使して知識の生成や共有・交換を支援する企業向けWebサービスを、「コラボレーション2.0」と総称する。これらを活用することにより企業は、社員が積極的に知識やアイデアを出し合う場を構築。そこで育まれた集合知(collective intelligence)を全社共有の資産にして、業務のさらなる高度化に生かせるようになる。

社内の受発信を活性化
飛び交う情報量が17倍に

米国ではすでに、多くのベンダーがコラボレーション2.0市場に参入。自由形式の書き込みや検索、フィードといったベーシックなコラボレーション機能だけでなく、社内におけるアイデア創発を目指すイノベーションマネジメントや、受講者同士が互いに知識を高め合うソーシャルラーニングといったシステムを提供しているものもある。次ページ表4-1に、そうした例を示す。

図表4-1 コラボレーション2.0のサービスを提供するベンダー
表4-1 コラボレーション2.0のサービスを提供するベンダー(画像をクリックで拡大)

導入企業も相次いでいる。その1社が、薬局チェーン最大手のCVS Caremarkだ。同社の営業部門は従来、製品や市場動向など業務に必要な情報を、5種類の文書管理システムで分散管理していた。営業担当者にとって、散在する情報から必要なものを探し出すのは面倒であるため、社内の専門家に電話やメールを使って個別に問い合わせるケースが多かった。回答者である専門家にとっては、質問への対応に時間をとられて本来の業務が滞る弊害が生じていた。さらに、やりとりが質問者と回答者の間に閉じていたため、複数の担当者から受ける同じ質問にいちいち答える無駄も多かった。

CVSの経営陣は、こうした問題を解決するには社内の知識を集約して有効活用できる環境が不可欠と判断。そのためのツールとしてOutStart社のコラボレーションシステムを採用し、Maxと名づけた。効果は絶大だった。営業担当者がMaxに質問を書き込むと、1時間もしないうちに社内の誰かが答えを書き込んでくれる。電話やメールでの問い合わせと違い、相手の業務を中断させることもない。その便利さに気づいた社員の間で知識の共有やコラボレーションに対する意識が高まり、Max上では今、活発な意見交換が起きている。投稿される質問の数は、電話やメールを使っていたころの17倍に増大した。もちろん、そうしたやりとりはすべて検索・閲覧可能だから、同じ質問が何度も投稿されることはない。

アイデア吸い上げ
イノベーションを引き起こす

イノベーションマネジメントも、コラボレーション2.0の有望なアプリケーションである。これは、Web上のフォーラムでアイデアを発案・育成し、イノベーションを促進する手法だ。具体的には、アイデアを自由に出し合って互いに磨きあげ、新製品・サービス開発プロジェクトに仕上げていくための環境を提供する。

「3人集まれば文殊の知恵」という言葉がある。しかし、ビジネスが複雑化・高度化している今日では、3人分の知恵では足りない。それでは多人数を会議室に集めてブレーンストーミングをやればよいかといえば、そう簡単にはいかない。日米を問わず人間は、多くの人の前ではなかなか本音を言い出せないものである。その点、Webでのやりとりであれば相手の目を気にせず思いつくまま発言できる。このため、社内のアイデア創出を活性化しやすい。

Spigit(スピジット)社の「InnovationSpigit」は、アイデアの提案から正規のプロジェクトに昇格させていく過程で、各参加者がどのくらい貢献したかを評価し、報償制度に結びつける機能を提供する(図4-2)。すでに、IBMやIntel、Wal-Mart、サウスウエスト航空といった大企業が同社のシステムを利用しているほか、医薬品や金融業界でも導入が進んでいる。このほか、Cisco SystemsはBrightidea社のイノベーションマネジメントシステムを活用している。

図4-2 米Spigitが提供するアイデア育成サイト「innovationSpigit」の画面
図4-2 米Spigitが提供するアイデア育成サイト「innovationSpigit」の画面

イノベーションマネジメント以外にもう1つ、最近注目を浴びているコラボレーション2.0を活用したシステムが、ソーシャルラーニングだ。これは、フォーラム形式の質疑応答やWiki形式の書き込み機能などと、ファシリテーション機能を統合化したコラボレーション環境である。

受講者である社員は、与えられた課題に対するレポートをWeb上で作成・提出することはもとより、その課題についてフォーラム内でクラスメートと議論したり、Wikiを使ってレポートを共同作成したりできる。Web環境であるがゆえに、授業時間外でも討論を続けられる利点もある。

オハイオ州のクリーブランド連邦準備銀行は、行員のトレーニングにMzinga(ムジンガ)のソーシャルラーニングシステムを活用。従来よりも短いトレーニング期間で社員の知識レベルを引き上げることに成功している。

取引先との協働を促し
さらなるイノベーションへ

2010年は、企業間コラボレーションも本格化しそうだ。

米ビジネスパフォーマンスマネジメントフォーラム(Business Performance Management Forum)と米CMOカウンシル(Chief Marketing Officer Council)は2009年12月、グローバル企業400社を対象に実施した企業間コラボレーションに関する調査結果を発表した。これによると、「パートナー企業とのコラボレーションによる協働イノベーション(co-innovation)を実現できている」と答えたのは全体の30%。さらに、「そうした協働イノベーションを実現したい」と回答した企業は全体の23%に上った。

企業間コラボレーションには、SCMのように受発注や在庫といった業務データに加えて、知識を交換・共有するためのネットワークが必要である。これを、ビジネスコラボレーション・ネットワークと呼ぶ(図4-3)。OSG社の「Blueroads」は、こうしたビジネスコラボレーション・ネットワークをWeb上で構築できるシステムだ。今後、同種のサービスが増えていくだろう。

図4-3 ビジネスコラボレーション・ネットワーク
図4-3 ビジネスコラボレーション・ネットワーク
山谷 正己
IT Leaders米国特派員/米国Just Skill社長/名桜大学客員教授

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