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進まぬ電子行政は国家の恥(vol.18)
1994年といえば、インターネットが急拡大する前であり、初のWebブラウザ「Mosaic」が公開された直後のこと。計画自体は、世界的に見ても先進的だったといえるだろう。しかし、その後進んだのは霞が関WANや各省庁のLAN、住基ネットなど、いわばハード中心のインフラ整備だった。
能力のなさを露呈
2001年には「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」、いわゆるIT基本法が策定され、行政の情報化が重点分野に位置づけられた。2003年には行政手続オンライン化法が施行され、電子政府構築計画も閣議決定された。内容面では行政手続きのワンストップサービスや業務・システムの最適化計画など、ハードからソフトへ重心が移動。いよいよ世界に誇れる電子行政が実現されるかに思えた。
だが、いまだに成果は上がっていない。IT戦略本部のe-Japan(2001年)は、総務省単独のu-Japan(2006年)構想を挟んでi-Japan(2009年)に変わり、成果は2015年まで先送りになった。電子政府はまとまらず、電子自治体はバラバラである。
推移を冷静にみれば、国家の威信を無くした醜態だ。“国家の恥”とも言える。先進諸国から見れば、あるいは途上国から見ても、金をばらまくハードはともかく、ソフトの能力がないことを露呈してしまった。見本や手本にする国、あるいは競合相手とは見做されない。民主党による新政権も、電子行政にはほとんど言及しない。
進まぬ要因
進まぬ電子行政に業を煮やし、経団連が幾度も提言を投げかけている。直近では2009年11月17日に「ICTの利活用による新たな政府の構築に向けて」を提言した。経団連会長の新年メッセージでも、これに触れている。
一体なぜ、こんな醜態をさらす羽目になったのか? 電子行政が進まぬ要因、阻害要因は産業界からの評価やメディアの論評で様々に指摘されているが、おおむね次のようなものである。
- 業務の簡素化・標準化、いわゆるBliRに取り組まないこと
- コスト意識の欠如ゆえにインセンティブが働かないこと
- 国家CIOや推進体制などが無くITガバナンスが出来ていないこと
- ナショナルIDや企業共通コードなどが整備されないこと
- 予算制度や法制度に不備があること
- 利用促進策が不足していること
確かに実態としてこれらの要素は存在し、行政府も認識している。それでも進まず先送りされていく計画を見ると、もっと根源的な欠陥に思い当たる。それは日本の将来にも関わるかなり深刻な問題かもしれない。
本当の理由と韓国との差
それはデザイン力の問題である。システム構築力といってもいい。ここでいうシステムは情報システムのことではなく仕組みのことである。デザイナー不在の問題は前回の本欄でも書いたが、企業活動においても見受けられる。
部品作りは得意だが、システム作りは上手とはいえない。ルールは作れても体系化は上手くない。フレームワークなどは輸入物を活用することが多い。情報分野においてもデザイン力がないと複雑で横断的な仕組みがうまく作れないし、キラーアプリケーションのようなものも生まれて来ない。
だからといって日本に仕組みのデザインが出来る人材がいないとは思えない。国民的な特性なのか、教育の影響なのか、あるいは思考訓練の不足なのかわからないが、人材が育っていないのは事実であろう。
一方、韓国では電子行政が着々と進んでいる。行政安全省が住民サービスの先進事業として推進に取り組んでおり、2010年末までにはほとんどの住民サービスをオンライン化するという。
同時に232の自治体がシステム統合して合理化を図っている。そして韓国では住民サービス事業をG4C(Government for Citizen)事業と呼ぶ。G2C(Government to Citizen)でないところにデザイン力の差を感じる。
- 木内 里美
- 大成ロテック監査役。1969年に大成建設に入社。土木設計部門で港湾などの設計に携わった後、2001年に情報企画部長に就任。以来、大成建設の情報化を率いてきた。講演や行政機関の委員を多数こなすなど、CIOとして情報発信・啓蒙活動に取り組む
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