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先進企業にみる“本命”の効果 Part 2

コスト削減だけではない先進ユーザーにみる“本命”の効果

レガシーマイグレーションを完遂し、新たなシステム基盤を手に入れた企業は、情報システム部門の活性化や開発生産性の向上など、コスト削減以外の大きなメリットを享受している。JTBと積水化学工業の事例から、期待できる効果を再検証する。

相次ぐ新機能の追加が容易に
JTB

永井雄二氏 永井雄二氏
JTB情報システム
執行役員 基幹システム運用第1本部長

JTBは2009年4月、40年にわたって予約系システムで使い続けてきたメインフレームに別れを告げた。IBM 9672上で稼働していた国内および海外の旅行予約やテーマパークの発券を担うシステム「TRIPS」をC言語とJavaで再構築し、AIXサーバーやIAサーバーなどに移行するプロジェクトが完了したのである。2001年に検討を始めてから足掛け8年を超える長期プロジェクトだった。(本誌2009年6月号の特集「進化するITプラットフォーム」を参照)。

プロジェクトの最大の目的は、機能強化や運用保守を続けられるようにTRIPSのシステム基盤を再構築すると共に、アプリケーションを旅行商品の多様化に柔軟に対応できる構成にすること。特にシステム基盤については、将来的に大きなリスクにつながりかねない状況だった。TRIPSはTPFという特殊なOSを使っていたためである。JTB情報システムの永井雄二執行役員は「(TPFを熟知した)技術者は少なくなり、社内で育成することも難しくなることが予想された」と話す。

JTBはTRIPSを再構築してAIXサーバーやIAサーバーに移行したことで、TPFを使い続けることによる一種の“呪縛”を断ち切った。それにより機能強化や運用保守の維持という当初の狙いを果たした以上に、開発生産性を高める効果を手に入れた。

同社は毎月のように、TRIPSの機能改良や新機能の搭載をしている。1カ月に4、5件の機能をリリースすることも珍しくない。当然、複数のプロジェクトが重なる時期には開発要員の確保が課題になるわけだが、「C言語やJavaで再構築したので開発要員の心配は少ない。ピーク時でも高い開発生産性を維持できるようになったのは、オープン化による大きな成果の1つだ」(永井執行役員)。

高い開発力をIT部門に取り戻す
積水化学工業

寺嶋一郎氏 寺嶋一郎氏
積水化学工業
コーポレート 情報システムグループ長

「必要な機能を矢継ぎ早に開発し、信頼性を担保しながら次々とリリースする。今の情報システム部門は、そんな組織に生まれ変わりつつある」。こう話すのは、積水化学工業の寺嶋一郎コーポレート 情報システムグループ長だ。「ITの仕事は本来、クリエーティブで楽しいもの。将来的にはグーグルのように、面白そうなことを情報システム部門が率先して進められるようになりたい」。

積水化学工業の情報システム部門の変化は、地道にレガシーマイグレーションを進めてきた末に手に入れた1つの成果である。同社はかつて、マスター管理や会計、人事給与のシステムにIBM製メインフレームを利用し、販売管理システムを富士通製メインフレームで構成していた。データベースソフトやトランザクション処理ソフトなどミドルウェアの費用が大きな負担になっていただけではない。機能追加を繰り返してきたシステムはプログラムが“スパゲティ”状態で、「ちょっとした改修でも検証を含めた工数が膨らみ、費用が想定よりケタ違いに大きくなることがあった」(寺嶋グループ長)。

そこで同社はITコスト削減とシステムの保守性・操作性の向上を目的に、1996年から段階的にレガシーマイグレーションを進めてきた。まず、会計システムをハイペリオンソリューションズ(当時)のパッケージやテラデータ製品を使って全面再構築し、1999年にカットオーバー。2003年には販売管理システムをJavaで再構築し、2006年には人事給与システムをワークスアプリケーションズ製品を用いた新システムに移行した。そして2008年1月、IBM製メインフレームに残っていたマスター管理などの機能をUNIXサーバー上に移行してメインフレームを全廃した。

最大の成果は内製できる技術力

メインフレームを全廃してオープン系に移行したことで、「ソフト保守費用だけみても、かなりの投資対効果はあった」(寺嶋グループ長)。しかし、積水化学工業にとって何より大きいレガシーマイグレーションの成果は、12年間かけてシステム基盤を全面刷新する過程で、システムを内製できる技術力を取り戻したことにある。

同社はレガシーマイグレーションのプロジェクトにおいて、「時間がかかっても内部要員で作業を進める」という方針を貫いた。「どのような機能が既存システムで動いているのか把握するため、プログラムを自動でコンバージョンするツールも基本的に使わなかった」(同)。

その結果、以前はスパゲティ状態で改修時の工数やコストの増加を招いていた基幹系システム全体の見える化を果たした。加えて、販売管理や会計のシステムを内製することでJavaやPerlの技術を社内に蓄積。基幹系だけにとどまらず、基幹系の情報を利用する情報系システムも自社開発できるようになった。現在はオープンソースソフトを積極的に採用しながらグループウェアも自社開発し、機能強化している。

具体的には、基幹系から販売実績データや在庫データを取り込んでグラフ表示する経営情報管理の機能や、社内システムの利用状況をモニタリングする機能、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の機能をグループウェアに実装。システムの使い勝手向上と利用促進を図っている。

積水化学工業のシステム利用者はグループ全体で2万人にのぼる。市販のグループウェアやインターネット上のサービスの料金がユーザー数で決まることを考えれば、「新しい技術を習得して、社内でシステム開発できることで得られるコスト効果は計り知れない」(寺嶋グループ長)。

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