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情報強者であり続けることの意味は何か?(vol.19)

「情報弱者」という言葉がある。かなり変則的な使われ方もしているが、この言葉は本来、情報通信技術を利活用するのが困難な状況にある人を指していた。経済的なこと、通信インフラなどの環境的なこと、高齢者あるいは高齢者でなくてもうまく使えないこと、または視聴覚障害などのチャレンジドのことなど、困難な理由は様々だろう。困難さゆえに起こる格差を、デジタル・デバイドと呼んでいる。

通信機器の発達には目覚ましいものがあり、携帯電話をはじめとしてスマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、ネットブック、電子ブック、ゲーム端末、モバイルコンピュータ、そして伝統的なPC(Personal Computer)など多様な情報端末が溢れている。それらの端末には洪水のように情報が流れ込む。好むと好まざるに関わらず、現実の状況はそうなのだ。

常態化するモバイル依存症

例えば大都市圏に居住している人にとっては、電車で多くの乗客が携帯の画面を睨んで操作しているのは日常的な光景になった。メールのやり取りやニュースを読んだりしているのだろう。朝のカフェには新聞を傍らにおいた若い女性がモバイルPCのキーボードを猛烈なスピードで叩いている。会議中にもメールを確認している社員を見かけるし、授業中の大学生もしかりだ。

このように情報端末を駆使して効率よく?処理している人もいれば、携帯電話は持っているがメールは読むだけでもっぱら通話オンリー。複合機もうまく使えないからFAXも誰かに頼むという人もいる。ここで取り上げたい象徴的な情報弱者VS情報強者は組織活動にみられるこのようなタイプの人たちであり、一般には前者が情報強者で、後者が情報弱者ということになる。

情報弱者は実は強者だ

情報強者である技術マネジャが、PCやスマートフォンを駆使して手際よく業務を処理している。情報強者だけに一見、効率はいい。効率がいいのだから当然、時間に余裕がありそうだが、現実は全く逆だ。いろいろなリクエストがきてスケジュールはタイトになる一方である。移動中にもメールで連絡したり経路検索したりGoogleマップで行き先を確認したりしている。確かに便利だがひたすら多忙感だけが残る。

そういう合間に情報弱者の営業担当者から電話が入る。資料はFAXで送った、と言われても事務所に戻るまで確認できない。情報弱者のコミュニケーションツールは面談、電話、FAX、郵送である。確認はFAXの資料を見てから電話するしかない。情報強者は情報弱者のスタイルに合わせざるを得ないのだ。情報弱者は客先を回り、やたらと人的ネットワークが強い。そして営業実績も高水準である。面談に勝るコミュニケーションはない。

情報弱者の営業担当者でも社内の業務システムに入力をしなければならないこともある。情報化が進むと様々な情報システムにやたら入力が必要になる。彼/彼女にとって無機質なその作業は非効率であり苦痛でもある。仕事をしている充実感などは感じられないはずだ。

“情報爆発の個人版”が起きている

先の分類で言えば、筆者は間違いなく情報強者だ。しかし気がつくとメール処理に多くの時間を取られている。届いたメールに返信を書かないわけにはいかないので、多少遅れても書く。交流を深めるほどその数は増え続ける。片付けておかないと溜まる一方になるから夜でも休日でも書く。頻繁にメールを確認していないと落ち着かない。大量の添付書類やWebを読んでコメントを書かなければならないこともある。

慣れているから処理は効率的だが、やっていることに価値が感じられない。マルチ処理に脳を使っていると集中して文章を書くようなことが出来なくなる気もする。このことは米国の著名な評論家、ニコラス・カーも警鐘を鳴らしていた。情報リテラシーうんぬんを超越した、“情報爆発の個人版”のようなものだ。

処理に追われている最中に、バリ島在住の知人からメールが届く。地域の祭りや田植えの様子を伝えてくる。インターネットがなかったら気軽に日常の情景を伝えてくることもないだろう。しかしその情景は効率とは無縁の生活と、生きる喜びに満ちている。情報強者であり続けようとする間に、大切なものを失っているのかも知れない。

木内 里美
大成ロテック監査役。1969年に大成建設に入社。土木設計部門で港湾などの設計に携わった後、2001年に情報企画部長に就任。以来、大成建設の情報化を率いてきた。講演や行政機関の委員を多数こなすなど、CIOとして情報発信・啓蒙活動に取り組む

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