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ITソリューション強化により付加価値の拡大を狙う[キヤノンマーケティングジャパン(証券コード 8060)]

キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)が、ITソリューション事業の強化を急いでいる。同社の主力は、キヤノンが製造する企業向けの複合機や半導体製造装置、消費者向けのデジカメやプリンタなどの販売。ITソリューション事業を強化することで、付加価値の拡大を目論む。この戦略が今後の業績や株価にどう影響を及ぼすのかを考えてみよう。

キヤノンMJのセグメント構成

キヤノンMJの売り上げは現在、(1)複合機の販売や消耗品(トナーなど)、保守を扱うドキュメントビジネス、(2)システム開発・保守・製品販売を扱うITソリューション、(3)コンシューマ向けにデジカメ、プリンタなどを販売するコンシューマ機器、および(4)半導体装置などを販売する産業機器の4分野から構成される(図1)。

図1 キヤノンマーケティングジャパン連結売上高推移(単位:億円)
図1 キヤノンマーケティングジャパン連結売上高推移(単位:億円)

このうち、コンシューマ機器と産業機器は、製品の競争力に依存するところが大きい。例えばコンシューマ機器。普及型デジタル一眼レフカメラ「EOS Kiss」シリーズなどによる高いブランド力や競争力から、2009年度の営業利益は前年度比+4.9%の107億円と、不況ながらも競争力を維持している。

一方、シリコンなどに回路を焼き付ける半導体露光装置(ステッパー)を中核とする産業機器では、ライバル企業であるオランダのASML社に技術開発面で遅れをとった。このため競争力が低下し、09年度の産業機器の営業赤字は△11億円を計上した。

苦戦が続くドキュメントビジネス

これに対し、ドキュメントビジネスやITソリューションは、商品の競争力に加えてソリューションの形で顧客に提供するため、キヤノンMJとして付加価値を付けられる幅が広い。しかし昨今の不況下で、これらの事業をを取り巻く環境は厳しい。

加えて、ドキュメントビジネスでは複合機のコモディティ化が進む。1980年代、全国で企業のOA化が進み、複写機事業は大幅に拡大したが、現在ではカラーを含めた複写機および複合機の普及が一巡。リコーや富士ゼロックスといった競合他社との機能面での明確な違いを打ち出しにくくなったのだ。

実際、2009年度の販売台数は複合機が前年度比△32%、レーザープリンタが同△14%と大幅に減少。これは、トナーなどの消耗品の減少、保守事業の減少にも結びつき、ドキュメントビジネスの売上高も、2007年度の3457億円をピークに2009年度は2843億円に減少した。

ITソリューション事業の強化

それをカバーし、さらなる付加価値の提供を目指す施策が、ITソリューションの強化だ。元々、キヤノンMJはキヤノングループの情報システム構築や、キヤノンの複合機などの組み込みソフトの開発(連結子会社であるキヤノンソフトウェアが主に担当)を手掛けてきた。

加えて03年に住友金属工業の情報システム会社である住友金属ソリューションズ(現在のキヤノンITソリューションズ)を買収。その後もアルゴ21を買収するなど、M&Aにより事業拡大を推進している。

しかしM&Aだけでは既存のビジネスとの相乗効果は限定的だ。そんな中で計画しているのが、ドキュメントビジネスとの融合。すなわち昨今の複合機はネットワーク機能が標準で、社内情報システムをはじめ様々なサービスとの連携が可能。そこで例えばデータセンターと複合機を接続し、ITソリューションにより、何らかの付加価値サービスを提供する。

そうしたことの基盤として同社は、09年度150億円を投じて都心型データセンターの建設に着手(12年秋竣工予定)。さらにサービスを一元提供するため、ITソリューション事業会社を再編し、中間持株会社であるキヤノンMJアイティグループホールディングスを、10年4月に設置する予定である。

図2 キヤノンマーケティングジャパン連結売上高および営業利益推移(単位:億円)
図2 キヤノンマーケティングジャパン連結売上高および営業利益推移(単位:億円)

キヤノンMJの業績動向

以上を踏まえて同社の今後の業績について考えてみよう。まずドキュメントビジネスでは、09年9月に新ブランドの複合機「imageRUNNER ADVANCE」を発売した。Webサービスあるいは基幹システムとの連携など、複合機というよりサーバーに近い製品であり、これをテコにドキュメントビジネスの強化をはかる。とはいえ、「カラーコピー禁止」など、企業のコスト削減は根強く、すぐに業績に寄与するとは考えにくい。10年度は2840億円(前年同期比△0.1%)のほぼ横ばいを予想する。

ITソリューションはどうか。景気の底打ち感はあるものの、企業のIT投資が大幅に伸びると見るのは、やはり楽観的に過ぎるだろう。セグメント変更による増額分+144億円を除けば、ほぼ横ばいの1692億円(同+9.6%)を予想する。

このように10年度については、売上高の伸長は限定的と見るが、コスト削減の面では改善が見込まれる。(1)前述の半導体露光装置について、10年1月から半導体事業をキヤノン本体に統合。産業機器での売上高はおよそ半分(09年度257億円→10年度予想140億円)を見込むが、営業利益は改善(09年度△11億円→10年度予想0円)すると見られる。

また09年度はドキュメントビジネスでの保守事業の採算が大幅に悪化し、営業赤字(両事業の営業利益合計△33億円)を計上した。だが1年かけて複合機保守要員の一部をITソリューション部門に再配置するなど社内リソースを最適化し、10年度は営業利益10億円までの回復を予想する。結果的に、営業利益は09年度の63億円を底に、10年度は84億円、11年度は109億円までの回復を予想する。

一方、キヤノンMJは中期経営計画として、12年度売上高7600億円、営業利益300億円を目指している。現状のペースではそれぞれ7000億円、100億円までは達成可能とみるが、計画を実現するには、さらなるM&AやITソリューションの収益力の強化が欠かせない。

キヤノンMJの理論株価

最後に同社の理論株価について考えてみよう。株価の下支えになっているのが配当利回りだ。無借金経営で財務基盤が安定していることもあり、安定した配当が期待できるのである。10年度の1株あたり配当予想は30円、東証1部での加重平均配当利回りは2%であり、配当が30円で同社の配当利回りが2%と仮定した場合の理論株価は、30円÷2%=1500円となり、2月26日の終値1179円よりも若干アップの余地がある。

図3 キヤノンマーケティングジャパン株価推移(単位:円)
図3 キヤノンマーケティングジャパン株価推移(単位:円)
長橋 賢吾
ITアナリスト・博士(情報理工学)

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