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パッケージ機能の把握に苦心 9カ月でナレッジ共有システムを構築【新日本空調】

- 山田 辰朗 氏
- 新日本空調 経営企画本部 企画部 部長
- 1986年4月、新日本空調に入社。大阪支店で技術部や工務部を経験し2008年4月から現職。今回のプロジェクトではPMを担い、企業活動の様々な側面(現場)で発生している異常や問題が、隠されたり歪められたりせずに「見える」ことが強い企業を作る絶対条件であるという経営思想に則り、「見える化」を単なるツールとしてではなく、企業活動を支えるインフラ的な「システム」とするべく、基本方針の策定からシステムの実現までを取りまとめた

- 佐藤 秀幸 氏
- 新日本空調 技術本部 技術企画部 部長
- 1982年4月、新日本空調に入社。ビルや工場の空調設備の設計・施工の他、特許管理、社内研修等に携わる。2002年10月には経営企画本部に所属し、会社の新基幹システム構築マネジャとして従事。2005年4月に技術本部に配属し現職に至る。今回のプロジェクトでは、「現場の問題解決力の向上」に向けて、技術情報や現場が抱える問題とその解決プロセスの「見える化」を実現できる運用を含めた仕組み作りを担当し、現在活用促進中

- 島澤 一夫 氏
- 新日本空調 経営企画本部 企画部情報システム課 課長
- 1983年9月、新日本空調に入社。情報システム部門で基幹システムの構築運用に携わる。2004年に基幹システムを外部委託によるERPに刷新し、以降はネットワークインフラの整備、情報系システムの構築やセキュリティ関連等、情報システム全般の企画構築を行う。今回のプロジェクトでは、「見える化」の基盤となるインフラを担当。現在は「営業の見える化」の支援に取り組む

- 末永 賢 氏
- 新日本空調 技術本部 技術企画部
- 1997年4月、新日本空調に入社。海外事業部にてシンガポールなど工場やビルの空調設備の設計・工事に携わり、2009年4月から技術本部に配属。今回のプロジェクトでは、会社が掲げる「三つの見える化」のコンセプトをシステムとして具現化する実行部隊を担当。施工要領書や管理書類など社内に保管された文書の電子化やデータベースへの登録も手がけた。本稼働後もシステムの活用促進を支援中
─「現場の見える化システム」を構築し、2010年2月から活用中だとか。いったい、どんなシステムなんですか?
山田:「知恵袋」「技術の広場」「現場問題」という3つの機能を備えたシステムです。
佐藤:知恵袋は、技術資料や施工要領書、工事業務管理書類、プレゼン資料といった社内の技術情報を蓄積するデータベース。いわば図書館で、ユーザーはキーワードを入力して全文検索できます。技術の広場は、設計や施工担当者が現場で直面した疑問に対して他の技術者がアドバイスを書き込むコミュニティ機能です。現場問題は、技術の広場と同様の機能を、案件やワーキンググループ別に提供します。
山田:当社は、「空調設備の設計や施工現場で今、何が起きているかを包み隠さず見られるようにする。それは他社との差異化につながる」という経営方針を掲げています。この方針を形にしたのがこのシステムだとご理解ください。
─従来、現場の様子は本社からは把握できなかった?
山田:…携帯電話やインターネットなど、通信手段はともかく、やはり現場とは距離的に離れている。それだけに、現場で何が起きているのか、何が問題になっているのかがダイレクトに見えないのが実情でした。
佐藤:全国の現場で日夜がんばっている技術者にしてみれば、会社とのつながりを感じる機会が少なかった。1つの現場に常駐する技術者は1人か2人ですから、何か問題に突き当たったとき、相談相手がいないんですよ。
─ちなみに、技術者が社外の現場に常駐する期間はどれくらい?
佐藤:案件によって異なりますが、大規模物件だと2〜3年。メンテナンスまで含む案件など、もっと長いケースもあります。
─なるほど。今回の取り組みは、「現場の見える化」であると同時に「現場からの見える化」でもあるわけですね。
佐藤:はい。知恵袋では社内の技術情報を一括して検索・閲覧できますし、技術の広場や現場情報を利用すれば遠隔地にいる社員同士がコミュニケーションできる。例えば、九州に勤務する技術者の疑問に対して、北海道の技術者が助言できます。
コミュニティ機能を評価し開発直前にベンダーを変更
─新システムの狙いは分かりました。実際にプロジェクトが動き出したのは?
山田:2009年4月です。この時点で、2009年12月に稼働させることは決定事項でした。
─開発から導入までは9カ月ですね。まず何をした?
島澤:さっきお話しした知恵袋と技術の広場、現場問題という基本要件を満たせるパッケージの選択です。
─3機能を持たせるというシステムの骨格は、このときすでにあったんですね。
山田:実は、2008年に前身となる取り組みがあったんです。そのときに基本的な要件までは決めていたんですが、うまくいかなかった。
─というと?
山田:今思えば、風呂敷をちょっと広げすぎたんでしょうね。独自システムをゼロから開発するつもりで、かなり複雑なシステムを考えていましたから。そこに、リーマンショックが起き、経営環境が厳しくなることが予想された。
─それで、プロジェクトそのものの見直しを迫られた?
山田:そういうこと。そこで、プロマネ以下メンバーを一新して「パッケージソフトの標準機能をベースに、カスタマイズを最小限に抑える」「グループウェアを同時に更新し、その機能を有効活用する」といった基本方針を掲げ、仕切り直したのが今回のプロジェクトです。
─仕切り直しとはいえ、要件がある程度固まっていたならやりやすかったでしょう。
山田:いえ、パッケージの機能を理解するのに時間がかかりました。プレゼンやデモを見ても、細かい機能まではなかなか把握し切れない。結局、拡張性やセキュリティ機能に優れている点を評価し、あるベンダーが提案した「intra-mart」で行くつもりでいました。
山田:ベンダー候補はもう1社ありました。東芝ソリューションです。「Know-ledgeMeister Succeed」を中核にした提案をプレゼンしてくれましたが、どうしても利用イメージを思い描けなかった。何度打ち合わせしても、どんな機能があって、どんな利点があるのかつかめなかったんです。
─それで採用を見送った。もっともなことです。
山田:ところが、6月半ばの最終プレゼンで風向きが大きく変わった。
─どういうことですか?
山田:KnowledgeMeisterに、コミュニティへの書き込みをメールで自動配信する機能があることが、この段階でようやく分かったんです。
佐藤:通常の掲示板や電子会議室機能では、そこにアクセスしないと閲覧も書き込みもできません。ユーザーが見ようと思わないと見られない。でも、私たちはユーザーがアクセスするのを待つのではなく、誰かが質問を投稿したことをプッシュで知らせる仕組みがほしかった。
島澤:KnowledgeMeisterでは、掲示板に書き込むと、コミュニティメンバーにその内容がメールが配信されます。さらに、そのメールに返信すると、回答内容が掲示板に自動投稿されるんですよ。ユーザーはわざわざ掲示板にアクセスしなくても、メールでコミュニティに参加できるというわけです。
─掲示板に書き込むという行動につきまとう手間や抵抗感を薄められるということですね。
島澤:ポータルになるグループウェアに、サイボウズ「ガルーン」を使うという点もよかった。というのも、当社はずっと同社の「Offce4」のユーザーだったからです。同じサイボウズ製品なら、ユーザーインタフェースもさほど変わらず、ユーザーが戸惑うこともない。
山田:セキュリティの面でも、intra-martと同等のことができると分かりました。それで「これはいける」となった。6月22日、決定機関である技術戦略委員会で、発注先として東芝ソリューションを提案。承認を得ました。
データベースを充実させ使われないシステムを回避
2007年3月にオープンした東京ミッドタウンの空調設備は、新日本空調が施工した─どんでん返しの末、ベンダーが決まった。カスタマイズは抑える方針だし、ここまで来たらあとはすんなり?
佐藤:いいえ、そうでもありません。こちらの要件とパッケージの機能をすりあわせる作業がありました。
山田:「できたらいいな」と思ってもできないところは必ず出てきます。カスタマイズを加えでも実装するかどうか。コストや開発期間への影響を考えながら、それを判断していきました。
島澤:ベンダーを交えて実際の開発作業を開始したのは7月31日です。
佐藤:技術本部のほうはこのころ、知恵袋に登録するデータを用意していました。
─あ、そうか。“箱”だけ入れても中身がなければ無意味だ。
佐藤:そうなんです。新システムがスタートしても、検索・閲覧できるデータが少なければ、ユーザーは「なんだこりゃ」と感じて使わなくなってしまいます。
末永:ただ、まだシステムの実物はありません。手探り状態でデータを作っていきました。幸い、ここ10年で作成した文書ファイルは、ほとんどそのままデータベースに登録できました。WordやExcel形式が多いですから。
─それ以前の文書は?
末永:10年以上前の文書となると、ワープロで作成して紙に印刷したもの。そうした文書をデータ化して登録するには、スキャナーを使っていったんPDFファイルに変換。それをさらに、OCRソフトで読み取って検索可能な文字データに置き換えなければならなかった。
─二重に変換したんですか。
末永:PDFファイルのままでは文字を認識できず、全文検索の対象にならないんです。
佐藤:最初は「すぐに終わるだろう」と楽観していたんですが、これが大変でした。OCRで読み取るとき、予想以上に文字化けする率が高くて。思うように進まず、あせりましたよ。
─写真や設計図などOCR読み取りできないものはどうしました?
末永:PDFのまま登録しました。当然、そのままでは検索に引っかかりません。そこで、誰でも検索しやすいようファイル名に知恵を使いました。
─紙から電子化した文書はどれくらい?
末永:書庫に保管してある紙の書類をすべてチェックして重要度の高い文書を数百件選び出し、優先的に電子化しました。さすがに、全文書となると膨大すぎますから。
─稼働前、システムに登録したデータはどれくらいでしたか。
末永:数千のオーダーです。
─作業は、すべて末永さんが1人で?
末永:いえいえ、まさか。技術本部のメンバーで手分けしました。知的資産の散逸防止という意味でも、良い機会だったと思います。
─ところで、ハードウェアは新たに導入したんですよね。
山田:はい。今回のシステムでは、KnowledgeMeisterの全文検索やコミュニティ機能のほか、ポータルとなるガルーンといった複数のソフトを使用しているため、サーバーを7台購入しました。
─サーバー機種は?
島澤:東芝のMagniaです。そうそう、ハードの納品が遅れましてね。10月1日の予定だったはずが、10月10日にずれこんだんですよ。10月16日には経営層へのデモを控えているのに、サーバーの実機がないという事態になった。
─どうしたんですか?
島澤:急遽、手元のPCを使って会議場で擬似的なシステムを組み、なんとか間に合わせました。
─社内デモは乗り切れたとしても、肝心の本番稼働への影響はなかったんですか?
山田:ええ、稼働まで2カ月というスケジュールがさらに縮まったんですからね。PMとして、あのときはさすがに「間に合うのか」と心配になりました。
─インフラを担当した島澤さんたちのプレッシャは大きかったのでは。
島澤:確かにタイトなスケジュールでしたね。1カ月半ほどでサーバーやソフトのセッティング、データセンターへのハウジングを実施したわけですから。11月中旬には、各拠点の担当者への運用指導もありましたし。
─それで年内に導入を完了できた?
島澤:なんとか。この間、ガルーンとKnowledgeMeister間のシングルサインオン環境や、人事システムとの連携も実装したんですよ。
─人事システムと連携というと?
島澤:人事異動があると、その翌日にはそれが新システム上のユーザープロフィールや利用権限に反映される仕組みです。
2ステップの稼働で運用トラブルを防ぐ
─予定通り、2009年内に開発・導入を終えた。それで?
佐藤:導入を終えてすぐ、まずは知恵袋を先行稼働させました。その後、技術の広場と現場情報を本稼働させたのは2010年2月です。
─なぜ2カ月のタイムラグがあるんですか。
佐藤:知恵袋は、データベースを全文検索して必要な情報を閲覧・ダウンロードするというシンプルな仕組みです。ですから、すぐに利用開始できました。技術本部は過去に、同様のシステムを構築・運用した経験がありましたし。でも、技術の広場や現場情報はそうはいかなかった。
山田:メール配信を利用したコミュニティ形成というものが、どう機能するかはやってみなければ分からなかったということです。
佐藤:それで「何でも自由に書き込んでくれ」とユーザーに呼びかけ、2カ月の試用期間を設けたわけです。同時に、ユーザー向け社内説明会を開いて利用上の問題点や疑問点を解消していきました。こうして2010年2月、コミュニティ上の投稿をいったんリセットして実運用に踏み切りました。
─情報共有を目的とするシステムは、導入もさることながら、定着させるのが難しい。その点、いかがですか。
佐藤:使ってもらえるよう、いろいろ工夫しています。例えば、せっかく質問を投稿しても、誰からも反応がないとがっかりして書き込む気が失せるでしょう?そこで、広場に質問が上がったら、すぐに回答がつくよう心がけています。
─具体的にはどうやって?
佐藤:私たち技術本部が答えられれば書き込みます。それが無理な場合は、答えられそうな技術者に連絡して「回答してくれないか」と依頼するんです。
─確実にアドバイスを得られるとなれば、書き込む意欲がわきますよね。
島澤:先日、ユーザーアンケートを実施したところ、おおむね好評で胸をなで下ろしています。
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