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業務で使うタッチデバイス “コンシューマ文化”も積極吸収(第11回)
iPhoneやiPadに代表されるタッチスクリーン採用のモバイルデバイスが市場を席巻している。これらはマウスやキーボードといったユーザーインタフェースを採用せず、指や音声を使ってスクリーン上のオブジェクトを直接操作する点が大きな特徴だ。企業はこうしたデバイスを自社のIT戦略にどう取り入れ、活用していくべきなのか。競争力を高めるためには、新しいテクノロジーの動向を的確に把握し、評価することが欠かせない。
アプリケーションのタッチ未対応が足かせに
iPhoneやiPadが備えるタッチインタフェースは、これまでのタブレットPCやPDAのそれとは異なる。指の動きを細かく識別する「ジェスチャー」により、さまざまな操作を可能にしている。例えば、親指と人差し指を広げると画面を拡大表示したり、指で画面上の写真を弾けば、次の写真を表示したりできる。こうした直感的で多彩な操作法は、幅広い用途で活用が見込める。
ではタッチインタフェースが業務ですぐに実用化するのかというと、必ずしもそうはならない。当然だが業務アプリケーションがタッチインタフェースに対応していないためだ。既存アプリケーションのツールバーやプルダウンメニューはマウスやキーボードによる操作を前提としており、指で操作するには小さすぎる。
潤沢にタッチ対応アプリケーションが供給されるようになったとしても、当初はただ“使える”だけ。“心地よく使える”ようになるまでに、ある程度の時間を要する。タッチデバイスにより業務効率や生産性を向上させるには、アプリケーションの成熟が不可欠である。これらの理由から、ガートナーは2015年までに企業がメインストリームのナレッジ・ワーカー向けに導入するPCのうち、タッチデバイスは10%未満に留まると予測する。
適用業務を見極め早期導入の検討も
しかし、タッチデバイスの価格はすでに下がり始め、価格面での導入障壁は解消しつつある。また、Windows 7が標準でタッチインタフェースを採用したことで、モバイル以外の大画面ノートPCなどでも普及する素地が整いつつある。
急速な普及は見込めないものの、特定業務においてはタッチデバイスがすでに導入され、効果をあげている。例えばクリップボードに用紙を挟み、アンケートなどを入力する業務の場合、これまで専用端末やタブレットPCを採用してきた経緯もあることからiPadなどは親和性が高い。患者の状態を記録する病院でもPDAなどのタッチデバイスの導入が進んでおり、今後も大きな導入潜在性をはらんでいる。
そのほか、小売業や外食産業、銀行などの顧客と対面する業務でも、携帯性や操作性などの利点を享受できることから導入が見込める。こうした業界はタッチデバイスの早期採用により、競争優位を確立することも可能だ。企業は自社の業務とタッチデバイスの有用性を照らし合わせ、業務を改善、もしくは効率化できる使用法を模索すべきである。もちろん、十分な検証とテストを行い、タッチインタフェースの問題点を洗い出しておくことも忘れてはならない。
タッチに馴染んだ世代を受け入れる
タッチデバイスは企業より先に、コンシューマ市場や教育現場での普及が見込まれる。ガートナーは2015年までに、15歳以下のPC購入者のうち50%がタッチデバイスを購入すると予測。2009年の2%から急速に市場が拡大すると予想する。
企業は今後、タッチインタフェースに慣れ親しんだ世代が従業員として戦力になることを想定し、タッチインタフェースで操作可能なアプリケーションの導入を検討しなければならない。従来のマウスやキーボードで操作するアプリケーションのままでは、こうした世代の生産性が上がらない可能性がある。タッチデバイスの有効な活用法が現状では見い出せない企業であっても、将来に備えて既存システムと新インタフェースがどう関わるべきかを考慮しておく必要があるだろう。
本連載はガートナーのリサーチ「Predicts 2010:PC Markets Offer New Opportunities」、「If Touch Works Everywhere Else,Why Not on PCs?」をもとに日本法人アナリストが一部編集し、加筆したものです
作業簡素化で新たな価値を創出
個人所有のタッチデバイス許容も検討すべき
蒔田 佳苗ガートナー ジャパン
リサーチ部門
テクノロジ&サービス・プロバイダー
クライアント・コンピューティング担当
タッチインタフェースは、情報分析のような多くの企業が取り組む業務でも効果が期待できる。例えばグラフィカルなデータセットを分析する場合、これまではグラフ結果を企業が定める目標値に近づけるため、データを再入力してグラフの変化を確認していた。だがタッチインタフェースでは、グラフを直接指やペンで操作して目標値まで移動し、その結果に付随する数値データを自動的に更新させるといった運用が期待できる。これにより、分析やシミュレーション作業の効率化が見込める。
企業の中には膨大な情報の収集や分析自体が目的化し、分析業務が企業の意思決定を支援するに至ってないケースも見られる。タッチインタフェースによって分析業務が簡素化すれば、企業成長に貢献するための活動に多くの時間を割けられるようになるはずである。
ATMやキオスク端末、券売機などを中心にタッチインタフェースの市場は拡大しており、今後はタッチインタフェースに慣れ親しんだユーザーが企業内でも増加していく。こうした背景から、個人所有のタッチデバイスを業務で活用したいというニーズは増えこそすれ、減ることはない。企業はタッチデバイスの社内での使用を容認し、使い慣れたデバイス、インタフェースを利用できるようにすることで、社員の生産性が向上することに着目すべきである。
内部統制の観点から個人所有のiPhoneやiPadを規制する企業は多い。だが、コンシューマ市場から派生した新しいデバイスやテクノロジーを否定的に捉えず、ビジネスでどんな価値を生み出せるのかという肯定的な視野も合わせ持ってほしい。
企業システムの端末として、タッチデバイスが今すぐ一足飛びにメインストリームになることは考えにくいが、少なくとも個人所有のデバイスが利活用できる素地は整いつつある。例えば、企業が定めた作業環境をネット経由で使用する「DaaS(デスクトップ・アズ・ア・サービス)」がある。機密情報の社外持ち出しを規制するといった安全面を配慮するほか、個人が愛着も持つ自己所有のデバイスで社内システムを利用できるメリットは大きい。ニーズの高まりによって、タッチデバイスを前提とした企業システムや関連サービスが増えるのは自然の流れだろう。
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