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[[特別対談企画] ITリーダーに編集長が聞く]

利便性向上と端末依存解消を狙いモバイル基盤の刷新を図る

2012年5月21日(月)

首都圏を中心に、1000万を超える世帯に都市ガスを提供している東京ガス。ワークスタイルの変革を目指して、2011年モバイル基盤の刷新を図った。それによってワークスタイルはどのように変革したのか、その効果とさらなる展望について聞いた。(聞き手は本誌編集長・田口 潤、文中敬称略)

Photo:的野 弘路

ゲスト

久保田宏明氏

第1回:東京ガス
久保田宏明氏 執行役員 IT活用推進部長

1979年東京ガス入社。主としてLNGを受け入れ都市ガスとして送り出すガス製造部門で都市ガス製造インフラの構築・運用・維持管理を担務。 2011年4月よりIT活用推進部長。製造インフラを守る部門での豊富な経験を活かし、事業インフラとしてのITの位置づけ明確化、それを預かるIT部門の役割強化に向け陣頭指揮を執る。

インタビュアー

田口潤

田口 潤 インプレスビジネスメディア 編集局長

田口:ワークスタイルの革新を目的にモバイル環境を見直したと聞いてお訪ねしました。本題に入る前に、経営に資するITという観点での基本的な考えをお聞かせください。

久保田:企業におけるITには大きく2つの役割があると考えています。1つは目的とすることを、「きちんとやり続けられるようにする」こと。一言でいうと「安定」です。

田口:これを一番に挙げるあたりは、貴社が重要な社会インフラ事業に携わっていることとも強く関係しているように感じますね。もう1つは?

久保田:今までできなかったことをできるようにすること。つまり新しい価値を生み出していくことです。

田口:それを先のようにキーワードで表すと、どうなりますか。

久保田:「効率」と「革新」です。ITで仕事のやり方を変えて効率を高めることは、当然ながら新しい価値の提供につながる。ただし、それだけじゃなく、新しい技術を活用して、今までにない新しいサービスやビジネスを生み出していくことも重要な視点ですね。まとめると、ITの経営に対する役割は「安定」「効率」「革新」をもたらすことだと思います。

田口:なるほど。「安定(Stability)」「効率(Efficiency)」「革新(Innovation)」の頭文字をとると"SEI"。なかなかいいキーワードですね。

これまでの重点は効率化にあった

久保田:インフラ事業における3原則は「安定供給」「保安の確保」「原価の低減」です。これはITにもまったく同じことが言えると思うんですよ。ガスのようにITも空気のような存在にならないといけないと。何も考えずともいつもそこにあって、使える状態にすることがIT部門の役割だと思うんです。

田口:効率と革新については、これまでどちらにより重点をおいて取り組んできたのですか。

久保田:今までは比較的、効率化に重心が寄っていました。革新的なことは、自分たちが自信を持って大丈夫だといえないとなかなか踏み出せないのが現状で、つい慎重になってしまう側面がありました。

田口:ITの大きなトレンドとして、クラウドがあります。貴社はオンプレミスのシステム資産を多く保有していると推察しますが、クラウドの活用で何か革新につながるようなことを検討していないのでしょうか。

久保田:オンプレミスもクラウドも所詮はシステムを提供する手段です。つまり、いずれの方法であっても、私たちが提供したい品質の業務システムを安定的に継続して提供できるのであれば、あとはコストやセキュリティを勘案して選択すればいいと考えています。

田口:セキュリティ、コストとのバランスが大事になると。

久保田:そうです。例えば顧客情報を管理しているシステムは自社でしっかり守ることが欠かせません。一方、例えばグループウエアなどはオンプレミスにこだわる必然性がないので、2010年からSaaSを活用しています。適材適所で最適解を選ぶことを徹底してきました。

田口:よくコア、ノンコアという言い方をしますが、そこをきちんと区分けして導入しているということですね。

外出先や自宅でメール確認をしたい

田口:さて今回、ワークスタイル革新のため、モバイル基盤を見直したということですが、この場合も先の2つのバランスを考慮してのことだと思います。どのような用途のインフラを刷新したのですか。

久保田:当社は、目的によっていくつかのモバイルサービスを提供しています。1つは、フィールド業務の担当者が業務アプリケーションにリモートからアクセスする使い方です。社内では「直収版」と呼んでおり、これは2002年から始めました。どちらかというと業務専用端末という位置付けになります。

それとは別に、出張先や自宅などからメールやスケジュール、イントラネットなどを閲覧する用途、つまりはオフィス業務向けのサービスがあります。こちらは使用端末の種別によって「PC版」「携帯版」という呼び方をしています。活用が本格化したのは2007年ころ。今日のテーマとなる基盤は、この中の「PC版」を対象としたものです。マイクロソフトのソリューションを使って、2011年に刷新しました。

クライアント環境に依存しない基盤へ

田口:どのような課題があったのでしょう。

久保田:以前は、複数ベンダーのソフトウェアを組み合わせて基盤を構成しており、運用管理が複雑なのに加え、ユーザーの使い勝手も決して良くはなかったんです。クライアント環境に依存する面もあって、思うように稼働しないといったこともありました。

田口:もう少し詳しく教えてください。

久保田:これまでの環境の基本的な仕組みは、Javaアプレットでつくった仮想デスクトップ的なものがクライアント側で起動し、センターから画面が転送されるというものでした。ここで、クライアントのOSやブラウザのバージョン、さらにはセキュリティパッチがあたっている/いないなどの違いで、動かなくなったりすることがあったのです。

田口:で、どのような方針で解決しようと思われたのでしょう?

久保田:最新のシンクライアント環境をシンプルな構成で、ということを条件にしました。手始めに、シトリックスやVMWareなどの技術動向を調べました。

コストと品質面で比較検討

田口:最終的にはマイクロソフト製品に落ち着いたようですが…。

久保田:コストと品質を評価して、もっとも理にかなった選択でした。

田口:まずコストですが、それほど差がつくとは思えないのですが。

久保田:システムを5年間使うと想定して、導入から運用までを含めたトータルコストで比較しました。ライセンスの契約形態が違うので、かかる保守費が大きく変わってくるんです。

田口:マイクロソフトは保守費がかからないということ?

久保田:そうです。マイクロソフフトの場合、クライアント側の保守費はかかりません。それがかかる他社案と比較すると、使えば使うほど差がひらくんです。

田口:実際、何倍ぐらい違うのですか?

久保田:5年間で考えると1.5〜2倍ぐらいは変わってくるでしょうね。

田口:1人1万円違うとしても社員3000人分に換算すると3000万円となりますね。それは大きい。品質についてもマイクロソフトに分があった?

久保田:クライアントの環境や、システム全体の運用管理、検疫ソリューションなどを含めて、1社の製品に揃えられるという安心感は大きかったですね。System Centerで仮想環境を一元的に管理できるし、WindowsやInternet Explorerの新バージョンが出てもマイクロソフトは真っ先に対応するでしょう。

次点候補の案では、検疫ソリューションは他社製品との組み合わせが前提となっていました。あまり表に出てきませんが、マイクロソフトにはUAG(Forefront Unified Access Gateway)という検疫ソリューションがあり、リモートアクセスに使うパソコンの健全性をチェックできます。

田口:以前のソリューションを使おうとは思わなかった?

久保田:以前に導入していた検疫ソリューションは接続するのに時間がかかるという問題があったのです。

田口:検疫ではなく接続するのに時間がかかったのですか。どのぐらいの時間?

久保田:長いときはタバコを1本吸えるぐらいでしたね。

田口:それはストレスがかかる。今は解消されている?

久保田:今は、遅くとも20秒程度です。

クライアント環境への追随性が向上

田口:現在のシステム構成について教えてください。

久保田:1台の物理サーバーをHyper-Vで仮想化し、4台のターミナルサーバーを構成しています。物理サーバーは12コア搭載のHP ProLiant DL380。1台の仮想サーバーで70人から100人ぐらいのユーザーを集約しているので、1台の物理サーバで400人のユーザーを集約する計算となります。

田口:1台の仮想サーバーで70人も集約できるのですか。

久保田:基本的にOA用途なので、同時接続数もあまりないことを考えてこういう設計にしています。業務システムだと集約数をもう少し下げないと厳しいと思いますが。

田口:刷新して約1年経ちました。成果や効果についてはどうでしょう。

久保田:最大の効果は端末が変わっても、素早くかつ柔軟に対応できるようになったことです。IE10がリリースされても、すぐ対応できる。つまりビジネスを止めない安定したインフラ基盤に貢献できたと思っています。

田口:システムの安定性が増したということですね。運用負荷も減ったのでは。

久保田:苦情や問い合わせも減ったことからも、運用コストが減ったといえると思います。

モバイル基盤のさらなる活用を

田口:今後の展望について教えてください。

久保田:社外からほとんどの業務システムが使える基盤ができたので、より複数のアプリケーションが活用できるよう対応していきたい。当社はアプリケーションが約160個と数も多い。ハードウエアだけではなくて、アプリケーションやデータのレイヤーの統合的な仮想化も進めてきたいと考えています。

田口:今はまだオフィスでは会社貸与のPCですが、今後はBYOD(Bring Your Own Device)が進んでいくと考えられています。それについてはどう考えていますか。

久保田:PCタブレットやスマートフォン対応にも積極的に取り組み、業務の効率化を進めたいとは思っていますが、BYODについては迷うところですね。PCが文房具になるかどうかという話かと。

田口:そう遠くないときに文房具になるんじゃないですか。これまでのモバイル活用のように貴社にはBYODも先陣を切って取り組んでほしいところです。是非期待しています。

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