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タレントマネジメント製品比較─社員の能力ややる気を正当に評価、優秀な人材の流出を防ぐ

2012年7月23日(月)折川 忠弘(IT Leaders編集部)

人材を有効活用することで企業の価値を最大化するタレントマネジメント。海外を中心に普及してきたが、日本でも徐々に関心を集めつつある。タレントマネジメントが備える機能と、主要な製品/サービスをまとめた。

 企業における人材戦略は大きな転換点を迎えている。日本企業に深く根付いていた終身雇用/年功序列といった制度は維持しにくくなり、現に若手を中心に離職率が高まっているのは周知の通り。会社へのロイヤルティよりも、自身のスキルアップを重視し、より条件のよい職場に積極的に転職するケースが増えている。

 一方、国内市場の飽和や円高基調の長期化などで企業のグローバル展開が加速。現地で優秀な従業員を雇ったり、拠点を統括できる管理者を早期に育成したりすることは焦眉の急だ。

 こうした背景の中、これからの人材戦略を強力にサポートするものとして、にわかに注目を集め始めたのが「タレントマネジメント」という分野の製品である。

 アイ・ティ・アールが2012年6月5日に発表した、国内のタレントマネジメント市場に関する調査結果からも関心の高さがうかがえる。2010年度の製品の出荷金額は前年度比55.6%増となる7億7000万円で、2011年度は前年比48.1%増を予測する。市場規模はまだ小さいものの、成長分野としてタレントマネジメント製品を提供するベンダーは軒並みユーザー数を増やしているという。

働き手を起点とし個人のやりがいを重視

 従業員にかかわる情報を管理するという面では、従来から人事管理システムがあった。採用にはじまり、スキルや職歴管理、考課、給与支払いといった業務を総合的に管理するもので、多くは一連の業務をいかに効率的にこなすかに主眼が置かれている。

 人材の流動性が高い米国などでは働き手を“ヒューマンキャピタル”(=人財)と位置付けて、個人の能力や評価をより重視して管理する製品も増えてきた。ただし、管理者の視点で設計したものが多く、誤解を恐れずに言えば、“持ち駒をいかに効率的に配置するか”に軸足があったといっていい。

 これらに対して、タレントマネジメントは、働き手のやりがいや自己啓発などにより力点を置き、持てる能力を存分に発揮してもらおうとの思いが込められている。モチベーションの維持を図るとともに、公平な評価を見える化し、活躍に見合う処遇で応える。それらの結果として、優秀な人材の定着につなげようというわけだ。これまた米国で先行した動きだが、ビジネスのグローバル化を背景に、日本でも多くの企業が関心を示し始めている。

相次ぐ買収により市場の再編が加速

米国ではタレントマネジメントに関する専門誌
写真 米国ではタレントマネジメントに関する専門誌がある。求むべきリーダー像や人材の能力を高める方法などを紹介する

 海外ではタレントマネジメント製品を扱うベンダーの再編が加速している。独SAPは2011年12月、SaaS型人材管理を提供する米サクセスファクターズの買収を発表。クラウドサービスの強化に乗り出す。

 2012年2月には米オラクルも人材管理ソフトベンダーの米タレオを買収。米インフォア・グローバル・ソリューションズも2011年4月にERPベンダーの米ローソンソフトウェアを買収し、「Lawson Talent Management」などを製品化する。このように大手ERPベンダーが相次ぎタレントマネジメント機能を強化する姿勢を鮮明に打ち出している。

 米セールスフォース・ドットコムも2012年3月、すでに買収済みのRypple社の人材管理サービスを「Salesforce Rypple」として発表。Chatterと連携し、社員は自身の評価をタイムラインで確認したり、同僚や部下を評価したりすることを可能にする。

 タレントマネジメント製品は日本より海外で積極的な導入が進んでいる。特にクラウド経由で提供するサービスが充実し、WorkdayやADP、Ultimate Softwareなどがメジャーなプレイヤーとして有名だ。左図のような専門誌も登場するなど、企業の高い関心を集める分野となっている。

人事情報を活用し採用から育成までを支援

 まだ発展段階の製品分野であり、そこに必要となる機能が定まっている状況にはない。ただし、市場に登場し始めた製品を見ると、以下のような機能を備えているものが目立つ(図1)。

図1 タレントマネジメント製品/サービスが備える主要機能
図1 タレントマネジメント製品/サービスが備える主要機能

採用管理

 見込みのある応募者に連絡したのか、面接日を調整済みかなどを一元管理する。人材が流動しやすい海外拠点は頻繁に採用活動が行われるため、これら作業を効率化するのに役立つ。

目標管理

 個人や組織ごとの目標を登録し、その達成度を把握する。目標を達成するためにどのような手段を講じているのかまで管理する。

 目標を達成したのかを評価する機能も含む。自分自身はもちろん、上司、部下が評価し、公正化を図ることで人材の能力ややる気を正確に把握できるようにする。ただし評価を数値化するのは容易ではなく、個人や組織ごとに評価項目や採点方法は異なる。どのような目標のもと、何を評価するのかを選定することがタレントマネジメントを効果的に活用するには重要となる。

報酬管理

 業務内容や評価に即した報酬が支払われているかを管理する。組織に対する貢献度が高いのに十分な報酬を受けていない人や、貢献度が低いのに高額な報酬を受けている人を洗い出し、金額を適正化する。事前にKPIを設定し、仕事へのやる気、報酬額、休暇日数などから辞めそうな人を抽出することもできる。

継承/後継者管理

 重要な地位に就く人が辞めた場合に備えて後継者候補を選定する。これまでの経歴やスキル、評価などを総合的に判断して適任者を探し出す。後継者として不足するスキルがある場合は、研修を課して適任者を育成したり、10年後の人材不足を予測し、どのようなプランで人材を育成するのかを策定したりする製品もある。

育成管理/人材開発

 目指すべき人材になるために必要な教育プログラムの選定や実施状況を管理する。eラーニングを活用する製品が多く、最近はスマートデバイスを使って通勤時などに学習できる製品も登場している。

図2 オラクルの「Oracle Fusion HCM」が備える「Fusion Talent Review」機能
図2 オラクルの「Oracle Fusion HCM」が備える「Fusion Talent Review」機能。個人のやる気や評価などをもとに、人材がどのポジションに分布しているのかを可視化する。将来的に不足しそうな人材を予測し、誰がどのポジションい行くべきか検討するのに役立つ

スキル管理

 これまで取得した技術や、携わったプロジェクトなどの実績を管理する。業務やプロジェクト内容に沿うスキルを持った人材を最適な部署に配置するのに役立つ。

 これら機能はERPパッケージに含まれるケースが多い。給与計算や勤怠管理などの機能を備える人事管理システムと連携し、業務内容に見合った給与が支払われているか、モチベーションの低い人が休みがちになっていないかなどを紐づけて把握できるようにするためだ。そのため、人事管理システムを拡張し、タレントマネジメントに必要な機能を追加した製品/サービスも少なくない。

 主要なタレントマネジメント製品を表1にまとめた。以下で特徴的な製品を紹介しよう。

表1 主要なタレントマネジメント製品/サービス一覧
表1:主要なタレントマネジメント製品/サービス一覧
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