[新製品・サービス]

東阪間の“クラウドDR”が武器、クロネコ印のIaaSが登場、ほか

ITベンダーの主な発表・新製品・サービス(2012年8月)

2012年9月3日(月)IT Leaders編集部

2012年8月にITベンダー各社から発表された主な新製品・サービスを一挙に紹介する。

ヤマトシステム開発
東阪間の“クラウドDR”が武器、クロネコ印のIaaSが登場

ヤマトグループのシステム業務を担うヤマトシステム開発は2012年7月、CPUやメモリー、ストレージといったハードウェアをネットワーク経由で提供するIaaS事業を開始した。サービス名称は、「クロネコデータセンター クラウド(IaaS)」。グループの中核ビジネスである宅配便事業を支えるデータセンター設備や運用監視体制を利用する。

サービスは大きく2種。データセンター接続に専用回線を使用する「プライベートIaaS」と、インターネットを使用する「パブリックIaaS」である。プライベートIaaSはさらに、サーバー上の仮想マシンを割り当てる「仮想マシンサービス」と、ユーザーごとに専用のCPUとメモリー、ディスクを用意する「仮想データセンターサービス」から選択可能。

利用企業は、専用ポータル画面で要件に合ったハードウェア構成を設定し、短期間でシステムを構築できる。利用料金は、最小構成の仮想マシン1台が月額2万9000円から。別途、5万円の初期費用がかかる。プライベートIaaSのネットワーク費用は個別見積り。

2014年度までに、既存顧客を中心に100社に導入することを目指す。すでに、大手企業1社が試験導入済みという。ヤマトシステム開発自身も、自社が構築する各種ITサービスのインフラとして新サービスを活用していく。

DR対策とベンダーフリーが強み

ヤマトシステム開発は従来から、企業にサーバー設置スペースを提供するハウジングサービスを提供している。近年、こうしたサービスの利用企業から「もうIT資産を所有したくない」という要望を受けるケースが増えていた。そこで2010年秋、新規事業化に向けて検討開始。「ヤマトが提供すべきクラウドとは何かを議論した」(ヤマトシステム開発セキュアトレースカンパニーの荒金悟プレジデント)。その間に発生した東日本大震災を受けて、BCPやDRという論点も浮上した。

新サービスの第1の特徴は、データの保全性を重視し、宅配便システムと同等のDR対策を講じている点。具体的には、東京と大阪にある同社のデータセンター間でシステムを二重化している。これにより、利用企業は東阪における相互バックアップ環境を構築し、災害時などにおけるデータ消失リスクを軽減できる。既存のIaaSにおいては、「そもそもデータを分散配置するのだから、システムの冗長化は不要」とする事業者が多い。

ベンダー非依存であることも大きな特徴だ。例えば、WindowsやLinuxに加えて、SolarisやCentOS、FreeBSD、Debian、MacOSといった多様なOSをサポートする。

ヤマトシステム開発はサービス開始に先立ち、東阪のデータセンターを増床してハードウェアや通信回線を追加。マルチテナント対応やシステム二重化を実施した。ネットワンシステムズが機器の調達や開発、サービス・運用設計を支援。検証環境も同社が提供した。 (力竹)

ヴイエムウェア、オラクル
ネットワーク仮想化を見据え大手ベンダーが買収戦略を加速

ネットワーク仮想化を土俵にした大手ITベンダーの競争が激化している。サーバー仮想化が一巡した今、ルーターやスイッチといった物理機器で制御してきたネットワークのレイヤーをソフトウェア技術の応用でより柔軟に運用する仕組みを築こうとの狙いがある。

ヴイエムウェアは2012年7月23日、ニシラ・ネットワークスの買収を発表。ニシラの中核ソフト「Nicira Network Virtualization Platform」は、VMware ESXやXen、KVM上で動作する仮想スイッチ「Open vSwitch」を制御し、仮想マシンが他の物理サーバーへ移行する際の物理スイッチの設定変更を不要にできる。

オラクルも2012年7月30日、シーゴ・システムズの買収を発表した。シーゴはネットワークの帯域をソフトウェアで制御する技術を有し、システムに応じたネットワークリソースを動的に割り当てられる。

マイクロソフトもWindows Server 2012でネットワーク仮想化を強化することを発表済み。この分野で先行するシスコも交え、技術競争はますます熾烈になりそうだ。 (折川)

米CA Technologies
運用管理とセキュリティが企業ITのフォアフロントに

 システム管理ツール大手であるCA Technologiesでクラウドソリューション事業を率いるAdam Famularo氏が、企業ITが直面する課題と同社の役割について語った。

クラウドコンピューティングは、企業ITにかつてない複雑性を持ち込んだ。クラウド活用は、必然的にヘテロジニアス(異種混在)な環境を生み出す。多くのCIOが今、運用管理やセキュリティの確保に頭を悩ませている。

従来型のシステム開発において、当社の出番はプロジェクト終盤であることが多かった。しかし、クラウド移行プロジェクトでは様相が全く異なり、最初から声がかかる。移行の道筋を、ユーザーの最大の関心事であるセキュリティやガバナンスの観点から示せるからに他ならない。これまで30年以上にわたって、システム管理やセキュリティツールの分野で最先端の技術を提供し続けてきた実績と信頼が今まさに結実したと考えている。

もちろん手綱を緩めるつもりはない。ここ数年でArcot SystemsやNimsoft、3Teraなどを買収し、製品群を強化しているのがその証左だ。<談> (力竹)

富士通
スマートフォン対応の企業内ポータル作成ソフト

富士通は2012年7月26日、複数の業務アプリケーションを対象にフロントエンドを統合するソフトの最新版「Interstage Interaction Manager V10」を発表した。

同ソフトを使うと、複数のシステムの画面を同時に表示する「ポータル」を作成できる。ポータルはWebブラウザから閲覧する。例えば、顧客管理システムと、契約管理システムを表示するポータルを作成。コールセンター担当者が、顧客のプロフィールや、過去の契約履歴を参照しながら、問い合わせに対応できるようにする。既存システムに手を加えずに、あたかも複数のシステムが統合しているように見せかけられる。

最新版では、業務システムを自動操作する「オートパイロット機能」を追加した。前述の例でいえば、各システムにログインしてから、顧客や契約の情報を表示させるまでに必要な、データの入力やボタンのクリックといった操作を自動化できる。スマートフォンにも対応。Android 3.2とiOS 5の標準ブラウザからポータル画面を閲覧できる。

価格は260万円から。2012年8月下旬から出荷開始する。(緒方)

日立製作所
プロセサ刷新で仮想化によるシステム集約を促進

日立製作所は2012年8月1日、サーバー「BladeSymphony BS500シリーズ」に「BS540Aサーバブレード」を追加した。同シリーズの最上位モデルに位置し、主にサーバーの仮想化やクラウドのシステム基盤としての用途を想定する。

プロセサを刷新して性能を向上した。新たにインテルの「Xeon E5-4600」を採用し、1サーバーあたり最大4基のプロセサを搭載する(コア数は最大32)。従来機「BS520Hサーバブレード」や「BS520Aサーバブレード」のプロセサ搭載数は2基だった。

メモリースロットも従来機の2倍である48とし、最大容量を1TBに増やした。カードスロット数は2から4に拡張。LANやファイバチャネル、RAIDといったカードを揃え、用途に応じてインタフェースを拡張しやすくした。

そのほか、同社独自の仮想化機構「Virtage」を搭載。仮想化によるオーバーヘッドを低減したり、負荷に応じてプロセサの使用率を変更したりする機能を備えることで、パフォーマンスの低下を未然に防ぐ。価格(税込)は143万5350円から。 (折川)

この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
  • 1
  • 2
関連キーワード

ヤマトシステム開発 / ヤマトホールディングス / IaaS / VMware / Oracle / CA Technologies / Avaya / ジャストシステム / Dell / HPE / SAP

関連記事

トピックス

[Sponsored]

東阪間の“クラウドDR”が武器、クロネコ印のIaaSが登場、ほか2012年8月にITベンダー各社から発表された主な新製品・サービスを一挙に紹介する。

PAGE TOP