[イベントレポート]

「ソーシャル革命」を旗印とする米セールスフォースのメッセージと注目新サービス

Dreamforce 2012

2012年9月21日(金)IT Leaders編集部

米国時間の2012年9月18日、米セールスフォース・ドットコムの年次カンファレンス「Dreamforce 2012」が開幕した。2日目の基調講演ではCEOのマーク・ベニオフ氏が登壇。昨年に引き続いてソーシャル技術の重要性を訴えた。また、多数の新サービスと導入事例を紹介した。概要を報告する。

米セールスフォース・ドットコムは、米国時間の2012年9月18日から21日の4日間、米国カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニ・センターで、年次カンファレンス「Dreamforce 2012」を開催している。

通算で10回めとなる今回は、750以上のセッションと、350を超えるパートナー企業の展示ブースで構成。同社の発表によれば、世界65カ国から約9万人が来場するほか、フェイスブックを使ったライブ動画中継を約10万人が視聴する。ITベンダー主催の企業向けイベントとしては異例の規模となる。


写真1:基調講演の壇上に立つマーク・ベニオフ氏。大きな体を使ったパフォーマンスが会場の注目を集める

19日の基調講演にはCEOのマーク・ベニオフ氏らが登壇。セールスフォースが掲げるビジョンや新サービス、ユーザー事例などを紹介した。当初予定していた2時間の枠を大きく超過した講演で、同氏が昨年に引き続き、繰り返し強調したのが「ソーシャル革命(Social Revolution)」という言葉である。

ここで言うソーシャルとは、ソーシャルメディアや、ソーシャルメディアが象徴するテクノロジーのこと。例えば、顧客との新しいコミュニケーション手段としてのフェイスブック、あるいは、ツイッターが持つタイムラインやフィードなどのユーザーインターフェースや、それを使った情報共有のスタイルを指す。

ソーシャルメディアの持つ特性を積極的に企業活動に取り入れることで、営業やマーケティング、カスタマーサポートといった業務のあり方を変革する。それがソーシャル革命の意味するところだ。ベニオフ氏によれば、ダウンサイジングやクラウドに匹敵する、2010年台の重要技術であるという。

既にセールスフォースはソーシャルに主眼を置いてサービス強化を進めてきた。2010年に企業内ツイッター「Chatter」をリリースしたほか、「Radian 6」や「Buddy Media」など、ソーシャルメディア分野の製品を持つ企業の買収を続けている。今回の基調講演は、これまでの路線の継続を改めて強調した格好だ。


写真2:会場を埋め尽くす人、人、人。モスコーニ・センターには、セールスフォースの最新メッセージを確認しようとする参加者が世界各国から集結した

昨年と比較して、特に大きく異なる点を挙げるとすれば、著名な大企業の活用事例を多数盛り込んだ点だろう。基調講演に限っても、GEや、豪銀行大手のCommonwealth Bank、ヴァージングループの航空会社Virgine America、フェイスブック、コカ・コーラ、バーバリーなどのCIOが次々と登壇した。今回のイベントで公開される事例は30社を超えるという。

こうした演出の背景には、企業の不安を払拭する狙いもある。ソーシャルメディアの活用に関心を寄せる企業は少なくないが、新しい取り組みだけにその効果に疑問を抱く声も少なからずある。「今、我々は、1つでも多くの事例を紹介することが必要だ」(CEOのマーク・ベニオフ氏)。

新サービスを続々と投入し、ソーシャルの布陣を強化

今回の基調講演では複数の新サービスを発表した。第一報として、主なサービスの概要を下記にまとめる。

◆Salesforce Touch
スマートフォンやタブレットからセールスフォースにアクセスできるようにする。HTML5に準拠する。

◆Chatter Communities for Partners
販売店、リセラー、サプライヤーなど、企業のサプライチェーンを構成するメンバーと、Chatterを使って情報共有できるようにする。商談管理やセールスツールの共有、エキスパートによる質疑応答などの用途に利用できる。

◆Salesforce Marketing Cloud
ソーシャルメディアを使ったマーケティング活動を支援するサービス群。買収した2製品を統合した。ソーシャルメディアへの投稿を分析し、消費者のニーズや自社ブランドへのイメージなどを探るソーシャルリスニングツール「Radian 6」(2011年買収)と、ソーシャルメディアへの広告出稿と効果測定を支援するマーケティングツール「Buddy Media」(2012年買収)で構成する。

◆Data.com Social Key
フェイスブックやツイッター、ユーチューブなど、各ソーシャルメディアのプロフィールや発言と、顧客データベースを紐づける。例えば、見込み客がどのようなニーズを持っているか、コールセンターに電話してきた顧客がどのような課題を抱えているかなどをチェックできる。2013年後半に提供予定。

◆Chatter Communities for Service
顧客同士がコミュニケーションをとるためのコミュニティを構築できる。米大手ゲームメーカーの「ACTIVISION」は、自社のゲームソフトを購入した消費者向けのコミュニティを設置。ゲームに関する疑問を、参加者同士で解消できるようにすることで、コールセンターや情報システム部門の負担を軽減した。カスタマーサポートサービスを支援するService CloudやChatterと連携できる。

◆Salesforce Chatter Box
企業向け「Dropbox」とも言えるサービス。PCやスマートフォン、タブレット端末など、複数のデバイス間でファイルを同期する。セールスフォースのインフラを用いるため、財務諸表や製品ロードマップといった機密性の高い情報も保管できるとしている。新たにファイルを保存すると、Chatterにフィードを自動送信する機能なども備える。2013年前半にパイロット版を提供する予定。

◆Work.com
チームや従業員の目標を設定し、達成状況をリアルタイムに把握するヒューマンリソースマネジメントアプリ。売上目標を達成する、他のメンバーに助言するなど、従業員のさまざまな行動に対し、他の従業員や上司がコメントしたり、評価の印である「バッジ」を付与したりして、モチベーションを喚起する仕掛けも備える。米フェイスブックが最初のユーザーとして先行利用を開始している。2012年第4四半期に提供予定。

◆Salesforce Identity
シングルサインオンツール。セールスフォースのプラットフォームで稼働する、複数のクラウドアプリケーションに、単一のIDでアクセスできるようにする。発表では、“エンタープライズ向けのフェイスブックID”と表現。フェイスブックIDを使って、複数のWebサービスにログインできるのと同様の利便性を、企業ITの分野でも提供するという。

◆Touch Platform
スマートフォンやタブレット端末向けアプリケーションの開発プラットフォーム。1つのソースコードからiPad、iPhone、Android向けのアプリケーションを生成できる。スマートデバイス向けのアプリは、ネイティブ、HTML、ハイブリッドの開発手法が主流だが、そのいずれもサポートする。APIを使って、セールスフォースのインフラ上で稼働するクラウドアプリとデータをやりとりできる。

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