[インタビュー]

ストレージロックインを解消し、企業ITに選択の自由を取り戻す─レッドハット幹部

米レッドハット ストレージ事業部門副社長 サランガン・ランガチャリ氏

2012年10月29日(月)IT Leaders編集部

米レッドハットは2012年6月、x86サーバーをスケールアウト型の分散ストレージとして利用するためのソフトウェア、「Red Hat Storage Server」を発表。7月には日本で販売開始した。ソフトウェアによるストレージとはどんなもので、企業にもたらす価値は何か。ストレージ部門の責任者であるサランガン・ランガチャリ氏に聞いた。

サランガン・ランガチャリ副社長 米レッドハット ストレージ事業部門のサランガン・ランガチャリ副社長

──そもそもソフトウェアによるストレージにどんな利点があるのか。Red Hatの製品ポートフォリオにおける位置づけは?

現在のストレージはソフトの塊であり、プロプライタリのハード上でプロプライタリのソフトが動いている。これが10年前のサーバーと同じであることを指摘したい。Red HatはオープンソースのOSを提供することで経済優位性をもたらし、サーバーに破壊的な進化を引き起こした。これと同じことをストレージの領域で起こすのが、Red Hat Storage Server(RHSS)の役割だ。具体的には、x86サーバーにRHSSを搭載することで、ストレージサーバーとして動作させる。顧客やパートナーからはこの考えは支持されている。TCOを下げると同時に性能やスケーラビリティを確保できる。パートナー企業は付加価値を加えられる。

当社の製品ラインにおいても必須だ。当社はOSのRed Hat Enterprise Linux(RHEL)、仮想化ソフトのKVM、アプリケーションサーバーであるJBossといった商用OSSを提供してきたが、これでミドルウェア以下のレイヤーをすべてカバーできるわけではない。ストレージが欠かせない。こうしたことから米Glusterを買収して分散ストレージ技術を獲得し、2012年6月にその技術をベースにしたRHSSの提供を開始した。ユーザー企業には大きな価値を提供できる。

──具体的にどんな価値をもたらすのか?

ITインフラのうちサーバーは、RHELやKVMによりオープン化が進み、安価になった。だがストレージはそうではない。大手ベンダーのプロプライタリ製品が主流であり、今もそれほど価格は下がっていない。大手ストレージベンダーの製品の価格は1GBあたりだいたい1ドルだが、RHSSを使って構築したストレージは1GBあたり0.3ドルでしかない。従来の専用ストレージシステムと比べて、記憶容量当たりの費用を3分の1にできるわけだ。

──つまりストレージに要する費用を低減できると。

その通りだが、価格だけではない。我々は、企業を“ストレージロックイン”から開放することを目指している。汎用のx86サーバーとLiuxの組み合わせを提唱し、大手サーバーベンダーによるロックインを解消してきたのと同じようにだ。

企業はこれまで、大手ストレージベンダーの開発サイクルに振り回されてきた。アップグレードする際は、ソフトやハードをすべて入れ替えなければならなかった。しかしRHSSならソフトウェアのアップグレードだけで済む。企業は自社のペースに合わせてストレージ投資計画を立てられるし、ハードウェアも自由に選べる。実際、企業からの評価は高い。多くの企業が、ベンダー依存から脱却できることはもちろん、性能面で妥協せずにTCOを削減できることを歓迎している。

さらに当社が推進しているオープンハイブリッドクラウド(OHC)にも、RHSSは不可欠な要素だ。

──それはどういう意味か?

企業は自社のデータセンターにプライベートクラウドを構築している。それとパブリッククラウドの連携は必須になるし、それをオープンな形で実現しなければならない。これがOHCだが、その実現にはストレージの“壁”があった。データセンターにあるワークロード(アプリやデータ)を、パブリッククラウドにライブマイグレーション(移行)することを考えてほしい。OS以上のソフトは可能でも、ハードウエアのストレージは移行不可能だ。

しかしRHSSはソフトウェアなので、仮想サーバーや外部のIaaSにもインストールできる。オンプレミスとパブリッククラウド環境のどちらでも、あるいはこれらを組み合わせたハイブリッドクラウド環境で利用可能だ。この点でRHSSはOHCを実現する一番重要な要素とも言える。

──なるほど。ところで一口にストレージといっても、色々なタイプがある。RHSSはあらゆるストレージを代替できるか。例えばRDB向けのストレージはどうか?

いい質問だ。RHSSは(RDBに用いられる)ブロックデータは対象にしていない。対象はファイルデータやオブジェクトデータ、例を挙げるとドキュメントや写真、動画、音声、さらにはログやセンサーデータといった構造化されていないデータだ。多くの企業において急増しているのはこれらのデータであり、投資増大につながっている。これに対し、RHSSのスケールアウト型という特徴が生きる。サーバーを追加すればストレージ全体の容量をリニアに増強できるからだ。

──そのほかのRHSSの利点は?

コミュニティによる絶え間ないイノベーションの恩恵を受けられる点を挙げたい。GlusterFSはこれまで、45カ国において50万以上のダウンロード数を記録している。多くの開発者がGlusterFSを検証して磨き上げ、その知見がRed Hat Storage Serverに生かされる。ここで活用事例を1つ挙げよう。音楽配信サイトのPandora Mediaは、80台のx86サーバーにGlusterFSをインストール。1300万ファイル、容量にして1.2ペタバイトの音楽データを保存し、ピーク時には50GB/秒を超えるトラフィックを処理している。

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Red Hat / PCサーバー / KVM / Red Hat Enterprise Linux

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