[インタビュー]

“ギーク”が世に送るDPI製品で、ネットのサービス品質を高める─プロセラネットワークス

2012年12月18日(火)IT Leaders編集部

通信のトラフィック分析・制御などの分野で、独創的なソリューションを展開する米プロセラネットワークス(Procera Networks)。ハイエンドモデルの「PL20000」を市場投入した背景にはどのようなことがあるのか。首脳陣にインタビューした。

インターネットのブロードバンド化が進み、その上でやり取りされるデータはますますリッチなものになっている。通信キャリアは、高品質なサービスの維持、ならびにネットワークの安定的運用という難しい問題を突きつけられているのが現状だ。

そこに、有効な解を提供するのが米プロセラネットワークスである。トラフィックをリアルタイムに可視化すると共に、輻輳制御などネットワーク品質にかかわるポリシー適用を効率的にこなすソリューションを市場投入し、難題の解決を図る。

ネットワーク上の膨大なトラフィックを対象に、アプリケーション(サービス)やユーザー、アクセス場所などを把握しつつ、所定のポリシーに則った帯域制御や優先通信、課金情報集約、ブロック処理といった機能を一元的に担う製品群を提供。フラッグシップとなる「PL20000」は、業界トップクラスの320Gbps(クラスター構成で最大5Tbps)のスループット性能を備え、72ポートの10GEまたは、4ポートの100GEインターフェースを提供する。


写真1:フラッグシップとなるPL20000の概観

昨今の通信業界を巡る状況や、そこに必要となるトラフィック分析ツールについて、同社の首脳陣はどのように考えているのか。CEOのジェームズ・ブリアー氏、CTOのアレクサンダー・ハバング氏、そしての日本サイドのカントリーマネジャー(CM)を務める仁枝かおり氏に聞いた。


写真2:ジェームズ・ブリアーCEO(中央)、アレクサンダー・ハバングCTO(左)、日本法人の仁枝かおりカントリーマネージャー(右)

編集部:インターネットにかかわる通信業者にとって、これからの課題は何だと考えているか。

ブリアーCEO:“パーソナライズ”されたサービスを提供することで、顧客に付加価値を提供していくことにある。すでにヨーロッパでは2,3年前からこの動きが活発になっているし、米国でも今まさに各社が競い始めた。日本でも、ここ3年で顕著になってくるだろう。
 カフェでコーヒーを飲むとなれば、かつてはレギュラー、せいぜいカフェインを含むか否かといったような選択肢しかなかった。ところが今、スターバックスに行けば、コーヒー系の暖かい飲み物だけで10を超えるメニューがある。このように、顧客の立場で様々なサービスラインナップを揃えなければならない。

編集部:ヨーロッパでは例えばどんな例が出てきているのか。

ハバングCTO:Facebookに限って、そのデータ通信料は無料にするといった特典を用意するようなキャリアが出現している。魅力的で革新的なサービスを打ち出し、加入者を増やすのが目的だ。ガリバー的存在の大手キャリアがすでに高いシェアを持っていたとしても、気の利いたメニューがあれば、例え新参業者でも同じ土俵に立って勝負ができるようになってきている。
 スペインのキャリア、Yoigoなどはその好例かもしれない。ここ3年間で加入者を10万人から400万人まで増やしたモバイル分野の成長株だ。1日100MBという制限付きの格安プリペイドプランを提供、超過して使いたい場合も手軽にチャージできる仕組みが人気になっている。これを1つの武器として、Telefonicaという大手の牙城を切り崩している状況だ。

ブリアーCEO:これまでは一般的に、画一的な「ベストエフォート型」の「定額制」サービスを提供するキャリアが多かった。しかし、それでは顧客のニーズを満たせなくなってきたということだ。自宅でゲームに熱中するヘビーユーザーならば、特定のオンラインゲームの帯域を保証してほしいと考える。ウィークデイの昼間は留守がちな家庭ならば、利用時間を限定しての格安プランがほしい。そのほかにも、モバイルでソーシャルメディアにアクセスする時の通信品質にこだわる人もいるだろうし、ペアレンタルコントロールを徹底させたいという親もいるだろう。もちろん安いにこしたことはないという前提はあるのだが、必要に応じた対価を払ってでも付加価値サービスを受けたいという潜在ニーズは根強くある。キャリアは通信品質を維持する一方で、キメ細かいサービスを用意することでそれを収益源とする工夫が欠かせなくなってきている。

編集部:日本の通信市場を見ると、どのようなことが言えるのだろうか。

ブリアーCEO:企業情報システムのような分野ならば、米国がトレンドを引っ張り、数年して日本がキャッチアップするといった動きがあったかも知れない。しかし、通信分野でみれば、日本は先進的なポジションにいる。光ブロードバンドしかり、モバイルネットワークしかり。最先端の技術を注ぎ込み、それを早期に実用化しているエキサイティングな市場だ。それに、何をおいても顧客の目が厳しい。最高の技術力と品質を求める国民性があるのか、我々にしてみればタフな市場でもあり、一方で非常にやりがいのある市場として映る。

仁枝CM:当社のトラフィック制御ソリューションを導入する動機として、これまでは“総量規制”、つまりは自社のネットワークリソースが逼迫しないようにする手立てとして考える顧客も少なくなかったように感じる。でもその風向きは明らかに変わってきた。先に触れた“パーソナライズ化”を含め、マネタイズするための新サービスを考える材料として、積極的にトラフィックを分析していこうという機運が高まっている。

編集部:10年ほど前に創業した時は、このような時代が到来することを予見していたのだろうか。

ハバングCTO:予測をはるかに超える状況になっているというのが正直なところだ。ネットワークの高速化はブロードバンド化は加速すると踏んでいたが、ここまで複雑化が一気に進むことは10年前には想像しにくかった。
 当社のスタートアップを振り返ると、ローカルに拠点を構えていたプロバイダがネットワークの輻輳に悩んでおり、トラフィックの実態を“見える化”するためのインテリジェントなボックスを開発してみたのがルーツとしてある。その後、この分野はDPI(Deep Packet Inspection)と呼ばれるようになり、ネットワーク上で何が起こっているかを詳細に把握するために欠かせない技術として認知されるようになった。時代の変化とともに、我々も技術を磨き続けて今日に至っている。

仁枝CM:今一度、製品ラインナップを整理すると、中核となるのが「PRE」(PacketLogic Real-Time Environment)という通信パケットのリアルタイム分析アプライアンスだ。今回、発表したPL20000は、そのハイエンドのモデルに相当する。そのほか、PREと連携しストレージや分析強化基盤として機能する「PIC」(PacketLogic Intelligence Center)、同じくPREと連携しパーソナライズされた知見を生み出す「PSM」(PacketLogic Subscriber Manager)を取りそろえている。ネットワークの利用形態の進化に歩調を合わせてポートフォリオを揃えてきた結果だ。

編集部:貴社の強みはどこにあるのか。

ハバングCTO:まず、このカテゴリの製品として、世界最速であるとの自負がある。長年、この分野で培ってきた技術力やノウハウを活かしており、他社は簡単には追随できないだろう。そのトラフィックがどんなアプリケーション(サービス)から生み出されているかを特定することにも秀でている。Facebook、BitTorrent、Pinterest …。社内に豊富な“シグネチャ”を蓄積しており、トラフィックの“正体”を突き止めることができる。次々登場するオンラインゲームにも十分に対応している。
 ソフトウェアに軸足を置き、ハードへの依存性を低めていることも特徴に挙げられる。プロセサやメモリー、ストレージなどの技術革新は著しい。いつでも最新のハードに切り替えられる柔軟性を担保するための措置だ。

ブリアーCEO:これはもしかすると一番の強みに位置付けられるかもしれないが、我々は“ギーク”の会社だということ。社内にはPh.Dの取得者もいれば、高卒と同時にこの世界にのめり込んだエンジニアもいるなど、人材のバラエティに富んでいるが、誰も一様にネットワーク技術を知り尽くした“かっとんだ”存在である。ディープな議論を日々交わし、寝食忘れるような熱意で、製品としての実装に取り組んでいる。
 表面的なマーケティング戦略には踊らず、地に足の付いたテクノロジオリエンテッドな会社として、今後も市場をリードしていきたいと考えている。

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帯域制御 / QoS / ITインフラ / インターネット

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