[シリコンバレー最前線]

立ち上がるAPIエコノミー─データサイエンティストが引く手あまたに

2013年2月1日(金)山谷 正己(米Just Skill 社長)

調査会社の米IDCは、ビッグデータの世界市場は2015年、169億ドルに達するものと予測している。IT業界はもちろんのこと、ビジネス界もビッグデータによるイノベーションに期待している。今回は、それを下支えするAPIエコノミーを解説する。

シリコンバレーにおいて、「APIエコノミー」が立ち上がっている。様々なクラウドサービスがAPIを通じて結びつき、新たなビジネス、あるいは価値を生み出す。そんな経済圏だ。

先鞭をつけたのはGoogleである。同社は膨大な投資をして開発したWeb表示の世界地図を気前よく公開。誰もが自由に利用できるようにした。その結果、地図上に商店やレストランの所在地を配置し、商品や料理に関するクチコミ情報を提供する新しいサービスが数多く生まれた。

自社サイト上に、Google Mapsから切り出したオフィス周辺地図を表示している企業も少なくない(図1)。自分たちで作成するよりも手軽だし、自在にズームインやズームアウトできるなど、操作性も優れているからだろう。

図1 Google Mapsを、APIを介して自社サイトに埋め込んでいる企業は多い
図1 Google Mapsを、APIを介して自社サイトに埋め込んでいる企業は多い

それ以来、Googleを見習ってか自社で開発したシステム機能をサービスとして提供するベンダーが数多く生まれている。カスタマーサポートやシングルサインオン、課金SaaSといったサービスを開発。オープンに提供する。

Googleを含めて、CSEはAPIを公開することによって外部からのサービス利用を可能にする。利用企業は、自前のIT資産を持たないでも、複数のAPIを組み合わせることで新しいサービスを容易に立ち上げられる。例えばインフラには、AmazonなどのIaaSを採用。ここに先ほど挙げたカスタマーサポートSaaS、シングルサインオンSaaS、さらに課金SaaSのAPIを統合する。これがPinterestのような写真共有SNSや、プレゼンテーションスライドの掲示サービスを提供するSlideshareのようなサービスを、迅速に創業できる理由だ(図2)。多彩なAPIを集約したポータルサイトを提供するクラウドサービスブローカー(CSB)も登場している(CSBについては本誌2011年11月号の特集を参照されたい)。

図2 公開されている各種APIを統合することにより、新しいサービスを素早く創出できる
図2 公開されている各種APIを統合することにより、新しいサービスを素早く創出できる

ちなみに、APIに用いるプロトコルとしてはRESTやSOAP、XML-RPC、JavaScriptが使われている(図3)。複数のプロトコルに対応するサイトが多い。例えば、GoogleはRESTとSOAPベースのAPIを提供している。Webで使用されるAPIを調査しているProgra-mmableWeb.comに登録されているAPIへの呼出しプロトコルの分類は、図4のとおりである。

図3 APIコールに用いられているプロトコル
図3 APIコールに用いられているプロトコル
図4 Twitterへのアクセスの75%は、ほかのサイトからのAPIコール
図4 Twitterへのアクセスの75%は、ほかのサイトからのAPIコール

ひるがえって日本はどうか。大手企業は、APIを使って外部サービスやデータを利用するどころか、社外リソースとのつながりを遮断する傾向にあるようだ。社員が社内のPCからFacebookやYouTubeを閲覧することを禁止している企業も多いと聞く。インターネットに接続してはいるものの、その価値の半分も活用していないということだ。これではまるで情報の“鎖国状態”である。このグローバル時代、一刻も早い開国を望みたい。

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