[イベントレポート]

「小さなことから少しずつ良くしていけばいい」─スティーブ・ウォズニアック名言集

IBM Innovate 2013

2013年6月7日(金)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)

「A Little Bit Better - 世界を急に変えることはできなくても、少しずつ良くしていくことはできる」─。6月3日(現地時間)、米オーランドで開催されたIBMの年次カンファレンス「IBM Innovate 2013」の2日目、ゼネラルセッションに登場したスティーブ・ウォズニアック(Steve Wozniak)の言葉の数々は、会場に集った4000人の期待を裏切らないものだった。

Appleの創業者として、世界を変えたイノベーターとして、現在も世界中の技術者から尊敬を込めて"ウォズ"と呼ばれる同氏。本稿では、ゼネラルセッションで同氏が語ったスティーブ・ジョブスとの思い出、ソフトウェア開発やモバイルデバイスの未来、子どもたちの教育などについて、そのいくつかを紹介していきたい。

ウォズニアック氏
写真 ウォズニアック氏が語る言葉の1つひとつに、来場者は熱心に耳を傾けていた

「僕が何かをデザインすると、スティーブ(故スティーブ・ジョブス)はそれをお金にする手段をすぐに見つけてきた」

Appleを創業した"2人のスティーブ"は個性も得意分野も何もかもが正反対だったが、逆にそのことがビジネスには奏効した。2人のコンビネーションによって生み出された「Apple II」は大成功し、今日のAppleの土台を作り上げた製品となった。

「僕は小学校の教師になりたかった。自分の全人生を通して、教育がすごく大切だということを知っているからね。子どもたちこそ未来だよ」

小学生のころからコンピュータに触れていたというウォズニアック。好きなことに熱中できる環境で育ったことが同氏の才能を開花させた。教育が人を作るという理念の下、後進の育成に多大な支援を行ってきたことでも知られている。

「教育にとって重要なのはお金より時間、子どもたちのそばにいる時間だ。だから教師という仕事は尊い。お金が余ったからとコンピュータを学校に寄付するよりも、自分の時間を子どもたちのために使うほうがずっと難しくて価値がある」

この"お金よりも時間"という考え方はウォズニアックの根幹をなしているようで、ビジネスやイノベーションといった教育以外の話題でもときどき聞くことができる。誰にとっても限られた貴重なリソースである時間を何に使うのか、子どもたちよりも大人にとって考えさせられるテーマだ。

「子どもたちにエンジニアリングの楽しさを見せることは我々の重要な責任」

優れた技術者は洋の東西を問わず常に不足気味だ。次の世代を担う子どもたちがエンジニアリングの世界に興味を持つには、当のエンジニアが楽しく作業をしていなければ無理だというウォズニアック。耳の痛い向きも多いのでは。

「若い頃はごくごく限られたパーツからゲームやマシンを作ったりした。そのうち本に書いてある以上のことができるようになった。前よりも少しずつ良い状態にしていくということがイノベーションの原点だと思う」

高校時代にはすでにその才能を高く評価されていたウォズニアックだが、特にゲーム作りには抜群のセンスを見せた。限られた環境から新たなモノを生み出すためにはシンプル&エレガンスを極めている必要があり、ウォズニアックはその才能に恵まれていた。"A Little Bit Better"、少しずつでいいから以前よりも良い状態にしていくというウォズニアックの姿勢はIBMが提唱するDevOpsやアジャイル開発とも通じる部分がある。

「ときどき、ただの問題解決をイノベーションだと勘違いしている人がいる。イノベーションにとって大切なのは知識よりもモチベーション。もっと知りたい、もっと良くしたいという情熱がなければイノベーションは起こらない」

好きこそものの上手なれという言葉を地で行くような、稀代のイノベーターらしいイノベーションの定義といえる。本に書かれている知識を学ぶのも重要だが、それ以上に興味と好奇心が大きな原動力となって、いつしか知識を超えたイノベーションが誕生するという。

「アイデアを思いついたら、まず自分自身でビルドせよ。それが脳を鍛え、イノベーションへとつながる」

まず手を動かす、失敗してもそこからフィードバックを得る─。言うほどに簡単ではないが、これを実践しない限りイノベーションは起こらない。ビルド→イテレーションのサイクルを速く短く回すことの重要性を、アジャイルという言葉が誕生する前から身体で理解していたようだ。

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