[技術解説]

機械学習、分散処理、ビジネス知識…データサイエンスに必要な要素を知る

データを“科学する”時代へ─スキル要件

2013年6月21日(金)緒方 啓吾(IT Leaders編集部)

データ群から「ビジネスを牽引する知見」を引き出すには、具体的にどのような知識体系やスキルが必要になるのだろうか。本パートでは、データサイエンティストの典型的な実務フローに照らしながら、「分析」「ITスキル」「ビジネス知識」の3つの面に踏み込んでみる。

ビッグデータ時代の到来により、データ分析のあり方は姿を変えつつある。基幹システムのデータベースだけでなく、Webサイトやソーシャルメディア、スマートフォン、公開データなど、さまざまなデータソースから得た情報を使って、顧客ごとに趣味嗜好にあった商品を提案したり、いち早くクレームに対応したり、将来の売上の変化を予測したりできるようになった。

ただし、“果実”を得るのはそう簡単ではない。新しいデータから価値を引き出すためには、新しい道具立てが求められる。Part1では、その体系を“データサイエンス”と呼んだ。以下では、それらをもう少し、具体的に見ていくことにしよう。

図3-1 データサイエンスとは
図3-1 データサイエンスとは

〔分析スキル〕ビッグデータの活用でも使用する手法は変わらない

ビッグデータ活用といえど、分析の手順は基本的に変わらない(図3-2)。大量の非構造化データをそのまま分析するのではなく、一定数のサンプルを抽出、分析ソフトウェアに取り込み、試行錯誤を繰り返して、データに潜むパターンや規則性を表す「モデル」を構築する。その後、他のサンプルデータにモデルを適用し、精度を検証するのが基本的なフローである。

図3-2 データ分析のサイクル
図3-2 データ分析のサイクル

データを分析する際は、統計解析やデータマイニング、機械学習といった手法を目的に合わせて使い分ける(図3-3)。手法そのものは、データアナリスト、データマイナー、モデラーと呼ばれる人々も使用してきた。必ずしも新しいものではない。

図3-3 データ分析に使用する手法の一例
図3-3 データ分析に使用する手法の一例

図に示したのはほんの一例。実際には無数の手法があるが、性質に応じて、いくつかのグループに分類できる。具体的には、①データ同士の関係性を調べる、②データを似たもの同士のグループに分ける、③データをカテゴリに分類する、④頻出するデータのパターンを探すといったものが代表的だ。

なお、データサイエンスの要素として、数学や統計学が挙げられることもある。これは、分析手法の多くが、こうした学問をベースとしているためだ。必ずしも高度な知識がなくても、分析ソフトウェアは使うことはできる。ただし、データを適切に抽出したり、分析結果を検証するためには、統計学の知識が欠かせない。「統計学や数学の知識があると、どの手法を使うとパフォーマンスや精度が上がるかといった判断もできるようになる」(リクルートの西郷彰シニアアナリスト)。

予測精度の向上に必須の機械学習

従来のデータ分析と比べて、異なる部分があるとすれば、機械学習が重要度を増している点だろう。機械学習は、コンピュータに自動的にモデルを構築させ、データを認識したり、分類したりできるようにする技術。

例えば、スパムメールのフィルタリングにも利用されている。サンプルデータを使って、スパムメールの規則性を表すモデルを自動的に構築。受信したメールがスパムかどうかを判別する。最近では、商品のレコメンデーションや、ユーザーの行動分析、検索エンジンでのクエリの推測をはじめ、さまざまな用途に使用される。

機械学習の精度は学習するデータ量に比例するが、データ量が増えるほど計算量も飛躍的に増す。精度を向上させるためには、大量のメモリーを用意する必要があるため、利用のハードルが高かった。分散処理フレームワークHadoopの登場などによって、比較的容易に使えるようになったため、データ分析で用いやすくなった(後述)。

「統計的な手法でも、ある程度なら予測はできるが、精度やスピードといったパフォーマンスを追求するなら、機械学習は不可欠だ」(アイアナリシスの倉橋一成代表)。

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