[加藤恭子のマーケティング志向で行こう!]

顧客の声に耳を傾け過ぎてはダメ

2013年6月24日(月)加藤 恭子(ビーコミ 代表取締役)

数年前、ファストフードの“メガ丼”や“メガバーガー”が話題になりました。健康志向が叫ばれる昨今、普通に考えるとそんなメニューは敬遠されそうなのですが、現実は違いました。ボリュームたっぷりのメガメニューはたくさんの消費者の心をとらえてヒットしました。

健康志向なのにメガバーガー?

あるハンバーガーチェーンでは、お客様アンケートで多数を占めた「ファストフードは野菜が不足するので、健康を考えてサラダも食べたい」という意見から、サラダを大きく売り出したものの、売上げが芳しくありませんでした。それならと、逆にボリュームたっぷりなメガバーガーを期間限定で出したら当たったのです。これは“メガ”“期間限定”といった珍しさや非日常性がまず目を引き、巨大なハンバーガーを食べるという行為がもたらすストレス解消効果も手伝ってヒットにつながったと聞いています。

私たちの仕事ではよく「顧客の声に耳を傾けろ」と言われます。でもマーケティングはそんなに単純なものではありません。実はお客さんの側でも、何が欲しいのかが分からなかったり、曖昧だったりすることがよくあるのです。よって、顧客の声をそのまま鵜呑みにするのではなく、最適な解を導き出せるような耳の傾け方が必要になってきます。

例えば、当社では、よく新規のお客様から「プレスリリースを出したい」という相談を受けます。詳しく聞いてみると「新製品を多く売り上げるために、まずはメディアに取り上げてもらいたい。その手段としてプレスリリースを作ってメディアに送りたい」とのこと。この場合、目的は「新製品を多く売り上げる」ことであって「プレスリリース」ではないはず。ならば、記者説明会や個別のインタビューなど、プレスリリースではない方法でメディアに取り上げてもらうことも考えられますし、メディアでなくても、展示会に出展してアピールする手段もあります。マーケティングに不慣れなお客様は往々にして聞いたことのあるものに頼ろうとし、発想の選択肢を狭めてしまいがちなのです。

ITがやってくれないこと

顧客が考えもしなかった商品やサービスが当たった例として、よく例に挙げられるのが予防歯科や、衣料消臭剤のファブリーズです。予防歯科は、虫歯になってから歯医者に行くという、ずっと常識だった人々の行動パターンを変えてみせました。虫歯が悪化し、年に一度嫌々訪れる患者よりも、3カ月ごとにメンテナンスにやってくる患者のほうが、歯科医としても売上げ的にありがたいですし、何より治療される側は歯を削られて痛い思いをしなくて済みます。常識を疑うことなく、既存のマーケットからの声だけを聞いていたのでは、新しいビジネスは生まれなかったのではないでしょうか。

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