[加藤恭子のマーケティング志向で行こう!]

競合がいるマーケットは企業にもユーザーにもありがたい

2013年7月22日(月)加藤 恭子(ビーコミ 代表取締役)

情報システム部門がハードウェアやソフトウェアを選定する際に、「とにかくシェアナンバーワンの製品を選んでおけば間違いない。たとえ導入が失敗しても、それを言い訳にできる」という話が語られることがあります。読者の皆さんは、どうお考えでしょう? 今回は、この話の是非をマーケティングの視点から見てみます。

マーケットが成立し、広がる理由

 筆者の会社ではメディアトレーニングというプログラムを用意していて、その現場に立ち会うことがよくあります。IT企業のトップの方などに対して、記者に対する受け答えやプレゼンテーション方法を学んでもらう場です。見込み客やパートナー企業向けのプレゼンテーションを得意としている人は多いのですが、記者向けとなると勝手が違うため、うまくできない方が少なくありません。記者に向かって、ついついセールストークに終始してしまったり、模擬的な質疑応答で「ノーコメント」を連発してしまったりするんです。

 そんな模擬質疑応答の中に、「競合他社はどこですか?」という定番の質問があります。実はこの質問、意外と回答が難しかったりします。例えば自社の製品やサービスに自信を持っている人ほど、「競合はいません」と答えることがあります。それくらい優れているといいたいのですが、記者には「市場が小さく、将来性も低いので誰も参入していないのか」と、受け取られてしまうことが起こります。

 ユニークな製品や技術で新しい市場や分野を立ち上げるのは、言うまでもなく大変なことです。どんなに良いものでも認識されなければ購入してもらえません。CRMやERPといった今では当たり前になったものでも、それらの呼称がついて認識されたからこそ広まる面があります。つまり複数の企業が参入して切磋琢磨しながら製品を開発し、マーケティングや広告宣伝を実施し、展示会やメディアでもアピールして……の繰り返しで、市場や分野が認知され、広がっていくのです。

 少し切り口は違いますが、宅配ピザのビジネスも実は同じです。ある宅配ビザの会社がテレビでCMを流すと、その会社だけではなく、競合他社のピザの売り上げも上がると言われることがそれです。CMを見て「ピザが食べたい」と思った消費者は、とにかく自宅に届けてくれる店に電話をするからなんですね。

●Next:競合の存在が自社のプラスにも働く

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