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「5年間であらゆるものが学習する時代へ」米IBMが予測

2013年12月18日(水)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

米IBMは2013年12月17日(現地時間)、今後5年間で人々の生活を変える5つのイノベーション「IBM 5 in 5」を発表した。同社が強調する「コグニティブコンピューティング(Cognitive Computing)」の5年後の達成技術を前提に、システムが学習・認識するようになった時代音生活や都市の姿を予測したものである。その予測は、クラウドやビッグデータといったキーワードがビジネスエリアにとどまらず、市民の生活にも大きな影響を与えるというものだ。

 2013年のIBM 5 in 5でIBMが挙げたのは、(1)クラスルームが生徒について学ぶ、(2)地元での買い物がオンラインに勝る、(3)健康維持にDNAを活用する、(4)デジタルの番人がオンラインユーザーを保護する、(5)都市が市民の生活を支援する、の5つである。

 このうち(3)健康維持にDNAを活用する、との指摘は、日本でもライフサイエンス分野のR&D(研究開発)テーマに挙がっており、その内容がイメージしやすい。だが、(1)(4)(5)はいずれも主語が人間ではなく環境になっているし、(2)も昨今のネットショップの台頭を見れば、にわかには信じられない指摘ともいえる。それぞれ、どんな世界をイメージしているのか、IBMの説明を紹介する。

(1)クラスルームが生徒について学ぶ

 生徒一人ひとりに適したカリキュラムを提供することを指している。適性検査から、テストの点数、出席状況、eラーニングシステム上での生徒のふるまいといった時系列データから、理解度や進捗度に応じて生徒にとって最適な方法を提案できるように、教師の意思決定を支援する。その機関は、幼稚園から高校、さらには就職までとしている。

 IBMは既に、米国で14番目に大きな学区を持つGwinnett County Public School(グィネット郡公立学校)で研究プロジェクトを開始している。ビッグデータ分析とeラーニングにより、学習傾向の類似性を見いだし、成績と学習上のニーズを予測したうえで、具体的かつ効果的な指導方法を調整することで、同学区内17万人の生徒一人ひとりの成績を改善するのが目標である。

(2)地元での買い物がオンラインに勝る

 小売店が、店舗の即時性と顧客との距離の近さを生かし顧客を取り戻すことを指している。ただし、それができる小売店は、顧客が実際に触れられる場所にWebを導入し、オンライン専門店が提供できないような顧客体験を提供すると同時に、店員は、Watsonのような人工知能を使い、店内の全商品に通じているエキスパートになっているという。

 IBMは先頃、Watsonをアプリケーション開発プラットフォームとしてオープン化する計画を発表した。これにより小売店は、顧客が望む商品を正確に予測し、必要なときに必要なモノを確実に届けられる拠点になれるとしている。

(3)健康維持にDNAを活用する

 ゲノム研究や検査が飛躍的進歩することで、患者に対し正確に診断し、それぞれに最適化した治療を施せるようになることを指している。遺伝子情報や、薬への反応を学習することで、癌や脳卒中、心臓疾患などに対して、DNAレベルで個別化した治療が選択できる可能性が高まるという。

 既にIBMでは、ヘルスケア・パートナーと共同で、遺伝子に関する洞察を提供し、患者に最適な治療方法を探すための期間を、これまでの数週間から数カ月から、数分から数日にまで短縮できるシステムを開発している。

(4)デジタルの番人がオンラインユーザーを保護する

 個人の情報が、個々人専用のセキュリティによって守られることを指している。IBMはこれを「デジタルの番人」と呼んでいる。状況データや過去のデータなどから、種々のデバイスを利用しているユーザー個々人の利用状況を学習し、正常で合理的な活動かどうかを推論することで、個人のIDや情報を守るという。

 現在、IBMでは、ネットワーク上のモバイルデバイスの行動を把握し、潜在的なリスクを評価するために、機械学習テクノロジーを適用している。将来的には、データやデバイス、アプリケーションのそれぞれを認識することで、攻撃やID盗難の予兆と疑われる正常でない行為を判別できるようになるとしている。

(5)都市が市民の生活を支援する

 都市生活において市民が必要とする機能や移動の仕方を、よりリアルタイムに把握することで、快適な暮らしを実現することを指している。都市の機能が自動的に変化すると言うよりも、都市のリーダーに対し市民の声が、より直接的に届く環境を整備し、リーダーの意思決定を支援する。

 同様の概念を適用した事例として、例えばブラジルでは、障がいを持つ人々が都市内をより安全に移動できるように、携帯電話でアクセシビリティに関する問題を報告するクラウドソーシング・ツールを開発しているほか、ウガンダでは、命に関わる問題について若者と政府およびコミュニティーのリーダーと対話するためのソーシャル・エンゲージメントのツールを開発していることを挙げる。

 これらの予測はいずれも、IBMの基礎研究所が取り組む新たな技術に基づいているという。これからのシステム像をイメージする際には、こうした予測があることを十分に考慮する必要があるだろう。

関連キーワード

IBM / マシンラーニング / Watson

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