[インタビュー]

「需要を知らずに適切なマーケティングはできない」米JDAソフトの上級副社長

2014年2月26日(水)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

SCM(Supply Chain Management:サプライチェーン管理)ソフト大手の米JDAソフトウェアが、カバー範囲の拡大とクラウドコンピューティングに力を入れている。小売業の店舗運営用ソフトから始めた同社は、Manugisticsやi2 Technologiesといった製造業向けSCMソフト大手などを買収してきた。JDAは今、どのようなSCM像を描いているのだろうか。米JDAソフトウェアでインターナショナル担当上席副社長を務めるラザット・ガウラブ氏に聞いた(聞き手は志度 昌宏=ITLeades編集部)

写真1:米JDAソフトウェアの
インターナショナル担当上席副社長である
ラザット・ガウラブ氏

――SCM分野での買収戦略を展開している。

 消費者から原材料メーカーまでのエンド・ツー・エンドのSCM(Supply Chain Management:サプライチェーン管理)をカバーするためだ。当社は小売業のための店舗運営管理をスタート点に持つが、SCMの2大ソフトベンダーであったManugisticsとi2 Technologiesを2005年と2010年にそれぞれ買収している。最近では、2012年に卸・倉庫業に強いRed Prairieを買収した。

 原料・材料や部品、最終製品までの流通過程を管理し、最適化を図るというSCMの考え方自体は変化していない。だが、市場の変化や、それに伴うサプライチェーンの構成の変化などにより、SCMの適用範囲が進化している。その範囲をカバーするためには製品拡充も不可欠になる。

 ただし、製造業を舞台にしたSCMでは、生産計画など、どうしてもモノの管理が中心になりがちだった。需要と供給のバランスを取るためには、モノだけでなく、データ、金、人を加えた4種のフローを同時にマネジメントする必要がある。この側面でみても、多様な製品ポートフォリオが必要である。

――現在、SCMに最も影響を与えている動きは何か。

 オムニチャネルだ。当社製品群で言えば、「All Channel Commerce/Customer Engagement」と呼ぶ領域だ。

 オムニチャネルに関しては、オンライン店舗とリアル店舗の関係やモバイルアプリケーションなどに注目が集まっているが、その本質は「主導権は消費者にある」ということだ。消費者の中でも、スマートフォンが身体の一部になっているような若者の存在が、大きな影響を与えている。

 特に、日本を含む先進国の小売業においては、彼らは“厄介者”に見える。これまで小売業は、消費者との接点としてサプライチェーンにおいて大きな力を持っていた。それがネットの世界では、メーカーも小売業も同列に並んでしまうし、メーカーが直接、消費者とコンタクトを取ることもできるからだ。小売業の力は消費者の力へと変化したのだ。

――オムニチャネルに対しては、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)関連企業などを中心にマーケティング分野での製品強化を図っている(関連記事『避けられぬオムニチャネル対応、スマホ普及で顧客は“神出鬼没”に』)。

 どこからでも注文できるネット環境において最も利益の出る形を作るためには、顧客に対し最もインパクトのある販促方法を打ち出せなければならない。だが、間違ってはならないのは、「需要が分からない中で、適切なマーケティング施策は打てない」ということだ。

 SCMにおいては「Bull Whip(ブルウィップ=ムチ)効果」と呼ばれる現象の存在が古くから適されている。消費の最前線で起こった変化に対し、小売り、卸、製造、原材料と工程をさかのぼるほど需要予測の変動幅が大きくなるというものだ。最大の原因は情報伝達の遅延にある。

 Bull Whip(ブルウィップ=ムチ)効果の一般的な解決策は、バッファーとして在庫を抱えることだ。だが、これではSCMの趣旨に合わない。だからこそ、消費者から原材料メーカーまでのエンド・ツー・エンドをカバーする仕組みによって、情報伝達にかかる時間を短縮しなければならない。

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