[愛されるモバイルアプリを作るための7つの質問]

なぜ、iOSとAndroidで、アプリのデザインが同じではいけないのか?:第7回

2014年3月31日(月)緒方 啓吾(IT Leaders編集部)

今や、モバイル活用は企業ITの最重要テーマの1つ。しかし、モバイルアプリの開発にはまったく土地勘がないという読者も多いのでは。分からないことは先達に尋ねるのが一番だ。本連載では、ニフティ、はてな、GREEでコンシューマー向けサービス開発の最前線に立ってきた伊藤直也氏に、モバイルアプリ開発の定石を聞く。(緒方 啓吾=IT Leaders編集部/監修:伊藤直也)

図1:「AndroidもiPhoneと同じデザインで」その言葉に悩まされる開発者は多い
図1:「AndroidもiPhoneと同じデザインで」
その言葉に悩まされる開発者は多い

Q7:iOSとAndroidではデザインに何か違いはあるのか?

 A:モバイルアプリ開発の落とし穴の中でも、特に多くの人がはまるのが、「iOSとAndroidでアプリのデザインを同じにする」というものだ。気持ちはわからなくもないが、アプローチとしては間違っている。なぜなら、iOSとAndroidは、全く異なるプラットフォームだからだ。

 確かに、両者は同じように見える。アイコンが並んだホーム画面は瓜二つだし、タッチでキーボード入力したり、項目を選択したりするのも同じだ。しかし、双方を使ったことがある人なら、操作感の違いは分かるはずだ。

図2:Androidは物理的な「戻る」ボタンを備える
それを前提としたアプリを構築するのが一般的だ
(※出典:『Android Design』)

 例えば、Android端末と、iPhoneでは物理的なボタンの数が違う。Android端末には戻るボタンと更新ボタンが付いている。アプリ内で戻るボタンを押すと、直前の動作に戻ることができる。更新ボタンを押すと、アプリの情報を最新状態にアップデートできる。端末によっては、その他のボタンを搭載している場合もある。

 一方、iPhoneが用意しているのは、ホーム画面に戻るためのボタン1つだけだ。物理ボタンの不足はアプリ側で補う。具体的には、画面の上方に「戻るボタン」を配置、画面上端で、画面を下に引っ張ると情報を更新するのがマナーである。

図3:iOSはアプリ側でナビゲーションをすべて賄う
UIガイドラインでは、画面上部のナビゲーションバーに
「戻る」ボタンを配置するよう指示している
(出典:『iOS Human Interface Guidelines』)

 アプリの思想も全く違う。Androidは、アプリ間を行き来して、データを受け渡す画面遷移も一般的だ。例えば、Gmailでアプリの添付を選択すると、Googleドライブが立ち上がり、ファイルを選択するとGmailの画面に戻るといった具合である。アプリの操作コンテクストの中に、他のアプリを介在させられる。iOSには、基本的にこうした発想はない。アプリは単独で完結する。他のアプリとは連携しない。

 どちらが良い、悪いわけではない。設計思想が違うということだ。ユーザーはそれぞれのOSの操作に慣れ親しんでいる。iOSのユーザーはAndroid端末をすぐには使いこなせない。その逆もまた然りである。Androidの開発ガイドラインは、「iOSとAndroidは違うOS。同じように設計しようとしてはならない」と明言している。

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