[市場動向]

MDM、PC資産管理ソフトを刷新する際に知っておきたい市場動向

2014年5月28日(水)浅沼 邦明(テクノ・システム・リサーチ)

今、クライアント管理ソフトをリプレースしようと考えているのなら、少し注意が必要だ。スマートデバイスやVDIなどの登場により、クライアント環境が多様化。今後、管理業務が煩雑化することが予想されるからだ。課題を解決すべく管理ソフトの機能強化も始まっている。製品を比較検討するにあたっては、最近のトレンドを押さえておきたい。

 Windows PC一色だった企業のクライアント環境が多様化し始めている。スマートデバイスは代表格。パイロット運用を一巡させ、本格的に業務活用し始める企業が増えた。VDI(Virtual Desktop Infrastructure)も、Windows XPのサポート終了などの影響もあって、いよいよ普及期に入りつつある。

図:PCとスマートデバイス、VDIの一元管理が課題に図:PCとスマートデバイス、VDIの一元管理が課題に
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 今後、多くの企業は、物理PCとスマートデバイス、VDIを併用することになるだろう。情報システム部門は、増え続ける多様なデバイスを管理しなければならない。一方で、管理に割く人数を増やせる企業はそう多くはない。つまり、管理の効率化が多くの企業にとって課題になるはずだ。

 管理効率を考える上で重要なのが、管理ソフトの一元化である。現状は、クライアントごとに管理ソフトを使い分けている場合が多い。物理PCはPC資産管理ソフト、VDIはVMwareやCitrixが提供する管理ソフト、スマートデバイスはMDM(Mobile Device Management)といった具合である。

 しかし、クライアントごとに管理画面を切り替えるのは煩雑だ。実際に、管理ツールの乱立に悩む企業は少なくない。ユーザー企業を対象に、PCとスマートデバイスの一元管理の要否を尋ねたところ、201人の回答者のうち、61人が「望む」と回答した。うち51%は1000人以上の大企業であることから、大企業ではニーズが顕在化してきている。

 現時点では、VDIやスマートデバイスの導入台数が少ないため、こうした問題意識は広く共有されているわけではない。しかし、多くの企業は早晩、同様の課題に直面することになるはずだ。そして、PCやVDI、スマートデバイスの一元管理を望むようになるだろう。

シングルコンソールで、管理可能台数の多い製品を選ぶべし

 実は、一部のベンダーは、PC資産管理ソフトやMDMに機能拡張を施し、PCやVDI、MDMを管理できるようにしている。今後、PC資産管理ソフトやMDMの導入を予定している場合は、こうした製品を選ぶことを薦める。

 ただ、製品によって、一元管理が意味するところはまちまちだ。他社製品との連携にとどまっているものも少なくない。というのも、単一画面で多様なデバイスを管理可能にするには、それなりの投資が必要だからだ。単一画面で管理できる製品は、今のところ、日本IBMなどが提供するものなどごくわずかだ。

 1台のサーバで管理できるクライアントの台数(キャパシティ)も重要だ。スマートデバイスなどPC以外のデバイスを扱おうとすると、管理台数は当然増える。キャパシティが小さいとサーバを何台も運用しなくてはならなくなるため、ライセンスコストや運用コストがかさんでしまう。この点も製品選定の際の重要な基準となろう。

 PC資産管理ソフト導入済みユーザーの中でソフトウェアの見直しを行うユーザーが見直しをする理由としても、「サーバ1台で管理できるクライアントPCの台数が少ない」が最も多く回答されている。

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 これまで、PC資産管理ソフトは、成熟しきった、“枯れた”分野と言われてきた。極論すれば、どの製品を選んでも大きな違いはなかった。しかし、デバイスの多様化により、管理ソフトに求めるべき要件が今、大きく変化している。深く考えずに、従来の延長線上でツールを選ぶと、近い将来、運用で苦労するのは間違いない。


浅沼邦明

株式会社テクノ・システム・リサーチ シニアアナリスト
2003年、テクノ・システム・リサーチに入社。以後、ソフトウェア分野の市場を中心に調査分析に携わる。近年はPC資産管理/MDM/VDIなどを担当。メーカーだけでなく、SI/VAR、ユーザーを取材し、多角的な視点で市場調査を行っている。調査分析結果を基にした講演も行う。

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モバイルデバイス管理 / IT資産管理 / VDI

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