[海外動向]

【PTC Live Global 2014 詳報】IoT/M2Mが求める企業の意識改革、モノを通じたサービス提供へ

2014年7月3日(木)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

CAD(Computer Aided Design:コンピュータによる設計)ソフトやPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)ツールを開発・販売する米PTCが2014年6月15日から18日(現地時間)にかけて、年次ユーザーカンファレンス「PTC live Global 2014」を米ボストンで開催した。基調講演などでは、製造業に向けた新たなビジョン「Closed Loop- Lifecycle Management」を提唱。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)時代に向けて、ハードウェアの設計だけでなく、組み込みソフトの開発や、サービスビジネスまで、製品のライフサイクル全体の一元管理が重要だとした。こうした考え方は、実際にモノを作っていなくても、顧客を持つすべての企業にとって、「サービスとは何か」を考える際の参考になるはずだ。

競合他社のCADデータをネイティブに取り込む

 IoT対応やサービスビジネスシフトにおいて、PTCが競争優位性を発揮するためのテコになるのが、ものづくりの直接的なツールであるCADソフトのCreoである。PTC Live Global 2014では、最新版の「PTC Creo 3.0」を発表。競合CADベンダーのCADデータをそのまま読み込める「Unite Technology」によって、競合CADソフトをサブシステム化してしまう作戦に出た。

 これまでもCreoでは、パラメトリック型の「Pro/ENGINEER」とダイレクト(ジオメトリック)型の「CoCreate」を統合したり、マニュアル作成やマーケティング活動など設計・開発以外の部門でのCADデータ活用を推進したりなど、企業内でのCADデータ流通に注力してきた。次世代の「Closed-Loop Lifecycle Management」に向けては、製品ライフサイクルのどの段階にあっても、CADデータを提供・活用できるようにするほか、IoTで得た市場の声をCADに反映できる仕組みを構築していくとみられる。

 ただし、Closed-Loop Lifecycle Managementの理想型を求めて、すべてのCADをCreoにリプレースさせるのは現実的ではない。「Creoユーザーの40%が他社製CADも利用している」(CADセグメント担当上級副社長のキャンベル氏)からだ。サービスを含めたライフサイクルにおいては、サプライヤーやアフターサービス事業者など、製造業のエコシステムはさらに広がるだけに、なおさらだ。

 Unite Technologyでは、他社製CADソフトのデータをフォーマット変換して読み込むだけでなく、Creoで修正した結果を、それぞれのフォーマットで提供することもできる。キャンベル氏は「必要なデータだけを変換することで、工数やコストを大幅に削減できるうえ、サプライヤーなどとの協業も容易になる」と強調する。双方向のデータ交換が可能になったのは、仏Dassault Systemesの「CATIA」と「SolidWorks」、米シーメンスPLMソフトウェアの「NX」である。

 一方、日本市場向けとも言える機能強化も図っている。「PTC Creo Layout」における2D(次元)データと3Dデータの相互利用がそれだ。グローバルにみれば、設計現場は「3D環境にシフトしており、2D環境を求める声はほとんどない」(キャンベル氏)。だが、日本企業などでは、2Dでの設計環境を求める声が依然として強いという。

写真9:基調講演に登壇したトヨタ自動車 ユニットセンター エンジン統括部 企画総括室主査の清水 弘一氏写真9:基調講演に登壇したトヨタ自動車 ユニットセンター エンジン統括部 企画総括室主査の清水 弘一氏
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 この2Dを含む設計環境を評価する1社が、トヨタ自動車。17日の基調講演では、同社ユニットセンター エンジン統括部 企画総括室主査の清水 弘一氏が登壇し、今後新たに投入するエンジンの設計において、今夏からCreo Layoutを導入することを明らかにした(写真9)。トヨタは2015年までに現在、27種類あるエンジンに、新たに14種類を追加する計画で、ここにCreo Layoutを利用する。

問われる日本企業の本気度

 いかがだっただろうか。PTC Live Global 2014のポイントを初日と二日目の基調講演やプレスインタビューなどの内容を中心にご紹介した。SCPやClosed-Loop Lifecycle Managementについては、冒頭でも述べたように、PTC という製造業に特化したベンダーの発信であることは留意すべきだろう。単にITありきではなく、製造業ユーザーの事業推進に向けたITの解釈や、それを受け入れるであろう同社顧客企業のニーズが背景にあるからだ。

 そう考えれば、IoTを前提にした新しい、ものづくりやサービス事業へのシフトに欧米企業は舵を切るだけでなく、そのための意思決定や環境整備を確実に進めていることが分かる。PTCも今回、米GEなどが主導する「Industrial Internet Consortium(IIC)」に参加したことを公表した。IICは、GEとAT&T、シスコシステムズ、IBM、インテルが2014年3月に結成したが、PTCが参加したことで、ものづくりアプリケーションへの取り組みが本格化しそうだ。

 一方で、日本企業は未だネット時代の洗礼を受けるばかりで、自らの立ち位置を築き上げられないでいるのではないだろうか。全社戦略はもとより、IT環境やITツールの選定においても、事業部単位の、いわゆる“サイロ型”選択から抜け出せていないように見える。PTCが打ち出すClosed-Loop Lifecycle Managementなど、カバー範囲が大きくなればなるほど、従来型の取り組みでは、その導入はおぼつかない。

 ただPTC日本法人の桑原 宏昭 社長によれば、「グロ-バル対応に向けた組織も、ここ1、2年は取り組み度合いが変わってきている。ITにより全社に横串を刺そうとする動きが出始めている」という。IoTを単にITのバズワードだと考えるのか、あるいは産業のこれからを示すキーワードに位置付け、その本質を追究するのか。日本企業の将来に向けた本気度が問われることになりそうだ。

 なお弊誌では、製造業のサービス化についての理解を深めていただくために、PTC日本法人の山田 篤伸 氏による連載『ものづくりからことづくりへ、製造業に迫るサービス化の波』を始めていただいた。こちらも合わせてご覧いただきたい。
 

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