[インタビュー]

「IoTに最適化したネットワークが必要に」米アカマイのチーフストラテジスト

2014年9月18日(木)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

IoT(Internet of Things:モノのインターネット)を前提にした新たなアプリケーションによるビジネスモデル改革への期待が高まっている。そうした中、CDN(Contents Delivery Network)サービスを提供する米アカマイ・テクノジーズが、IoTのためのネットワーク環境の構築に力を入れている。IoT時代には、どんなネットワークが必要になるというのか。米本社のチーフストラテジストであるクリストファー・アレキサンダー(Kristofer Alexander)氏に聞いた。(聞き手は志度昌宏=IT Leaders編集)

米アカマイ・テクノロジーズのチーフストラテジストであるクリストファー・アレキサンダー氏米アカマイ・テクノロジーズのチーフストラテジストであるクリストファー・アレキサンダー氏

−−IoT(Internet of Things:モノのインターネット)のためのネットワークが必要だと指摘している。IoTの何を問題視しているのか。

 様々なデータソースがネットワークにつながっていく中で、これまでとは異なるインタラクション(相互作用)が複数、発生することだ。

 IoTの時代になれば、様々な機器がつながることは既に指摘されている。従来の人が操作するコンピュータに加え、車や製造装置などの機械、センサーあるいは、それらで読み取れるバーコードやQRコードが付されたすべてのモノである。

 しかし、重要なことは、これらがただつながるだけでなく、読み取った情報がやり取りされ、それに基づくインストラクション(命令)によって、新たな変化が生じる。そこでは、人よりも機械、機械よりもセンシングされたデータやインストラクションのほうが多数発生するのは明らかであり、そこに新たなインタラクションが発生する。

 IoT環境で発生するインタラクションは、大きく3種ある。P2P(People to People)とP2M(People to Machine)、M2M(Machine to Machine)だ。アプリケーションで見れば、P2PはSkypeやText Messageなど、P2MはWebサイトやEC(Electric Commerce)サイトなど、そして、M2Mは、信号制御や電力制御などだ。

 これらのうち最も大きな伸びが期待されるのがM2Mだ。だが、現在のインターネットはP2PやP2Mのアプリケーションを想定した環境整備やサービスが提供されているのが実状だ。

−−IoTのためのネットワークとしては何が必要になるのか。

 5つのチャレンジがあると考えている。(1)コネクション、(2)メッセージング、(3)データのコレクションとストレージ、(4)制御とセキュリティ、(5)アナリティクスだ。

 ネットワークにつながる機器の多様化が進めば、Wi-FiやBluetoothを含め様々な通信プロトコルを介したアクセスが増える。そうした中で、性能を維持しなければならないし、データをどこに蓄積するかも検討しなければならない。当然、機械などをターゲットにしたアタックも増えるだろう。これらの課題を解消していかなければ、IoTの世界はスケールしていかない。

−−アカマイはこれまで、CDN(Contents Delivery Network)の考え方を元に、データセンター間を結ぶことで、企業向けにWebアクセスやセキュリティを強化したネットワークサービスを提供している(関連記事『「Webでのユーザー体験がビジネスの成否決める」米Akamaiシニア・バイスプレジデント』)。IoTでも同じアプローチを採るのか。

 よりネットワークの終端に近いところまでを含めたエンドツーエンドで最適化を図る手法を進めている。インターネットの標準プロトコルの1つであるTCP/IPは非効率であることは明らかだからだ。取り組みのいくつかは個別に発表済みだが、これらを組み合わせることで、例えば、家庭内に設置する無線LANルーターからデータセンターまでを統一したプロトコルで通信できるようになる。

 具体的には、通信事業者用のソフトウェアと、企業などが所有して運用するルーター用のソフトウェア、そして一般家庭などで利用する無線LANルーターやスマートフォンなどに導入するソフトウェアなどを用意する(図1)。

図1:所有者が異なるネットワーク機器のそれぞれにアカマイ製ソフトウェアを導入することで全体最適化を図る図1:所有者が異なるネットワーク機器のそれぞれにアカマイ製ソフトウェアを導入することで全体最適化を図る
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 通信事業者用のソフトウェアは、2012年12月に買収が完了した旧ベリビューが持っていた通信事業者向けCDN用ソフトがベースになる。すでに米AT&Tや仏Orange、スペインのTelefonicaなどが導入している。

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