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【PARTNERS 2014報告】危機とチャンスが同居する時代、今こそ「データ駆動」の経営/事業を!

2014年11月5日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

米Nationwide Insurance、X PRIZE財団のCEO、そして米テラデータ(Teradata)の経営陣。テラデータのユーザー会が主催する「PARTNERS 2014」の基調講演は実に盛りだくさんの内容だった。一体何が語られたのか。テーマは「Data Driven(データ駆動)」だったが、それ以上に「Critical Feeling Driven(危機感駆動)」があるように感じられた。

 前回の記事では、米テラデータ(Teradata)が発表した技術や製品に焦点を当てた。様々なビッグデータを蓄積した複数のDBMSで構成される「Data Lake」。これをいかにシンプルに扱い、横断的なデータ分析(Analytics)を可能にするかが、これからのデータ分析プラットフォームの主要テーマであるというストーリーである。

 本稿では、PARTNERS 2014の基調講演で語られたことを中心に紹介する(写真1)。新しい技術や製品を生み出す問題意識の一端が垣間見えるだけではなく、日本円で15万円以上の参加費を取るカンファレンスの基調講演が面白くないわけがないからだ。

写真1:大勢の参加者が聴講した基調講演の様子写真1:大勢の参加者が聴講した基調講演の様子

当社は「Analyticsの会社」である
−−米Nationwide Insurance

写真2:PRATNERS2014の議長を務めた、米Nationwide Insuranceの顧客情報管理担当アソシエート・バイスプレジデントであるKathy Koontz氏写真2:PRATNERS2014の議長を務めた、米Nationwide Insuranceの顧客情報管理担当アソシエート・バイスプレジデントであるKathy Koontz氏
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 最初に登壇したのは、PRATNERS2014の議長を務めたKathy Koontz氏(写真2)。本業は米Nationwide Insuranceで顧客情報管理を担当するアソシエート・バイスプレジデントである。Nationwideは損害保険や生命保険などが主力の金融サービス大手。損保では米国でトップ10にランクされている。

 Koontz氏は、Nationwideにおけるデータ分析の取り組みを以下のように説明した。

・Nationwideでは2007年まで、データが死蔵されていた。整理もされていなかった。そんな時にCEOが「NationwideはAnalyticsの会社にならなくてはいけない」と宣言。2008年に変革の旅路(Journey)に乗り出した。
すでにあった顧客データを分析し、足りないデータを補完してきた。これを当社では「顧客の遺伝子(ゲノム)解析」と呼んでいる。より良いサービスを顧客に提供することをすべての中心に置いている。

・「行動につながらない分析は意味がない。行動を変える」−−。この方針のもと、顧客が問題だと考えることは何か、営業担当者はデータをどう使っているのか、意味のない活動は何か、どんな顧客にどんな提案をするべきかなど、分析を深くしていった。すべては顧客へのケアで競争優位に立つためだ。

・データ分析の価値を上げるのはシンプルである。多くのデータを収集し、戦略やモデルを作る。そうすればリスクを減らせるし、成果につながっていく。こういったことが、技術の進化で簡単にできるようになり、Nationwideは今ではデータドリブン(駆動)の会社になっている。小さな工房のレベルから工場のレベルに移行しつつある。だが、それでも変革の旅路は始まったばかりである。

・データとアナリティックスは規模の大小に関わらず、すべての組織を変革できる。(カンファレンスに参加した)皆さんも変化の担い手になって欲しい。実行できるアイデアを会期中に考え、持ち帰って欲しい。

 Koontz氏は、同社のCEOが「アナリティックスの会社にならなくてはいけない」と宣言した理由を説明しなかった。だが、2007年と言えば、サブプライム問題が明らかになり、自動車保険の加入者もスローダウンしていた時期(リーマンショックは翌2008年)である。経営環境に対する危機感が「アナリティックスの会社」への転換を後押ししたのかも知れない。

エクスポネンシャル(指数関数的)な時代の認識を
──Peter Diamandis氏

写真3:X PRIZE財団のCEOのPeter Diamandis氏写真3:X PRIZE財団のCEOのPeter Diamandis氏
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 基調講演の後半には、メインゲストであるPeter Diamandis氏が登壇した(写真3)。同氏は X PRIZE財団、Zero Gravity 社、あるいはSingularity大学などの創設に携わった著名な起業家で、X PRIZE財団のCEOを務めている。

 X PRIZE財団は、例えば1000万ドルの賞金を争って有人宇宙船のアイデアを競うなど、クラウドソーシングによって斬新な何かを発明することを仕掛けている組織(YouTubeなどを是非、検索して欲しい)。Singularity大学は起業家育成をミッションに著名な教授陣が講義に立つ、名前の通り特異な大学である。米Googleや米Cisco Systemsなどがスポンサードしている。

 そのDiamandis氏が1時間ほどを使って話したのは次のようなことだ。

図1:テクノロジーはムーアの法則に則る図1:テクノロジーはムーアの法則に則る
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・私たちの頭脳、つまり心のハードウェアは線形でしか向上しない。これに対してデジタル革命はエクスポネンシャル(指数関数的)である。テクノロジーはムーアの法則に従って進化する。その結果、ロボットやAI(人工知能)など8つの領域で破壊の圧力と機会が同時に起きている(図1)。

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Teradata / データドリブン経営 / エクスポネンシャル

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