[真のグローバルリーダーになるために]

【第3回】外国人のビジネス仲間に、なぜ日本人はなれないのか?

2015年2月6日(金)海野 惠一(スウィングバイ 代表取締役社長)

香港のホテルに到着した日本ITCソリューション課長の佐々木。ほとんど勝機がない入札案件について考える中で、「グローバルリーダーとは何か」に対する山下塾の木元塾頭の講義を思い出した。会社では「英語ができ、専門的な知識があり、仕事ができる」ことが条件とされたが、木元塾頭は、それでは不十分だという。グローバルリーダーのあるべき姿に達成するために、日本人に何が欠けているというのか。

 ビジネスにかつためのリーダーこそが、グローバルリーダーだと言う木元塾頭は、そんなリーダー像について、話を続けた。

 「今、マレーシアとシンガポールを結ぶ高速鉄道の入札が話題になっています。そこに日本も入札するのでしょうが、そこで勝つために必要な能力は何でしょうか?そして、勝つためにはバイヤーや強豪相手に対して要求される交渉能力は何でしょうか。

 そもそも、私がコンサルティングを始めてから40年以上になります。昔から、どこの企業も人材のグローバリゼーションを経営課題に挙げてきました。ですが、どの企業も人材のグローバル化を達成できたという話は聞いたことがありません。それはなぜでしょうか?」

 塾頭がこんな質問を私に投げてきたことを思い出した。その質問を佐々木は頭の中で今一度、反芻してみた。

 確かに、今までこうしたグローバリゼーションやグローバル人材の育成について社内で聞いてきたし、自らも研修を受けてきた。しかし、グローバルリーダーの定義とは程遠い研修ばかりだった。佐々木自身も、こうした研修やOJTだけでリーダーを育成できるのかについては疑問に思っていた。彼自身がグローバルリーダーになりたかっただけに、なおさらだった。

 さらに塾頭は、従来のグローバルリーダー育成では、そもそも要件が間違っているとも言った。

 「各社とも毎年、相当な投資をしてきているようですが、一向にその成果が上がっていないようです。そうしたことが毎年繰り返されて、何十年も経ってきました。その原因は、人材のグローバリゼーションのための手段を間違えていたからではないでしょうか。そして現在でも、それは間違えたままのように思います。

 グローバルリーダーの一般的な定義に沿った人材を育成するために、企業がこれまで、その要件としてきたことを列挙してみましょう。

(1)英語を上達させる:TOEICが800点を取れないと部長にはなれないというハードルを設ける
(2)専門職能を強化する:世界に通じるためには専門的なノウハウを身につける
(3)仕事ができる:そもそも仕事ができなければリーダーとしては論外である

 そのための人材育成策として企業は何をしてきたでしょうか?

(1)海外留学させる:かつてはMBA資格を取るように推奨してきた。しかし最近は、そうした制度は激減してきている。というのも、MBAを取得した社員が日本に戻ってくると退社してしまうケースが多かったからだ
(2)OJTとして海外派遣する:海外に数年派遣することで、語学と現地のビジネスを研修する。結果、海外でのビジネスのやり方や語学が、その置かれた環境によって大きく異なるものの、それなりの成果は上がってきた。海外での顧客が日本企業の場合には語学は上達しないケースが多々あった
(3)英会話学校に通う:英会話のスキルを高めることが人事考課の項目に入っている

 これらの方法における最大の問題は、育成する側がグローバルリーダーとは、どういう人材かを良く分かっていないケースが多いことです。

 もう一度、定義しておくと『卓越したグローバル視点と専門性を持ち、強い克己心と高いコミュニケーション能力を備え、多様な価値観を持つ多国籍チームを率い、目的遂行に向けて経営資源をグローバル全体最適に導く人材』ですが、この定義通りの人材が、まず社内にはいません。ですから、そもそもどうすればそうした人材になれるのかすら分からないのが現状ではないでしょうか」

 まさしく佐々木は、木元塾頭が指摘する従来型の研修と会社の目標をすべて経験してきたし、それらを達成してきた。大学院を出て修士も取ったし、OJTで上海に3年いた。TOEICもハードルを越えているし、今も毎日、暇さえあれば英BBCのニュースを聞いている。

 だが自分は、まだグローバルリーダーでないことも分かっている。会社側も、これ以上の研修やOJTができないことを知っている。この何年、塾頭が掲げるグローバルリーダーの定義には程遠い自分がいることを認識してきた。この先、どうしていいのか分からない状況が何年も続いてきていた。そんな折、たまたま知人から紹介され山下塾に入塾したという経緯があった。

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