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[市場動向]

ビジネスアナリシスの知識体系、“経営価値”へ照準合わせた「BABOK V3」が始動

2015年4月28日(火)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

「BABOK(Business Analysis Body of Knowledge):ビジネスアナリシスのための知識体系、バボックまたはビーエーボク」が2015年4月、最新版の「BABOK V3」に改編された。ITプロジェクトの推進主体から、経営が求める価値の実現へと対象範囲を拡大すると同時に、アジャイル開発やビッグデータ活用などの最新技術も取り入れた。ITの経営貢献価値がますます求められる中、利用企業においてはBABOK改編の意味を知り、体系的なアプローチを実践すべきだろう。

ITプロジェクトの前後に対象を拡大し「チェンジ」重視に

 では、BABOKはV3で具体的にどう変化したのか。そのエッセンスを紹介しよう。

 まず、ビジネスアナリシスの定義そのものが以下に変更された。

ニーズを定義し、ステークホルダーにバリュー(価値)を提供するソリューションを推奨することにより、エンタープライズにおけるチェンジを引き起こすことを可能にする専門活動

 カタカナが多く分かりづらいかもしれないが、端的に言えば、様々に変化する経営環境にあって、経営者や事業部門などが抱える課題に対し、最も価値が高い仕組みを提供することで、企業としての成長をうながすことである。価値が高い仕組みは当然ながらIT を前提にしたものになるが、仕組みの立案・構築そのものは手段であり、あくまでも企業が成長することが最終目標だ。

 BABOKでは、コアコンセプトとして、定義文にあるカタカナの部分「ニーズ」「ステークホルダー」「バリュー(価値)」「ソリューション」「チェンジ」、そして「コンテキスト」を加えた6つを挙げている。

図2:BABOK V3における知識エリアと関係性図2:BABOK V3における知識エリアと関係性
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 定義の変更が、知識エリアの名称や、その内容に、次のように反映されている(図2)。

戦略アナリシス(旧名称はエンタープライズアナリシス)

 単体プロジェクト対象から企業戦略そのものを対象にする。そのため、現状分析と将来の目標のそれぞれを定義した上で、そのギャップを埋めるための仕組みを立案する。現状と将来のギャップは、前バージョンでは「第3者から与えられることを想定」(清水担当理事)していた。

要求アナリシスとデザイン定義(同要求アナリシス)

 要求に基づくデザインにまで踏み込む。ここでのデザインは、システム設計までは含まないものの、より具体的なシステム像を立案する。「価値を確実に刈り取るには、デザインまで踏み込む必要がある」(清水担当理事)という。

ソリューション評価(同ソリューションの評価と妥当性確認)

 前バージョンのほうが範囲は広そうな名称だが、実際には妥当性の確認が中心だった。V3では、プロトタイプからパイロット版の作成、実運用までを継続的に評価し、実現できる価値を最大化することに重点が置かれている。運用開始後の改善にも取り組むことになる。技術的には、アジャイルやDevOps(開発と運用の融合)といった取り組みを視野に入れている。

引き出しとコラボレーション(同引き出し)

 ステークホルダーの要求を明確にする過程だが、ステークホルダーの多様化を受け、コラボレーションを重視するようになっている。協働ゲームなどのテクニックも例示されている。要求の把握方法では、従来がインタビュー中心だったのに対し、フィールド調査やデータ分析、研究開発などを追加した。ビッグデータの価値を取り入れた格好だ。

要求のライフサイクルマネジメント(同要求管理とコミュニケーション)

 従来はプロジェクト単体に対する要求の管理にとどまっていた。V3の「要求」には、デザインやコンテキスト(背景)なども含まれる。ライフサイクルを明示しているように、継続的な改善が前提だ。

ビジネスアナリシスの計画とモニタリング(同ビジネスアナリシスの計画と監視)

 従来に加え、ステークホルダーのエンゲージメントや、ガバナンス計画、BA関連情報のマネジメントなどが拡張されている。ガバナンス計画は、プロジェクト、あるいはアジャイル開発における開発順序など、優先順位付けなども含んでいる。

アジャイル開発前提に、ニーズの先取りも求められる

 V3の変更点の紹介で目に付くのが、「改善」や「ライフサイクル」など、継続的な取り組みを求める用語である。プロジェクト単体の成否ではなく、経営ニーズへの回答や企業の成長を支えるための仕組みの実現となれば、システムが稼働してからの実質的な成果を刈り取るといえば、至極当たり前だろう。

 ただV3が前提にしている改善策は、アジャイル開発といった試行錯誤型アプローチだ。具体的なシステム開発手法として、DAD(Disciplined Agile Development)やSCRUM、DSDM(Dynamic Systems Development Method)、カンバンなどを挙げている。

 ニーズの把握方法に、ビッグデータを意識したデータ分析が取り入れられたり、ステークホルダーを巻き込むにゲームの手法を利用したりすることにも見られるように、BABOK V3では、テクノロジーの変化や、それを利用するための方法論などを積極的に採用し、常に変化を先取ろうとする姿勢を感じるのは筆者だけだろうか。

 逆に見れば、欧米企業においても、昨今のモバイルやクラウドといったテクノロジーの登場と、それに伴う消費者/顧客ニーズの多用化を前に、企業活動を支える情報システム像を規定することが困難になり、ステークホルダーの意見を取り組みながら試行錯誤でなければシステムを構築できないという“手探り状態”にあるとも言える。

 いずれにせよ、経営ニーズに答える、あるいは企業を成長させるための仕組みにITを位置付けるのであれば、利用企業にとってBABOKを改めて精査してみることは決してムダにはならないだろう。

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