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百花繚乱のBIツール、最新事情を知るための5つのQ&A

2015年6月25日(木)田口 潤(IT Leaders編集部)

企業内外で発生する様々なデータを分析し、有意な何かを見いだすことの重要性は論を要しない。BI(Business Intelligence)ツールはそのためにある。だが、様々な製品が存在し、その形容詞も「アジャイルBI」や「データディスカバリー」「セルフサービスBI」など多様で、BIツール自体の分析が必要なほどだ。どう整理すればいいのか、米ガートナーの専門家の意見をQ&A形式で紹介する。

 業務アプリケーション領域のソフトウェアで最も多彩なジャンルの1つがBI(Business Intelligence)ツールだろう。ざっと挙げただけでもTableau、QlikView、Domo、Spotfire、SAP Lumira、PowerBI、Endeca、Pentaho、Yellowfin、MicroStrategy、SAS Visual AnalyticsやJMP、Cognos、BusinessObjectsなどがある。日本のDr.sumや、ひと味違うIBMのWatson Analyticsもある(図1)。

図1:様々な種類があるBI(Business Intelligence)ツール製品(出所:米ガートナー)図1:様々な種類があるBI(Business Intelligence)ツール製品(出所:米ガートナー)
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 これらの製品のベンダーから聞こえてくるのは、「アジャイルBI」や「データディスカバリー」「セルフサービスBI」「ビジネスアナリティックス」といった言葉。「インタラクティブBI」という表現もある。一体、何がどう違うのか、1つのツールで多くをカバーするのか、それとも使い分けが求められるのか、BIツールを巡る言葉や概念は分かりやすいとは言えない。

 一方で「Data Driven Business(データがビジネスを駆動する)」と言われる昨今、BIに関わる概念を整理・理解することは重要になる一方だ。「Excelで十分」といった考え方もあるにせよ、様々なツールが存在する事実そのものが「Excelでは不十分」であることを示しているからである。そこでBIとアナリティックスの専門家である米ガートナーのCindi Howson氏(リサーチ部門バイスプレジデント)に、5つの観点からBIツールに関する最新事情を聞いた。

Q1 アジャイルBI、データディスカバリー、アナリティックスなど、データの活用に関する様々な用語がある。これらは、きちんと定義され、使い分けられているのか。

A1 まず日本と米国、米国と欧州などで、それほど差があるわけではない。米国でも混乱があり、教育あるいは啓蒙活動が行われている段階と言える。それだけBIツールの進化があるということだ。

 だが(混乱の)原因の1つは、ベンダーが顧客の関心を引きつけるために、時々で用語や概念を使い分けることである。当然、誇張した表現もあるの。企業はベンダーがどういう状況で何について説明しているかを理解することが重要になる。ガートナーとしては定義しているが、まとまった形ではなくBIツールのサブカテゴリーのマジッククワドラントなどで説明している。

Q2-1 では、どう整理すれば正しく理解できるのか。

A2-1 データディスカバリーが相対的に上位に来る概念だ。そこには4つの要件、すなわち「アジャイルであること」「ビジュアルに優れること」「インタラクティブであること」「使いやすいこと」がある。言い換えれば試行錯誤ができることだ。

 ベンダー名を挙げながら説明すると、米Tableau SoftwareやスウェーデンのQlikTechなどの製品がこれに当たる。これらのベンダーは時に4つのうち1つだけを強調することがある。例えばアジャイルBIといった表現だが、これが混乱をもたらしている。

 データディスカバリーとは呼べないツールもある。米Domoのクラウドサービスが、その1つだ。SaaS(Software as a Service)なので実装が短期にでき、DWH(Data Warehouse)を構築しなくて済むツールだが、アジリティの面でデータディスカバリーの要素を満足しない。Domoは、データを分かりやすく表示するダッシュボードを提供する製品であり、エグゼクティブ向けに適したツールだ。

 もう一つ、データディスカバリーではないBIツールの例は、米IBMのCognosや米OracleのBI EEである。これらは業績報告などレポーティング向けのトラディショナルなBIツールである。

Q2-2 ところでセルフサービスBIは、どうか。

A2-2 セルフサービスBIには2つのタイプがある。1つはIT部門が介在せずに、利用者自身がデータを取り出し試行錯誤しながらモデルを作っていくものだ。データディスカバリーのBIツールがこれに相当する。もう1つはIT部門がデータモデルを用意し、利用者にとって使いやすいものを提供する。完全なセルフサービスにはならないが、一部がセルフサービスになる。

Q3 後者をセルフサービスと呼ぶには無理があるように思えるが、それはともかく、今後はデータディスカバリーのBIツールが主流になるのか。

A3 市場規模で言えば、トラディショナルなBIツールが大きく、データディスカバリー型はまだ小さい。企業が導入しているBIツールの多くはトラディショナルな製品が占めてきたからだ。しかし現在では、その成長はほとんどないか、縮小傾向にある。これに対し、例えばTableauは年率70%、QlikTechは同20%と速いペースで成長している。トラディショナルBIに依存するレポーティングの需要が小さくなった分、データディスカバリーBIが大きくなっているのだ。

 トラディショナルBIの主な用途は、IT部門が定型レポートを作成したり財務データを公式に生成したりことだが、絶対的な比率がどうなるかはともかく、その必要性は相対的に小さくなっていく。

 ただ間違えてはいけないのは、1つのツールですべてができるわけではないことだ。企業の中には「BIツールを全面的にデータディスカバリー型に移行する」という企業もあるが、ガートナーは推奨しない。それは無理だし、やったとすると混乱を引き起こす。正しくないデータで、正しくない意思決定をする恐れがある。

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