[イベントレポート]

インタークラウド提供に向けて、サービスプロバイダーの準備着々

エクイニクス ジャパン・ピアリング・フォーラム2015

2015年11月2日(月)鈴木 恭子(ITジャーナリスト)

「GO CONNECT!」――IoT(Internet of Things) やモバイルの急速な普及で増大するネットワークトラフィックを高速・安全・コストパフォーマンスよく処理するうえで、インターコネクト(相互接続)の役割がいっそう重要になる。今年の「ジャパン・ピアリング・フォーラム2015」では、GO CONNECT!をテーマに、企業の最新かつ高度なニーズに応えるべく、インターコネクト、さらにはインタークラウドの提供に向かうサービスプロバイダー各社が、ピアリング(Peering:相互接続)の技術トレンドやそれぞれの取り組みを語った。

「使命はグローバルでビジネスをつなぐこと」

 2015年8月25日に都内で開かれたピアリング・フォーラムは、インターネットエクスチェンジ(IX)/データセンターサービス事業者の米エクイニクス(Equinix)がグローバルで展開するインターネットネットワークをメインとしたコンファレンスだ。日本開催でのホスト役をエクイニクス・ジャパンが毎年務めている。

写真1:エクイニクス・ジャパン代表取締役/エクイニクス 北アジア統括の古田敬氏

 同社代表取締役でエクイニクス 北アジア統括の古田敬氏(写真1)は、今年のテーマである「GO CONNECT!」の意味について、「原点回帰の意志を込めた」と説明。「我々の強みはインターコネクトだが、日本ではその効果が見落とされがちだ。IoTやビッグデータは、ネットワーク上で異なる機能が相互接続される。我々はそうしたインターコネクション時代をどのように支えられるか、命題として考えていきたい」と語った。

 エクイニクスと言えば、2015年9月8日に東京都品川区に本社を置くデータセンターサービス事業者のビットアイルに対して株式公開買付け(TOB)を実施すると発表して話題を呼んだ。現在、同社は世界100カ所以上にデータセンターを所有し、5大陸15カ国33都市でグローバルにサービスを展開している。世界のティア1キャリアやネットワーク、ISPにアクセスが可能であり、インターコネクション数は16万を超える。実際、世界のインターネットルートの90%超が同社のインターネットエクスチェンジ(IX)を通過しているという(図1)。

図1:エクイニクスが提供しているインターコネクトサービス(出典:エクイニクス・ジャパン)

クラウドはIT部門とSIerのあり方を変革する

 コンファレンスの開幕が宣言された後、グローバル市場にチャレンジする企業として、サイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏(写真2)が登壇。「国産PaaSのグローバルチャレンジ」と題した講演を行った。

写真2:サイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏

 サイボウズが提供する「サイボウズOffice」や「ガルーン」といったグループウェアは、国内6万社以上の導入実績を有し、グループウェア市場の約30%を占める。1997年の発売当初はパッケージ版のみでの提供だったが、2011年11月からはクラウド版の提供も開始。堅調に導入企業数を伸ばしている。

 しかし、青野氏には苦い経験がある。2001年、国内での導入実績を武器に米国での販売を試みたものの、グループウェアに対する利用文化の相違で売上げが伸びず、4年余りで米国市場から撤退したのだ。青野氏は、「日本とは情報共有に対する考え方が違った。いつ解雇されるか分からない米国では、上司にもスケジュールを公開しない」と当時を振り返る。

 そこで新たなチャレンジの武器としたのが、クラウド上でさまざまな業務アプリを開発できるミドルウェアの「kintone」だ。同製品の特徴は、アプリの開発工数を劇的に削減できることである。開発しながら実際に利用し、フィードバックを繰り返しながらブラッシュアップすることをコンセプトにしており、日本のSIerの多くが採用しているウォーターフォール型開発とは一線を画す。

 青野氏は、「要件定義に始まり、価格交渉、仕様書作成、ハード/ソフトの手配といったプロセスは一切必要ない。ウォーターフォール型開発の場合、要件定義から利用開始まで1年近くかかる。これではグローバルビジネスのスピードについて行けない」と指摘する(図2)。

図2:従来の業務フローとこれからの業務イメージ。青野氏は「クラウド上でさまざまな業務アプリを手軽に開発できれば、業務そのもののフローも大きく変化する」と説明(出典:サイボウズ)

 kintoneには業務に必要となる「データベース」「ワークフロー」「コミュニケーション」の3機能がセットで提供される。ユーザーは特別なプログラミングスキルがなくても、用意されているパーツをドラッグ&ドロップするだけで簡単にアプリを開発できる。こうした開発が主流になれば、SIerのあり方も企業の情報システムの役割も大きく変わると、青野氏は訴える。

 「企業のIT部門は『こんなアプリが使ってみたい』と思ったら自分で試作できる。SIerも顧客の要望を聞きながらkintoneを使って対面でモックアップを作成するといった効率的な開発が可能になる。さらに、アプリを“納品”ではなく“継続開発”することで顧客とのパートナーシップを継続的に構築できる。これにより、顧客は長期にわたって使いやすいシステムを適切な料金で運用できる」(青野氏)。

 こうしたシステムは、グローバルでも高く評価されている。「文化依存が少ないミドルウェアであれば、勝負できる」という青野氏のもくろみは当たり、kintoneは中国市場でガルーンとの合計で500社の契約を獲得した。

 なお米国でも大手グローバル企業を含む30社でkintone導入が決定しているという。 最後に青野氏は、「既存の開発手法からの変化は痛みを伴い、プレーヤーが入れ替わる可能性もある。(kintoneのような)クラウド上で業務アプリを開発することが当たり前になれば、日本のソフトウェアベンダーがグローバルに活躍する日も近いかもしれない。 我々がその先頭に立てれば嬉しい」と語り、講演を締めくくった。

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