建設大手の竹中工務店は今、「新しい建築の創り方」を追求している。建設案件が増加する一方で、十分なスキルを持った技術者の現象が深刻化する中、顧客ニーズに素早く的確に対応しつつ生産性を高めなければならないからだ。そのために活用を進めるのが、iPad/iPhoneを使った関連部門をまたがる“スマートワーク”である。
「建設という“ものづくり”は一品生産。建物も建設現場も毎回異なり、同一条件で繰り返すということがない。常にプロジェクトチームによる取り組みだ。このチームの協業をITで支援することが、新しい建築につながっていく」−−。竹中工務店のグループICT推進室でシステム企画・整備1グループ長を務める森 康久氏は、同社が推進する“スマートワーク”におけるITの位置づけをこう話す。
増える建設需要、減る熟練技術者
竹中工務店がスマートワークを推進する背景には、建設需要が増える一方で、熟練の技術者不足が深刻化しているという現実がある。震災からの復興需要に加え、2020年の東京オリンピック開催などが重なる。加えて、今後の大地震に備えた耐震工事や立て替えなどもあり、建設需要は旺盛だ。しかし、熟練技術者の高齢化や少子化による技術者そのものの減少など、人材不足は深刻化するばかり。「生産性の向上は喫緊の課題」(森氏)である。
そこに、冒頭で森氏が指摘するように、建設現場特有のプロジェクトチーム制の課題がある。例えば、建物の企画・提案から設計、施工までは、対顧客は営業部が窓口だが、設計部と現場の指揮所となる作業所との連携が不可欠だ。竣工後のアフターサービス段階では、専任の「FM(ファシリティマネジメント)部/同センター」が窓口になる。また、それぞれの過程で、協力会社や多数の機器メーカーとも連を図らなければならない(図1)。
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なかでも作業所の担当者は、複数の作業現場と事務所の間を行き来しながら、現場では施工内容や進捗の確認などを、事務所では報告書や会議資料の作成といったデスクワークをこなす。しかも、その作業所は建設現場ごとの仮設施設である。立ち仕事も多い作業所を含めた働き方の改善に向けては、モバイル環境の整備が欠かせない。
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