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NTTデータ、インディカーレースでウェアラブルの実証実験

2016年2月1日(月)杉田 悟(IT Leaders編集部)

ウェアラブルデバイスには、Google Glassのような眼鏡型のものやApple Watchのような腕時計型のもの、FUELBANDに代表されるリストバンド型のものなどがある。最近は、シャツや肌着がウェアラブルデバイスとして活用される例も出てきている。NTTデータが、そのシャツ型ウェアラブルデバイスを使った実証実験を行っている。その舞台は、米国のカーレースの最高峰、インディカー・シリーズだ。

 2015年に行われたインディカー・シリーズの6月から8月のレースで、シャツ型ウェアラブルデバイスの実証実験は行われた。レースに参加しているドライバーにウェアラブル機能が付加されたアンダーシャツを着てもらい、レース中のドライバーの身体能力や運動状態を可視化する試みだ。

 NTTデータ(米NTT DATA)がスポンサーを務めるインディカー・シリーズは、最高時速が235マイル(時速 約378km)に達するという米国におけるカーレースの最高峰とされるシリーズだ。平均時速でも優に200kmを超えるという過酷な環境下で、ドライバーがどのような状態にあるのかを、ウエァラブルデバイスから生体情報を収集して計測・分析する。今回の実験に協力した、Team GanassiのドライバーTony Kanaan氏は、インディカー・シリーズの年度チャンピオンにも輝いたことのあるブラジル人のトップドライバー。

 実験で使われたアンダーシャツ型ウェアラブルデバイスには、NTTが東レと共同開発した機能繊維素材「hitoe」の技術が使われている。hitoeは、電気を通す高分子化合物である導電性高分子を、マイクロファイバーよりも細いナノファイバーニットに塗り込むように含浸させた生地。着るだけで様々な生体情報を収集するセンサーとしての役割を果たす。

 ドライバーのアンダーシャツは、耐熱性素材であることが条件となっているため、今回の実験では可燃性のhitoeは使えず、耐熱性素材でhitoe技術ベースのセンサーを作成した。これで、ドライバーの生体情報を取得することに成功している。取得したデータは、シャツに貼りつけられたトランスミッターを介してピットに設置したサーバーに随時送られる仕組みとなっている。

 今回の実験で取得に成功したのは、心電波形と筋電。心電波形から車の振動などのノイズを取り除くと、心拍数と心拍間隔などが算出できる。実験では、ドライバーの心拍数は開始後から急激に上昇し、周回中は、激しい運動を行っている時と同レベルの高い心拍数を維持していた。また、減速から停止にかけての心拍数は、より大きく上がることがわかった。つまり、減速時の方が、身体への負担が大きいという結果になった(図)。

(図)スタート、周回中、減速までの心拍数を図ると減速時に最も高くなることがわかった
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 また、コースを1周する中で、ピットからの合流があるコーナーでの平均心拍数が高く、緊張度が高まっていることもわかった。

 筋電は、筋肉の活動電位を記録したもので、筋肉の収縮状況がわかる。楕円形の「オーバルコース」を高速走行する場合、コーナーに差し掛かると車とドライバーには外向きに大きな重力(G)が働くが、実験でも外方向の力に抗してハンドルを切る動作と連動して、筋電位による筋肉の収縮が見られたとしている。この結果から、ドライバー自信が耐G行動をとっている可能性が考えられるという。

 耐G行動とは、横にかかるGに抗して筋肉を収縮させて姿勢を維持する行動、あるいは右下半身に偏ろうとする血液の動きを、筋収縮により抑制する行動のことだ。

 NTTデータは、引き続きインディカーでの生体情報の取得を行い、計測データの精度を高めていくほか、車体の情報も合わせて収集し、分析していく考えだ。実験から得られた結果は、ドライバーやレーシングチームにフィードバックされ、より効果的な身体トレーニングへ活用していく。

 また、今後ルーキードライバーの情報も取得し、ベテランドライバーと分析結果を比較、ベテランドライバーの暗黙知を定量的に示して、ルーキードライバーのスキルアップや事故防止につなげていきたい考えだ。

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