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Oracle Database新版でSoRのクラウド移行を促進、AWSへの対抗意識を前面に

2016年10月24日(月)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

日本オラクルは2016年10月24日、「企業システムのクラウド移行を支援する取り組み」に関する説明会を開いた。同社の中核商品である「Oracle Database」。最新版の「Oracle 12c Release2」が備えるクラウド環境に最適化した機能を使い、既存のOracleシステムのクラウドへの移行を提案する。説明会では、AWS(Amazon Web Services)のデータベース環境との価格性能比の違いを前面に押し出した。

 日本オラクルがクラウド環境への移行促進の対象に位置付けるのは、「既存のオンプレミス環境にあるSoR(Systems of Record)のシステム」(日本オラクル執行役副社長クラウド・テクノロジー事業統括の石積尚幸氏)。同システムの運用コストを引き下げ、削減分に相当する費用で「SoE(Systems of Engagement)のシステム拡大やSoRの仕組みの見直しなどへの取り組みを加速したい」(同)とする。

 既存のSoRとは、すなわちトランザクション処理を中心としたOracleデータベースを使ったアプリケーションだ。これまでのクラウド利用では、モバイル関連やEC関連のSoEが先行し、Oracleデータベースを利用するSoRは、データ管理の観点からもクラウド移行は敬遠されてきたといえる。

 これに対し石積氏は「日本のユーザー企業ではオンプレのニーズがまだ高いかもしれないが、競争相手である海外のユーザー企業は、SoRを含めクラウドへの移行速度を高めている。そのためのクラウドサービスが日本でも使えるのだから、その利用を支援したい」と話す。

 移行を提案する最大の理由は、「クラウドに移行したほうが運用費が下がる」こと。今回から、それを公言するのは、Oracleデータベースの最新版である「Oracle 12c Release2」において、クラウド環境での動作を優先する“クラウドファースト”を実現したからだ。具体的には、マルチテナント機能の実現である。

 マルチテナント機能を備えたOracle 12c Release2では、オラクルが「PDB(Pluggable DataBase)」と呼ぶ仮想データベースを、共有のコンピュータ資源上で多数、立ち上げられる。これによりDBサーバ−の統合に必要なプロセサ数が削減する。「同一のシステム環境であればDB数を5倍に、同じ性能を出すなら必要なメモリー容量を87.5%カットできる」(石積氏)とする。

米本社のデータベース・サーバー技術担当エグゼクティブVPのアンドリュー・メンデルソン氏米本社のデータベース・サーバー技術担当エグゼクティブVPのアンドリュー・メンデルソン氏

 加えて、Oracleデータベースは、ハードウェアやOS(基本ソフト)、さらにはAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureといったクラウドを含め、「いずれの環境で動作するため、データベースのポータビリティ(可搬性)が高い」(米本社のデータベース・サーバー技術担当エグゼクティブVPのアンドリュー・メンデルソン氏)ことも主張した。トランザクション処理を含めた、開発環境と本番環境の切り替えなどにも有効に働くとする。

「AWSはトランザクション処理に投資していない」

 今回の説明会では、AWS上のデータベース環境と比較してOracle 12c Release2の性能が高いことを重ねて強調した。例えば、AWS Auroraに対しオンライントランザクション処理では35倍、混合ワークロードで1000倍高速だというベンチマーク結果や、AWSが提供するデータベースはAWS上でしか動作しないこと、AWSのAurora、Redshift、DynamoDBのいずれもがオープンソースではないこと、などである。

 Oracle CloudにおけるOracleの性能が高いのは、「クラウドがデータベース処理に最適化されているため。他社のIaaS(Infrastructure as a Service)は汎用的でデータベースに最適化されていない」(メンデルソン氏)と説明する。トランザクション処理における拡張性に対しては「AmazonもMicrosoftも投資をしていない」(同)とも指摘した。

 SoRのクラウドへの移行促進策として、Oracle 12c Release2の提供形態の多様化も進める。同製品を組み込んだハードウェア製品Exadataにおいて、買取型のオンプレミス製品となる「Exadata Database Machine」のほかに、客先に設置するもののオラクルが管理しサブスクリプション型で提供する「Exadata Cloud Machine」と、クラウドサービスの「Exadata Cloud Service」がそれだ。

 現時点では、Exadata Cloud Serviceの入門版である「「Exadata Express Cloud Service」の提供のみだが、Exadata Cloud Serviceは11月から、Exadata Cloud Machineは12月から、それぞれ提供する予定である。

 その他の移行促進割くとして、オンプレミスでは有料で提供している移行時のテスト視点ツール「Real Application Testing(RAT)」をクラウド上では追加費用なしで提供するほか、マイグレーションのためのロードマップ作成といったコンサルティングサービスも強化する。

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