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[ベテランCIOが語る「私がやってきたこと、そこから学んだこと」]

次世代のIT部門のリーダーに向けて伝えたいこと

最終回

2017年4月3日(月)寺嶋 一郎(IIBA日本支部 理事長/元・積水化学工業 情報システム部長)

前回、前々回と、筆者の考えるデジタル時代を迎えたIT部門の向かうべき方向について考えてみた。いよいよ本連載の最終回を迎えるにあたり、次世代のITリーダーに向けてぜひ伝えたいことを書いてみようと思う。何かを読み取っていただければ幸いである。

 筆者は37年間の会社生活において、多くの先輩、同僚、そして部下から様々なことを学んできた。仕事だけではなく、生き方を含め多岐にわたる学びを得た。会社は貴重な学びの場でもある。連載の最後にあたり、こうした学びの中からリーダーとして仕事や組織運営に取り組む上で役に立つ考え方や心得などをお伝えしたい。

 会社で一番大切なリソースは社員という人間であることは論を要しないだろう。人間の集団が共通の方向を向いて仕事をしていくのが会社だとすれば、そのガイド役を務めるのがリーダ-の仕事である。少なくともリーダーとして事業を牽引し、部下を指導する上において、人間というものをよく知り、人間力をつけていくことは非常に大事なことだ。

 ITの仕事もITに閉じているわけではなく、多くの局面で人間力が問われる。要件定義を行う際に現場とどうコミュニケーションを取るか、ビジネス部門のリーダーをどう巻き込むか、ユーザーにシステムの変更をいかに納得してもらうか…。そんな時に人間力がものを言う。会議やブレーンストーミングをやる際に重要なファシリテーションも、基礎に人間力が必要だ。

 人間力を養うにはどうすればいいのだろうか。まずは人間とは何か、その本質を知らなければならない。最近シンギュラリティの議論の中で、人工知能が人間を超えるようになると言われるが、人間はロボットのような機械ではなく、感情を持ち、自由に思考する。各自が個性を持っており、ただひとりとして同じ人はいない。そして人は機械と異なり、無から何かを創造する力を持っており、無限に成長する可能性がある。それを引き出していくのもリーダーの仕事だ。

 以下、リーダーとしての心構えとして筆者が大事だと思うことをお伝えしていきたい。

自由で楽しい職場に

 どうせ仕事をするからには楽しくやりたいものだ。人生の総時間の中で人はどれくらいの時間を会社で使っているのか、かなりのウェイトを占めることは間違いない。嫌々ながら仕事をすることは人生の浪費である。特にデジタル時代は、イノベーションのための自由な発想が大事である。仕事は遊びではないので、きちんと実績を出すという緊張感は必要にしろ、わくわくして仕事ができる雰囲気は大切であり、それを作るのはリーダーの重要な仕事だ。

 そのためには、できるだけ良い人間関係を築けるようにしなければならない。特にIT部門はコミュニケーションが得意な人ばかりではないので、その努力を惜しむべきではない。気が合わなかったり嫌な相手は、誰にでもいるものだ。しかし他人は自分の鏡でもある。相手を嫌っていると必ず相手にも伝わり、関係は悪くなる。

 そうした嫌な人と付き合う際に、参考にしてもらいたい考え方がある。悪意を持って、おぎゃーと生まれてくる赤ん坊はいない。生きていく上で様々な経験をする中でマイナスの思い抱いていく。でも、ひょっとすれば自分も、その人のような環境に生まれ、同じ経験をしたならば、その人のようになっていたかもしれない…と考える。そう考えると、不思議に嫌な思いも和んでくる。

嫉妬心からの脱却

 “村社会”とも言われる日本の会社には、嫉妬や妬みがつきものだ。どうみても自分より能力も低いと思ってた相手が、先に出世してしまう。きっと上役におべっかを使ってのことだろうとか勘ぐり、ことあるごとに引きずり降ろそうとしたりもする。

 しかし考えてみてほしい、嫉妬する相手こそは、自分も頑張れば到達可能な人ではないだろうか。ある意味、自らが目標とする姿なのだ。自分の手の届かないような人には嫉妬なんかしないはずだ。そうだとすれば、嫉妬心は自分の理想像を否定してしまうことになり、その実現を妨げてしまう。

 嫉妬心がメラメラと燃え上がったら、その相手こそが自分の理想像ではないかと考えてみる。その上で、その人のそれまで見てなかった部分をよく観察してみよう。自分に足りない、学ぶべき何かがあれば、心を素直にして学んでいこう。きれい事に聞こえるかもしれないが、そうすることで理想に一歩近づけると筆者は思う。

 よく聞く話だが、部下に優秀なメンバーが入ってきたりすると、自らの地位が脅かされると考え、そうした部下を嫉妬し、いじめたりすることもあるという。能力のある部下も嫉妬するのではなく、部下からも謙虚に学びながら、自らの器を大きくしてどううまく使うかを考えるべきだ。

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