[五味明子のLock on!& Rock on!]

IBM & Hortonworks、Facebook & Microsoft - 加速するAI業界再編の動き

2017年9月12日(火)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)

2017年のバズワードNo.1となりそうな勢いのAI(Artificial Intelligece、人工知能)。当然ながらIT業界ではAI分野での主導権を握ろうとする動きがビッグベンダーを中心に加速している。注目したいのは、ひと昔前のように1社ですべてを牛耳ろうとするのではなく、お互いの得意分野を伸張するかたちの提携が目立っている点だ。今回はそうしたAI業界の流れを象徴する提携 - 日本IBMとホートンワークスジャパン、FacebookとMicrosoftの協業について紹介する。

IBMとHortonworksの戦略的提携~「1+1=2ではなく10倍以上の効果がある」

 日本IBMとホートンワークスジャパンは2017年9月5日、日本IBMの箱崎事業所においてビッグデータビジネスにおける両者の戦略的協業を発表した。これは今年6月に米サンノゼで開催されたHortonworks主催のビッグデータカンファレンス「DataWorks Summit 2017 San Jose」での発表(http://it.impressbm.co.jp/articles/-/14633)を国内でも開始するアナウンスである。概要を以下に記そう。

  • 日本IBMはデータ分析基盤として「Hortonworks Data Platform(HDP)」「Hortonworks DataFlow(HDF)」の再販/サポートを開始する
  • ホートンワークスジャパンはHadoop向けSQLエンジン「IBM Big SQL」とデータサイエンスの統合開発環境「IBM Data Science Experience(DSX)」の再販/サポートを開始する
IBMとHortonworksの提携の概要。それぞれの製品をお互いに販売およびサポートし、オールインワンなデータ分析基盤を両者が共同で提供するイメージだ
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IBM Data Science ExperienceはApache Sparkを梱包したデータサイエンスのための統合開発環境。IBM SPSSやDb2などIBMの既存環境との連携も容易。デフォルトの提供形態はクラウドで、オンプレミスを希望の場合は応相談となる
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 これに伴い、IBMは同社が開発してきたHadoopベースのデータ分析環境「IBM BigInsights」の提供を中止し、HDPおよびHDFを“IBMのデータ分析基盤”としてサポートしていくことになる。また、ホートンワークスジャパンはHDPにIBM DSXをバンドルすることで、“AIを含むオールインワンなデータ分析プラットフォーム”が提供可能となった。

日本IBM 執行役員 クラウド事業本部 クラウドソフトウェア&アナリティクス事業部長 三浦美穂氏

 日本IBM 執行役員 クラウド事業本部 クラウドソフトウェア&アナリティクス事業部長 三浦美穂氏は「IBMとHortonworksの提携は今回が初めてではなく、これまでも良好な関係を保ってきた。Hortonworksのデータ分析基盤はHadoopのデファクトスタンダード。データ分析における基盤となるレイヤーはHortonworksに任せて、IBMはその上のレイヤーであるデータサイエンスやAIといった分野にフォーカスしていく」と語っており、データアナリティクスにおける“選択と集中”に特化した結果の提携であることを強調する。

ホートンワークスジャパン 執行役員社長 廣川裕司氏

 一方、ホートンワークスジャパン 執行役員社長 廣川裕司氏は「今回の提携は“1+1=2”という単純なものではなく、10倍以上の効果を期待できる発表。その理由は3つある。両者ともそれぞれの分野でトップの技術力を持っていること、パートナーエコシステムが確立していること、そして両者ともコミュニティをリードしている存在であること。特にHortonwroksはApache HadoopやApache NiFiに2000人を超えるコミッターを輩出している。IBMにも多くのコミッターが在籍しており、両者で日本のコミュニティ拡大にもつなげたい」と語る。オープンソースを基盤にしたデータレイク構築を得意とするHortonworksと、「チームプレイでのデータサイエンス」(三浦氏)を強みにAI分野での主導権を取りたいIBM──。拡大を続けるAI市場で両者の“相互補完”のアプローチがどう活きるのか、引き続き注目していきたい。

FacebookとMicrosoftによる「ONNX」の成否はAI市場の行方を占う試金石

 Google、Facebook、Apple、Amazon、Microsoft──。ここ数年、ビッグデータやAIを含む最新技術トレンドはこの5つの巨大IT企業から生まれていると言っても過言ではない。9月7日(米国時間)、このうちの2つの企業 - FacebookとMicrosoft - がオープンソースをベースとした新しいAIエコシステムモデル「Open Neural Network Exchange(ONNX)」を発表した。

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