[事例ニュース]

ダイキンと日立、工場の熟練技術者の技能伝承にIoTを活用

2017年9月27日(水)杉田 悟(IT Leaders編集部)

売上高2兆円以上、海外売上高比率75%という、日本の製造業を代表するグローバル企業であるダイキン工業。同社の抱える大きな悩みのひとつが、技術者の育成がグローバル拠点の急拡大に追い付いていないことだ。グロバールでの技能伝承をIoTを活用して行おうという試みが、日立製作所の協力で行われようとしている。

ダイキン 米田裕二氏

 2017年9月26日、東京・丸の内の日立製作所本社で行われた説明会では、ダイキン テクノロジー・イノベーションセンター長の米田裕二執行役員、日立 産業・流通ビジネスユニット産業製造ソリューション本部の森田和信本部長が、ダイキンの空調機の製造現場ノウハウをデジタル化し、技能伝承につなげるスマート工場の取り組みを説明した。森田氏はビジネスユニットごとに設けられたIoT/デジタルビジネス責任者であるCLO(Chief Lumada Officer)も兼任している。

日立 森田和信氏

 今回両社が「協創」の一環として取り組むのは、製造現場における熟練技術者の技能伝承をデジタル技術により実現する次世代生産モデルの確立。

 グローバル生産拠点が90カ所以上を数え、海外売上高比率が75%に達するダイキンでは、2001年から空調機関連技能を伝承するマイスター制度を開始、技能の底上げを行い、世界同一品質を目指してきた。しかし、部品の外注化、生産ラインの自動化が進むことで従業員の技能習得機会が減少、急激なグローバル化進展により技能者が不足するという課題を抱えることになった。

 そこでダイキンと日立は、3M(Man、Machine、Material)データをベースとしたセンシング技術と日立のIoTプラットフォーム「Lumada」のソリューションコアである画像解析技術を技能伝承、人材育成に活用することにした。

 具体的には、滋賀県草津市のダイキン滋賀製作所に、空調機製造における「ろう付けプロセス」で熟練技術者と訓練者の技能をデジタル化し比較・分析することができる「ろう付け技能訓練支援システム」を、2017年10月から共同実証として導入する。ろう付けは、接合する部材よりも融点の低い合金を溶かして接着剤として用いることで、母材自体を溶解させずに接合する技術。

 ろう付け熟練技術者の手の動きやトーチの角度、単位時間当たりに変化した角度である角速度などの動作や母材の温度変化をサーモカメラやCCDカメラ、KINECT、アイトラッカー、各種センサーなどを用いて時系列に収集・デジタル化、標準動作モデルを構築する。一方で、訓練者がろう付け作業を行う際の所作を収集・デジタル化し、標準動作モデルと統計的に比較、ろう付け作業の定量的な評価を可能にする。

ろう付け技能訓練支援システムの概要

 ダイキンでは、国内の工場を世界90以上の生産拠点のマザー工場として位置付けており、滋賀工場での共同検証の結果をもとにグローバルでの技能伝承、技術者育成、世界同一品質につなげていきたい考えだ。

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