[オピニオン from CIO賢人倶楽部]

CIOとIT部門のありかたを考える

2017年11月6日(月)CIO賢人倶楽部

「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システムの取り込みの重要性に鑑みて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見を共有し相互に支援しているコミュニティです。IT Leadersは、その趣旨に賛同し、オブザーバとして参加しています。同倶楽部のメンバーによるリレーコラムの転載許可をいただきました。順次、ご紹介していきます。今回は、元本田技研工業の有吉和幸氏のオピニオンです。

 会社を定年退職して約3年半、筆者は今、CIO賢人倶楽部のアドバイザーとITコンサル業(個人事業主)をしている。会社にいた現役時と退職後での一番の変化点は、各社のIT戦略に対する興味だ。会社にいたときには、IT戦略を

  1. 経営目標を理解する
  2. ありたい姿を描く
  3. 現状(環境変化や内部の実力)を分析する
  4. 現状とありたい姿の差を認識する
  5. 差を解消するための戦略目標とIT施策を決める
  6. PDCAを回す

というステップで実行してきた。

 経営サイドとの間では、特に“ありたい姿”と“課題認識”が合っているかを軸にIT戦略を議論し、評価した。セミナーや講演会、書籍などの情報が良い情報かどうかの評価も、現役の時は経営課題の解決に役立つか、経営との相互理解にロジックを使えるか、が主だった。会社を離れた今は、セミナーなどに登壇する企業の課題認識とIT戦略、戦術がどのようなストーリで構築されているかに関心がある。企業内IT部門は課題から考えるが、コンサルティング会社やITベンダーは技術適用(手段)から考える──これに似ているかも知れない。

 それはさておき、今回は“CIOとIT部門”の役割について考えたい。現役のIT統括をしていた時、筆者はCIOとIT部門長の役割は違うと考えていた。簡単に言うとCIOは経営側に軸足を置き、経営課題の解決に向けたIT戦略を考え、IT部門を監視することを主たる役割とする。これに対しIT部門長は現場に軸足を置き、その困りごとをシステムで効率的に解決する役割を負う。ただしHondaは三現主義(現場・現物・現実)の会社なので現場側に軸足を置いており、CIO的なトップダウンの施策展開には向いていない。現場の効率化などシステム化効果の結果として、経営目標が達成されるという考え方を採ってきた。

 しかし海外ビジネス拡大への要請が強まり、それに合わせて海外の地域同士を連携させるようになると、グローバルオペレーションの効率向上が経営上の重要課題となった。それまでの地域最適で構築してきたシステムが全体効率向上の阻害原因になったのだ。この課題については現場が困っているわけではないため、ボトムアップのアプローチでは解決できないというジレンマが発生した。

 このケースに限らず近年、ITの関与する領域が急激に広がっている。経営資源は人・モノ・金+情報と言われるが、デジタル化に伴って人・モノ・金もデジタル情報として管理される。このためすべての企業情報、IoT(スマート工場やつながる車)の情報、SNSのデータなどを扱う情報基盤を、全体最適の視点で強化しなければならない。情報セキュリティの強化は言うに及ばずである。

 言い換えれば、地域毎に最適なSCMシステムなどを構築しても、それだけでは真のグローバルオペレーションの実現は困難で、経営スピード向上にはつながらない。データマネジメントとそのガバナンスなども含め、新しいITの役割が必要となった。こうした変遷の結果、IT部門は“グローバル”を現場と捉え、軸足を“グローバル”に移し、課題を“真のグローバルオペレーションの実現”と考えることで、現場(個別)最適を全体最適として考えるようになった。そうなればIT部門長の役割はCIOと変わらなくなる。筆者にも以前のようなこだわりはなくなった。

 次々と新しいソリューションやIT技術が登場する今日、経営もITの重要性を理解するようになり、ITを取り巻く環境は大きく変わった。“攻めのIT”、“デジタルトランスフォーメーション”といった言葉はその象徴である。

 となれば今日のCIOやIT部門長の役割は明確である。IT組織を過去からの組織形態の延長線上で運営するのではなく、経営課題解決のためのIT組織の在り方(役割)をゼロベースで考え、ありたい姿に基づいて編成することだ。まず明確な目的があり、次に実行するための組織があるというストーリーは変わらないのだから。

元本田技研工業株式会社
有吉 和幸

※CIO賢人倶楽部が2017年11月1日に掲載した内容を転載しています。

CIO賢人倶楽部について

大手企業のCIOが参加するコミュニティ。IT投資の考え方やCEOを初めとするステークホルダーとのコミュニケーションのあり方、情報システム戦略、ITスタッフの育成、ベンダーリレーションなどを本音ベースで議論している。
経営コンサルティング会社のKPMGコンサルティングが運営・事務局を務める。一部上場企業を中心とした300社以上の顧客を擁する同社は、グローバル経営管理、コストマネジメント、成長戦略、業務改革、ITマネジメントなど600件以上のプロジェクト実績を有している。

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