[松岡功が選ぶ“見逃せない”ニュース]

2017年11月の3本:日本マイクロソフトが「Azure Stack」を本格展開/富士通とレノボがPCで合弁事業/国内コグニティブ/AI市場をIDが予測

2017年12月7日(木)松岡 功(ジャーナリスト)

2017年11月のニュースから松岡功が選んだのは、「日本マイクロソフトが『Azure Stack』を本格展開」「富士通とレノボがPCで合弁事業」「国内コグニティブ・AIシステム市場をIDC Japanが予測」の3本である。“見逃せない”理由と共に、それぞれのニュースのポイントをお伝えする。

日本マイクロソフトが「Azure Stack」を本格展開

 日本マイクロソフトが2017年11月28日、自社パブリッククラウドの機能をオンプレミスで利用できる「Azure Stack」の日本での本格展開について記者説明会を開いた。

 Azure Stackは、マイクロソフトのパブリッククラウドサービス「Microsoft Azure」の機能をユーザーがオンプレミスで利用できるようにしたハイブリッドクラウド対応の基盤ソフトウェアである。

 具体的には、AzureのIaaSおよびPaaSの機能、ネットワークコントローラやストレージコントローラ、ロードバランスなどのサービス群をオンプレミス環境で利用できる形だ。マイクロソフトではAzure StackをAzureの「拡張機能」と位置付けている。(図1)

(図1)Azure Stackの位置付け
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 対応するハードウェアは、デルおよびEMCジャパン、日本ヒューレット・パッカード、レノボ・ジャパンが9月から出荷しており、シスコシステムズ、アバナード、ファーウェイ・テクノロジーズ・ジャパンも順次提供していく予定だ。

 そして今回の発表会で、対応パートナーとしてソフトウェアベンダー(ISV)15社、マネージドプロバイダー4社、システムインテグレータ21社を明らかにした。(図2)

(図2)Azure Stack対応パートナー
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[選択理由]

 Azure Stackが本格展開されるようになったことで、日本でもマイクロソフトのクラウド基盤を利用したハイブリッド環境の普及が加速するとみられるからだ。

 Azure Stackの主な特徴は次の4つ。1つ目は「共通のID」。マイクロソフトの「Active Directory」とシームレスに連携してシングルサインオンが可能だ。2つ目は「統合された管理とセキュリティ」。これにより、インフラ全体を可視化できるようになる。3つ目は「一貫性のあるデータプラットフォーム」。データベースをシームレスに連携可能だ。

 そして、4つ目が「統合された開発とDevOps」。クラウドとオンプレミスによる統合開発環境でアプリケーションを構築できることを挙げ、「この点がハイパーコンバージドインフラとの差別化ポイントだ」と強調していたのが印象的だった。オンプレミス環境でシェアの高いマイクロソフトならではの戦略といえそうだ。

富士通とレノボがPCで合弁事業

写真1:発表会に臨む富士通の田中達也社長(右)とレノボのヤンチン・ヤン会長兼CEO

 富士通と中国レノボグループが2017年11月2日、PCの合弁事業を進めることで合意したと発表した。富士通の100%子会社である富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の株式51%をレノボに、同5%を日本政策投資銀行(DBJ)に売却するもの。売却時期は2018年度第1四半期(2018年4~6月)の予定だ。

 これにより、富士通のFCCLへの出資比率は44%となり、PC事業は連結対象から外れる。売却額は280億円で、そのうちレノボが255億円、DBJが25億円となる。従って、FCCLはレノボ主導となるが、社名や経営陣、製品ブランドには変更がなく、工場を含めた従業員の雇用も維持されるという。

 商流については、法人向けは従来通り富士通経由で、サポートも富士通が行う。また、国内の個人向けはFCCLが販売・サポートを行う形となる。

[選択理由]

 PC市場の変化に伴うIT業界の大きな合従連衡の動きとしてチェックしておくべきだと考えたからだ。

 協業内容を見て印象深く感じたのは、レノボがFCCLに51%を出資して経営の主導権を握ったものの、現存する富士通のリソースをそのまま活用する形をとったことだ。富士通にとっては、レノボの強みを取り込みながら自社ブランドの製品・サービスとして事業を継続できる形となる。

 さらに、両社の協業は今回のPC合弁事業が軌道に乗れば、PC以外のシステム事業にも広がっていく可能性もあるのではないか。というのは、システム事業をコアとする富士通に対し、レノボもこのところデータセンター向け事業に注力しているからだ。富士通にとってもレノボはシステム事業でも中国およびグローバル展開の力強いパートナーになり得るのではないか。今後の動きに注目しておきたい。

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