[市場動向]

人材管理にこそ“データドリブン”の発想が必要だ──Cornerstoneに聞く「傾向と対策」

2018年1月16日(火)末岡 洋子(ITジャーナリスト)

従業員が自身の成長を実感しモチベーション高く仕事に臨める環境をいかに整えるかは、企業が持続的成長を遂げるための礎となる。もっとも、一人ひとりの思いやスキル、適性は異なるので、企業規模が大きいほどキメ細やかな人事施策が難しくなる。ここで、キャリアプランの策定や学習機会の提供にデータを最大限に活かすアプローチで注目されているのが人事クラウドサービスを展開するCornerstone OnDemandだ。同社幹部のJason Corsello氏に、人材管理を巡る昨今の市場動向や同社の戦略を聞いた。

 キャリアに関わるデータから、より多くのビジネス価値を──。ここで一役買うのがAIだ。土台になっているのはCornerstoneが2014年に買収したEvolvのテクノロジーである。ビッグデータを対象とする機械学習プラットフォームとして地歩を築いてきたそれは、独自の予測モデルやアルゴリズムなどに定評がある。Cornerstoneに日々蓄積されるデータを基に学習を重ね、従業員それぞれに個別最適化したキャリア施策をより精度の高くリコメンドすることに寄与する。「目下、ラーニングだけでなく全製品への組み込みを進めているところ。当社のソリューションを利用することで、ユーザー企業は無意識のうちにAIの恩恵を受けることができる」(Corsello氏)。

 雇用の先読みが難しくなる中、人材の流動性が激しい米国では、トレーニング環境が就職先を決定する時に重要な要素になっているそうだ。「報酬や待遇は? 上司や管理職がどんな人か? もちろんそうした条件も検討材料になるが、そられにも増して、トレーニングとそれがもたらすキャリア開発、つまり“自分磨き”の場がどれだけ充実しているかを重視する傾向が強まっている」とCorsello氏。先述のWendy'sもそうだが、企業が福利厚生の一貫としてトレーニング環境をより洗練させることが企業の魅力を高めるという観点が重要性を増している。

人事施策がすべての競争力の根源にある

 Corsello氏はこれまで何度も来日しており、日本市場にも鋭い観察眼を持っている。国内では、アサヒグループホールディングスがCornerstoneのSuccession(後継者育成)を活用して次期管理職の育成に役立てるなどの事例が出てきているものの、総じて動きが鈍いと指摘する。「米欧では人事関連の戦略も実行もデータに基づいて取り組んでいるが、日本は後手に回っており概して意思決定プロセスが遅いように感じる。少子高齢化が進む中で、経営資源としての人材にもっとフォーカスしなければならない。定年や転職などで会社を辞める人のスキルをどうやって埋めるのかなど、根本的な問題の理解が浅いのかもしれない。同じように人事テックで遅れをとっていた中国だが、最近は日本より動きが活発だ」という。

 同氏はもう一つ、日本企業の特徴を指摘する。「本社で集中管理しようとの考えが希薄で、例えばグローバル企業の場合に海外子会社などの拠点ごとに人事施策も、もっといえばビジネスの力点の置き方などについても権限を委譲しているようなケースが少なくない。その結果、どんな人材を必要としているのか、現状でどこにどんなスキルの持ち主がいるのか、といったことが一元的に把握しにくくなっている」。こうした状況に照らし、Cornerstoneでは支社や海外子会社と本社が違うやり方でビジネスを運営しつつも、キャリアに関わる全てのデータを統合的に把握する柔軟性を持たせているという。「特定のスキルを持つ北米の人材と、日本で同じ立場にある人材とを関連付けるなど、全体的な視点で配置を可視化し最適化に向けた検討ができる」(Corsello氏)。

 日本市場のニーズを受けて進めている取り組みとしてはモバイル対応も挙げられる。都市部では通勤に電車を使うのが一般的で、しかも行き帰りに相応の時間がかかるというビジネスパーソンが少なくない。その隙間時間を有効活用したいというニーズがかねてからあり、特にスマートフォンを使ってラーニングに充てたいという声が根強いことからモバイル対応を加速させている。

 このように地域特性も考慮しつつ、さらにテクノロジーの進化に合わせてソリューション全体の機能強化を図っていくのが基本方針だ。例えば、AIの延長線上で対話的UIに取り組んでいくことはその一つで、音声やチャットによる操作を可能にしていくという。また、トレーニングではVRの採用も積極的に進めていくとのことだ。

 デジタルトランスフォーメーションが声高に叫ばれ、ともすると斬新な事業モデルなど目に触れやすい部分ばかりが取り沙汰されるが、すべてのビジネスは人が動かしている。だからこそ企業は従業員にもっと敏感である必要がある。Corsello氏はこう締めくくる。「人事の仕事は変化している。どこにどんな人材がいるのか──パフォーマンスが良い社員は誰か? 離職しそうな社員は誰か? など──を理解し、ギャップを埋めるスピードこそがものをいう。外部から人を起用するのはコストもリスクも高い。これからは社内にいる従業員の管理がもっと重要になる。企業はデータ主導型のトレーニングやスキル開発に今まで以上に投資するようになるだろし、そうでなければ熾烈な競争に勝つことはできないだろう」。
 

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