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AWS大阪ローカルリージョンが開設、2018年2月13日から利用可能に

2018年2月13日(火)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)

アマゾン ウェブ サービスジャパン(以下、AWSジャパン)は2018年2月13日、国内では2つめのリージョンとなる「AWS大阪ローカルリージョン」の開設を発表した。バックアップやディザスタリカバリなどの用途で東京以外にもリージョンをというエンタープライズユーザーの声は根強く、そうしたニーズに応えるものとなる。

 大阪ローカルリージョンの開設に関しては、2017年5月に行われた「AWS Summit Tokyo 2017」の基調講演においてAWSジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏が2018年中のローンチを発表(https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/event/1062877.html)していたが、提供開始時期や料金などは明らかにされていなかった。グローバルでも初となるAWSの“ローカル”リージョンの突然のローンチ発表の背景では何が起こっているのだろうか。

2017年5月のAWS Summit Tokyo 2017でアナウンスされた大阪ローカルリージョンがついに開設へ
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 2月13日より提供が開始されたAWS大阪ローカルリージョンは、東京リージョンなどと同様に単一のデータセンター内に他のリージョンから完全に独立したインフラ(APIエンドポイント含む)を備えている。ただし、ローカルリージョンは既存のリージョンを補完する存在であるため、他のAWSリージョンと契約していることが利用の条件となる。大阪ローカルリージョンの場合であれば、東京リージョンをすでに利用しているユーザーが対象となる。

 また、東京リージョンは全部で4つのアベイラビリティゾーン(AZ)で構成されており、それぞれのAZが独立した電源や冷却システム、物理セキュリティを備える一方で、1つのAZに障害が発生した場合には他のAZによって迅速なフェイルオーバーが可能となるよう、地理的に適切な距離を取って位置している。しかし大阪ローカルリージョンは当面、単一のアベイラビリティゾーンのみの提供となっており、東京から約400km離れているという地理的な条件を活かし、特定のアプリケーションワークロードを十分に離れた場所でも稼働させるというニーズに特化したといえる。例えば、東京リージョンで稼働中のデータベースやERPなどの本番環境を、ディザスタリカバリを考慮し、地理的に十分に離れた場所にある大阪まで含めて設計/運用するといったユースケースも可能になる。なお、AWS大阪ローカルリージョンで提供されるサービスには

  • Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)
  • Amazon Simple Storage Service (Amazon S3)
  • Amazon Relational Database Service (Amazon RDS)
  • Amazon Elastic Block Store (Amazon EBS)

などが含まれている。

 大阪ローカルリージョンはAWSのグローバルにおいても最初のローカルリージョンとなる。すでに世界各地に18のリージョンをもつAWSだが、既存のリージョンを補完する存在となるローカルリージョンを最初に日本に開設した背景には、日本のユーザー数、とりわけエンタープライズユーザーの数が大きく伸びており、彼ら彼女らの強い要望であった「東京以外にもディザスタリカバリサイトを構築できる環境を」という声を無視できなくなったことが考えられる。

 2018年1月現在で日本の顧客数は10万を超えているが、2011年の東京リージョン開設以来、その成長を支えてきたのはエンタープライズユーザーであることは疑いない。そして「東京以外にもリージョンを」という要望はここ数年、バックアップ施設を国内に置く必要がある金融機関など規制の厳しい業界を中心に強く上がっていた。他のリージョンとは物理的に独立しながらも、あくまで既存のリージョンの延長線上にある存在 - AWSにとってもある意味、実験的な取り組みともいえるローカルリージョンが大阪で成功し、金融や製造などエンタープライズユーザーによる基幹システムのクラウド移行がさらに進めば、他のリージョンにもその影響が及ぶ可能性は十分にある。

大企業からスタートアップまで、すでに10万を超えるユーザー数を誇るAWSクラウド。とくに目立つのが金融や製造業など大規模エンタープライズの事例で、こうしたユーザーから大阪ローカルリージョンへの要望が強く上がっていた
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 また、今回のAWSの発表に先んじて、Googleが2月5日に大阪GCPリージョンの開設(https://cloud-ja.googleblog.com/2018/02/Osaka-GCP-region-open.html)を明らかにしている。こちらは2019年のローンチが予定されているが、すでに東京と大阪にデータセンターを構えるMicrosoft Azureも含め、エンタープライズにおけるパブリッククラウドのシェア争いは近年激化中だ。もちろんエンタープライズクラウドにおいては、国内/グローバルともにAWSが圧倒的な優位を誇るが、マシンラーニング/ディープラーニングやブロックチェーンなどの分野でAWSがGCPやAzureの勢いに押される場面も少なくない。王者としての絶対的な力量を示すためにも、そして国内エンタープライズクラウド市場をさらに拡大させるためにも、AWSは大阪ローカルリージョンを早急に開設する必要があったと見られる。

 2017年5月に長崎社長が発表して以来、AWSジャパンには大阪ローカルリージョンに関する問い合わせが常に寄せられてきたという。当初は国内の“限られた顧客”だけに招待制で案内する予定だったが、現時点では審査は必要ではあるものの、既存のAWSユーザーであれば申し込みが可能だ。今までとは異なる形のローカルリージョンが日本企業のクラウドへのアプローチをどう変えていくのか、引き続き大阪ローカルリージョンの成長に注目していきたい。

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