[木内里美の是正勧告]

システム(仕組み)を作る者は現場を知ろう!

2018年3月22日(木)木内 里美(オラン 代表取締役社長)

現場を見なければ最適なシステム(仕組み)は構築できない。ところが組織のヒエラルキー構造などが元凶で、責任と権限を持つ上層ほど現場を見なくなる傾向があるようだ。筆者が経験したある出来事を題材に、この問題を考えてみたい。

 ある老舗旅館に宿泊した時の体験である。歴史もあり、今やメディアでもよく取り上げられるブランドの旅館に2泊の予定で予約を入れた。送迎を含めてホスピタリティもよく、施設は手入れも行き届いていて空間の居心地や温泉も良かった。問題の予兆は夕食からだった。

 宿泊料金はトップクラスなのだが、夕食は大きな空間の和食レストランに招かれた。多くの温泉宿でクレードの高いところは部屋食か個室、あるいは簡易な仕切りの個室様の食事処でいただくのが普通だが、ここは大部屋である。コースメニューには料理長の名前が書かれておらず、料理に対するプライドと職人へのリスペクトが見えてこない。しかも食事が運ばれてくるたびに担当スタッフが変わる。決まり切った料理の説明はできるが、食材を訊いても詳しくは知らない。スタッフが次々に変わるから話が繋がらない。会話を交わす楽しみはほとんどない。多分、アルバイトを使ってマニュアル通りに動くことを教えているのだろう。

 インシデントは翌日の同じ和食レストランでの朝食で起きた。予め伝えた時間に行き案内されて着座した後、少しして「遅れていて申し訳ない」と若いスタッフがお茶をさしに来てから30分、食事が出てこない。ようやく配膳された食事は焼き魚以外冷製で、事前に準備してすぐに出せるものばかり。それらを食べ終わる頃になっても、最初から卓に置かれた鍋に火も入らないし、その食材も届かない。ようやく持ってきた時に私は席を立った。宿での食事の楽しみは全く失われていた。

 2泊の予定を急遽キャンセルし、レストランのマネージャにその旨を伝えた。マネージャは言い訳をするばかりで権限がなく、「上司に訊いてくる」と右往左往したあと、90分後にキャンセルが成立して宿を後にした。その間、責任者も支配人も一度も顔を見せなかった。

システムを作ることの難しさ

 この顛末は何を教えているだろうか? 筆者には3つのことが思い当たった。1つは現場のシステムが出来ていないということ。ここはファストフードの店ではない。マニュアルを整備して配膳すればいいというものではない。インシデントの共有さえ出来ていない。システム=仕組みができていないのだ。ICTを活用すればもっと効率的に客の嗜好も状況も把握できるはずだ。

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