[知っておいて損はない気になるキーワード解説]

“雲”より近くの「フォグコンピューティング」

2018年4月10日(火)清水 響子

マイクロサービス、RPA、デジタルツイン、AMP..。数え切れないほどの新しい思想やアーキテクチャー、技術等々に関するIT用語が、生まれては消え、またときに息を吹き返しています。メディア露出が増えれば何となくわかっているような気になって、でも実はモヤッとしていて、美味しそうな圏外なようなキーワードたちの数々を、「それってウチに影響あるんだっけ?」という視点で、分解していきたいと思います。今回取り上げるのは「フォグ/エッジコンピューティング」です。

【用語】フォグコンピューティング

 IoTをはじめとするデジタルプラットフォームの構成技術として注目される概念がフォグコンピューティングです。フォグは霧を指し、手の届かない場所にあるクラウド(雲)との対比で、データが生成され使用されるウェアラブル端末やセンサー等のデバイスやモノ(Things)が物理的に存在する、工場や店舗、車道といった場所へITによる処理、通信、制御、意思決定を分散させます。

 デバイスやモノとアプリケーションによる処理(コンピューティング)の距離を縮めることにより、爆発的増加が見込まれるビッグデータの通信量や通信に伴うコストを節約しつつ、安全性・信頼性の担保を図る分散コンピューティングモデルです。エッジ(ネットの外縁)コンピューティングと概念的には同義で、クラウドとの中間層をフォグ、よりデバイスやモノに近い層をエッジと使い分けることが多いようです。

 シスコシステムズが提唱し、2015年に同社及びARM、Dell、Intel、Microsoft、Princeton大学により発足したOpenFogコンソーシアムが規格の標準化等を進めています。

図1:フォグ/エッジコンピューティング(上)とクラウドコンピューティング(下):全データをクラウドへ渡し処理するクラウドコンピューティングと異なり、IoTの現場に近いエッジ(外縁)やフォグ(霧)でデータの下処理を分散。クラウドサーバーとの通信量に伴う時間/コストやクラウドにおける処理を節約する
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【イノベーション】動的な仮想ノードで脊髄反射

 フォグコンピューティングは、データ処理の小口化・分散によって、自動運転など遅延や停止が許されない用途でのリアルタイム処理を可能にします。人間が熱いものに触れたとき、脳に熱いという情報を伝達してから手を離すのではなく、接点である手が熱い=危険と判断して直ちに手を離すように、全ての情報をクラウドへ伝達せず、モノに近接するハードウェア上のアプリケーションで可能な範囲の処理や意思決定とそれに基づく調整を行います。

 ハードウェアは概念的に「ノード」と呼ぶことが多く、遠隔地の拠点やスマートシティなどの地域を結ぶフォグノード、工場や店舗をエッジノードと使い分ける場合もあるようです。IDC Japanはノードの設置場所を「エッジIT」、ユーザー固有の業務処理を行うために独立したスペース等を設けノードを設置する設備を「エッジマイクロデータセンター」と呼んでいますが、マイクロデータセンターはフォグコンピューティングの実装方法のひとつとして最もわかりやすいかもしれません。

 ノードは基本的にソフトウェアにより定義(Software-Defined)されたデータ処理(コンピューティング)、ストレージ、ネットワークスイッチの機能で構成されています。従来データの収集や記録に特化してきたセンサーやルーターにアプリケーション実行機能を持たせ、1台に集約した統合型インフラ(Hyper Converged Infrastructure: HCI)製品が登場したことにより実装が進んでおり、IDC Japanは国内マイクロデータセンター数が2021年までに4,354ヶ所に増加すると予測しています。

図2:IDCは国内エッジマイクロデータセンター数を2017年末の1,037か所から、2021年末には4,354か所に増加すると予測(出典:IDC Japan「2017年 国内DX指向型データセンターファシリティ動向:エッジコンピューティングおよびコグニティブ/AIシステム」)
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