[インタビュー]

日本でプライムコントラクターを目指す印グローバルITベンダーの戦略

インフォシス日本代表 大西俊介氏

2018年5月16日(水)杉田 悟(IT Leaders編集部)

インドといえば、“カレー”“タージマハール”“ガンジス川”などをイメージする日本人が多いだろう。あるいは、数字の“0”の発祥、“数学”が得意というイメージを持っているかもしれない。ITに携わっている人間であれば、欧米の多くの大手ITベンダーが研究開発拠点を設け、いくつもの大手ITベンダーの経営者を輩出しているのは良く知られたことだ。そして、インドを代表するITベンダーは、世界でも確固たる地位を確立している。その1社が、ここに紹介するインフォシスだ。日本での知名度はまだ低いものの、国内ビジネスに精通した日本人の新代表を2017年1月に迎え入れ、ビジネス基盤の構築に乗り出している。

 インフォシスリミテッドは、インドの3大ITベンダーの1社に数えられる、IT立国インドを象徴する企業だ。インドの3大ITベンダーとは、タタ財閥のグループ会社であるTCS(タタ・コンサルタンシー・サービス)、インフォシス、ウィプロの3社。そのほかHCLテクノロジーズやコグニサントなどが、インドの大手ITベンダーとして知られている。

 インフォシスは、欧米のアウトソース先企業として成長、特に米国で成功を収め、1999年にはインド企業初の米NASDAQ上場を果たしている。日本法人は1997年に設立され、主にグローバル企業の日本支社向けERPビジネスで順調に事業を展開してきた。一時は90億円まで売上を拡大させたがリーマンショックで激減、その後の回復は遅れている。

(写真1)まるで宮殿のような造りのインフォシスのマイソールキャンパス内にある研究施設「Global Education Center Ⅱ」一度に15,000人が研修を受けられる、マイクロソフトに次ぐ世界最大規模の企業内大学

 日本でのビジネスが伸び悩むなか、日本法人の代表に抜擢されたのが、国内でのERPビジネスに豊富な経験を持つ大西俊介氏。2017年1月のことだった。その大西氏、一部のメーカー、大手SI会社がプライムを独占する日本のエンタープライズIT市場において、インフォシスを、そのプライムコントラクターの1社に成長させるための礎を築くことが目標だという。

ネガティブイメージ一掃へ

 グローバルマーケットで成功体験を持つインフォシスとしては、大企業の数が多く、ITベンダーにとって世界有数の巨大マーケットである日本でプライムコントラクターを目指すのは自然なことだ。しかし、特異な業界構造や独特の商習慣に守られた日本のエンタープライズIT市場は、外資系企業にとってはきわめてハードルの高い市場といえる。加えて、「日本のIT業界が抱く、インドに対するネガティブなイメージが、ハードルを更に上げている」と大西氏はいう。

 2000年代初頭、受託案件の開発費用の引き締めに対して、国内の多くのIT企業が人件費の安い海外へのオフショア開発を試みた。最大のオフショア先が、中国の大連だったが、当時中国のIT技術は発展途上で、高度な開発を安心して任せられるベレルになかった。そこで注目されたのが、インドのバンガロールだった。

 インドのシリコンバレーともいわれるバンガロールは、欧米のオフショア開発拠点として発展してきた経緯もあり、高い技術力を持つIT人材がそろっていた。人件費は中国より少々高かったが品質は折り紙付きで、大手から中堅まで、日本の多くのITベンダーが、高度なオフショア開発先として次々とバンガロールに拠点を設けた。

 ところが、欧米相手にビジネスを行っているインドでは英語での会話が主で、日本語を話すことのできるインド人技術者はほとんどいなかった。コミュニケーションがうまく取れず、結局、日本企業向けに日本語のできる技術者を多く配していた大連に逆流する案件が続出したという過去がある。

 現在では、一部の日系グローバル企業がインドのITベンダーを世界で戦う有力なパートナーとして受け入れているものの、当時を知る多くのIT関係者は未だインドに対してポジティブなイメージを持てないでいるのが現状だ。大西氏曰く「文化的な距離を感じている」のだという。

 プライムコントラクターとして、長年日本のエンタープライズIT市場に係わってきた経験を持つ大西氏は、このような背景を踏まえたうえで、インフォシス成長の鍵は「ローカリゼーションにある」と読んでいる。同社が提供する「エッジシリーズ」というソリューションのローカリゼーションもさることながら、プライムコントラクターへの大きな第一歩として注力しているのが「人材のローカリゼーション」だという。

 大西氏が赴任した当初、日本法人の陣容は300人ほど。そのうち約半数はインドから来ている常駐のエクスパットだった。エクスパットとは、グローバル展開する企業の海外支社で働く本社社員のことで、インフォシスの場合は、主にインド人ということになる。残りの150人は日本で採用しているが、必ずしも日本人だけではない。中国人やベトナム人など、日本語が片言の社員が多かった。

必要なのは「気の利いたコンサルタント」

 この現状を見て「このままでは戦えない」と感じた。島国日本では、言葉の壁はことのほか大きいからだ。そこで戦略的な日本人の採用を目指すことにした。特に注力しているのが、コンサルタントの採用だった。

 インフォシスは、開発にあたってインドのリソースを活用することになるため、いわゆる「ブリッジSE」が必要になると思われがちだが、大西氏はこれを否定する。日本でもオフショア開発全盛の頃、対中国のブリッジSEが重宝された。しかし、グローバル基準のブリッジSEは、日本のITユーザーには不向きだという。本来ブリッジSEを使いこなすには、自分たちで要件を作って出せる米国タイプのユーザーである必要があるからだ。ベンダー依存が強い日本のユーザーが直接ブリッジSEとやりとりするのは難しい。

 日本のユーザーには、ブリッジSEの代わりに、顧客窓口として「気の利いたコンサルタント」が必要だというのが大西氏の見解だ。そこで、「言葉の壁がない、日本人の気の利いたコンサルタントを採用しなければならない」と考えた。ところが、ここでも問題になってくるのが、「インドとの文化的な距離」だ。

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