[市場動向]

IoT投資支援策「コネクテッド・インダストリーズ税制」とは

経産省・東証「攻めのIT経営銘柄2018」発表会より

2018年6月5日(火)奥平 等(ITジャーナリスト/コンセプト・プランナー)

経済産業省と東京証券取引所は2018年5月30日、今年で4回目となる「攻めのIT経営銘柄2018」および「IT経営注目企業2018」の発表会を開催した(会場:東京都千代田区の有楽町朝日ホール)。選出企業の発表のほか、IoTに取り組む国内企業を支援する「コネクテッド・インダストリーズ税制」の説明もなされた。本稿では同税制の概要をお伝えする。

4回目の「攻めのIT経営銘柄」、エントリー/選定数共に過去最多

 4回目となる「攻めのIT経営銘柄2018」には493社のエントリーがあり、32社(注1、過去3回の選出歴と合わせた一覧は既報の「経済産業省と東京証券取引所、「攻めのIT経営銘柄2018」を発表」を参照)が選出された。エントリー社数、選出企業数ともに過去最多となった(写真1)。

写真1:攻めのIT経営銘柄2018の発表会に登壇した選出企業(左)。今回、自薦のアンケートエントリー数は471社に

注1:攻めのIT経営銘柄2018選出32社:TATERU、大和ハウス工業、サッポロホールディングス、アサヒグループホールディングス、帝人、住友化学、富士フイルムホールディングス、ブリヂストン、JFEホールディングス、小松製作所、IHI、日立製作所、富士通、日産自動車、凸版印刷、関西電力株式会、東日本旅客鉄道、ANAホールディングス、ヤフー、伊藤忠テクノソリューションズ、三井物産、Hamee、日本瓦斯、三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、大和証券グループ本社、東京海上ホールディングス、東京センチュリー、大京、レオパレス21、LIFULL、ディー・エヌ・エー(業種・証券コード順)

 企業が成長戦略や国際競争力を醸成し、発揮していくためには、中長期的なビジョンに基づき、企業価値の向上や競争力の強化に直結する戦略的な投資、いわゆる「攻めの経営」を行っていくことが不可欠となる。特に昨今においては、AI(人工知能)、IoT、ロボット、ビッグデータなどに象徴される、デジタルトランスフォーメーションのためのITの著しい進展に伴い、それらを推進力に産業構造やビジネスモデルがかつてないスピードで変革する時代を迎えている。

 そこで経済産業省では、各社の「攻めのIT経営」を支援・促進することを目的に、平成26(2014)年度から東京証券取引所と共同で「攻めのIT経営銘柄」を選定するプログラムを発足。中長期的な視点を踏まえた企業価値の向上を重視する投資家にとっても、アトラクティブな指針となっている。

国内企業のIoT投資を支援する「コネクテッド・インダストリーズ税制」

 攻めのIT経営銘柄2018の発表に先立ち、経済産業省から、同省主導のIT施策に関する説明がなされた。注目は、国内企業の生産性・競争力向上の抜本的強化を目的にした平成30(2018)年度税制改正大綱において、中小企業向け施策と共に創設が決まった「コネクテッド・インダストリーズ税制」についてである。

 コネクテッド・インダストリーズ税制は、IoTの活用に取り組む企業に向けた税制優遇プログラムである。その名称は、2017年3月にドイツ・ハノーバーで開催されたICT分野の国際見本市CeBIT 2017で、Society5.0の実現に向けて目指すべき日本の産業のあり方として政府が示したコンセプト「Connected Industries」に由来する(参考記事:【CeBIT 2017】日本の産業が目指す姿「Connected Industries」を提唱)。

 図1は経済産業省が2017年12月に示した同税制の概要で、要点は次の2つである(参考記事:「IoT投資減税」の詳細まとまる―センサーやロボット、データ連携など対象に)。

●一定のサイバーセキュリティ対策が講じられたデータ連携・利活用により、生産性を向上させる取り組みを行った事業者は、それに必要となるシステムや、センサー・ロボットなどの導入に対して、特別償却30%または税額控除3%(賃上げを伴う場合は5%)の措置を受けられる
●事業者は当該の取り組みの内容に関する事業計画を作成し、主務大臣が認定する。認定計画に含まれる設備に対して、税制措置を適用する(適用期限は平成32年度末まで)

図1:コネクテッド・インダストリーズ税制の概要(資料:経済産業省)
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 ここでは、データ連携・利活用、セキュリティ、生産性向上目標を踏まえた同税制の認定要件、申請から税務申告までの手続きの流れの説明がなされた(図2)。それとともに、かなり細部まで踏み込んだ解説がFAQ(よくある質問と回答)に沿って行われ、攻めのIT経営銘柄選出企業の担当者をはじめ、会場の関係者の多くが真剣な面持ちで聴講していた。

図2:コネクテッド・インダストリーズ税制の申請手続きの流れ(資料:経済産業省)
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